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搬送レーンの終点スラム地区B拠点。

固定されていた、金属アームが解除された。


わたしは首元の違和感に気づく。

犯罪者逃亡防止タグ。


地面に叩きつけられる直前、

反射的に受け身を取った。


(体力の消耗と傷の治癒が遅い)


桐生と間宮を救った分、エネルギーの消耗が酷い。

自然治癒と治癒能力でも、

回復が追いつかないほどの損傷だ。


治癒能力が可能になるまで、おそらく、一週間。


それまで――

安全でいられる場所は、おそらく存在しない。


(さて、どうするか)


選択肢は極めて少ない。


顔を上げる。

頭上には、重なり合った建造物の隙間。


天上層の光が、ほとんど届いていない。


錆びた配線が、

壁から壁へ蜘蛛の巣のように張り巡らされている。


古いドローンが、

低空を這うように飛んでいる。


湿った石畳。


焚き火の煙。


油と腐敗と、食べ物の臭いが混じっている。


「なるほど。これがスラム……気に入った」


監視ドローンも型落ちの旧型。

犯罪者が潜伏するには、合理的な環境だ。


周囲を観察していると、背後から声がした。


「見つけた。あれが賞金首のナズナか?」


若い男が二人、私を値踏みするように見ている。


「……いかにも私がナズナだ。 君達は誰だ? 」


軽薄そうな笑顔を浮かべ、ニタニタと笑いながら、

男たちが近づく。


「賞金首を狩るハンターってとこだな」


「抵抗しないほうが得策だぜ、お嬢ちゃん」


拘束用の武器をチラつかせ、わたしとの距離を

静かに、つめてくる。



「なるほど。では賞金額を教えてくれ」


「……はぁ?」


男達は、口を開けて唖然とした。


「私の命の市場価値をデータとして知りたい。

知的欲求だ。教えてくれ」


「俺たちをバカにしてるのか?

見下してんだろ!舐めやがって!」


「いいや。むしろその合理性に共感する。


賞金首を狩ることは犯罪抑止力として有効で、


最も効率的だ。しかし、君たちは危険とも言える」


「ああ、そうだ。俺たちは怖い物知らずだ」


男達は、余裕な笑みを浮かべる。


「そうではない。

君たちは利用されやすいと言っている」


「私が到着して、即座に君たちが来る」

「確率的に不自然だ」


「つまり――誰かが君たちをここに誘導した」


「そうだろう?」


男達の顔つきが変わる。


「それで? どうするつもりだ。戦うか?」


「いいや。捕縛してくれ」

「ただし条件がある」


「一週間の猶予が欲しい」


「私は―― 残念ながら死にかけている」


「……は?」


男達は、顔を見合わせている。


「おい、シュガー。この女、頭おかしいぜ?」


「バカ野郎!名前を呼ぶな」


「そうだ。シュガーのいう通りだ。それは迂闊だ。

情報を相手に渡すのはよくない。そうだろうペッパー」


「俺の名前は“ペッパー”じゃねぇ!ソルトだ!」



「あ!」


男達は、思わず自分の口を塞いだ。


わたしは、二人の顔を交互に見た。


「ありがとう」

「ソルト、シュガー。私は元SEAL研究者のナズナだ」



賞金首ハンターは、金になるまで「賞金首」を

むやみに殺したりしない。これは大きな懸けだった。


「どうか、一週間よろしく頼む」


わたしは彼らに、手を差し出した。

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