Log:28
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とても不快で耳障りの音がした。
胸が引き裂かれるような……
目を開ける。
白い天井。
消毒液の匂い。
医療施設《SEAL》の病室だった。
記憶が断片化している気がした…
(ここは、一体どこだ?)
防衛ライン…
突然、現れたナズナ。
『暴れてこい』
あの言葉の先。……記憶が曖昧だ。
ナズナと何かを話したような、
そして、長い夢を見ていたような感覚。
「目が覚めたのね?」
定まらない視界でも分かる。
コイツは違う。ナズナじゃない。
ナズナは「目が覚めたのね」なんて言わない。
『意識の混濁を確認する。ここは何処だ?桐生』とか言うだろう。
「またお前か、ナズナをどこへやった?」
「あの女なら連行されたわ」
「軍規違反の犯罪者よ」
「あなたを利用して英雄になりたかったんでしょうね」
西園寺は端末を投げるように差し出した。
ナズナの研究室から持ち出したデータだ。
そこには、俺のデータから算出された
汚染生物の細胞を利用した、人体の強化実験計画が
書かれていた。
「見てみなさい」
「あなたの能力を元にした、兵器開発計画よ」
「あなたは最初から、あの女の実験体だったの」
俺は端末を奪い取り、データを最後まで確認した。
「これをどこで手にいた?これはナズナの研究データだ。
不正アクセスしたのか?」
西園寺は、一瞬黙り口を開く。
「あの女は、もう研究者じゃないわ。
だから、資格も剥奪されてスラム送り。軍規違反なんだもの当然よ」
「ふーん。そうかよ、それで、お前は何でここにいる?」
「あの女は偽善者よ」
「あなたを実験体にしていたの」
西園寺は、顔を赤くして話す。
まるで話が通じていない相手に対して、俺は聞き返した。
「……だから、それでお前がここにいる理由は何だ?」
「俺は、お前の知り合いじゃない」
「仲間でもない。ましてや、俺の女でもない」
「赤の他人だ。なぜ、ここにいる?」
西園寺は大きな目を見開いて一瞬唖然としたが
桐生を睨みながら、研究所にあった
データパッドを突き付ける。
「あの女は、あなたを危険地域に送っていた」
「研究データを取るためにね」
「あなたは毎回、あの女の治療を受けていたでしょう?」
西園寺は嘲笑いながら、声を荒げた。
「あなたは実験生物体だったのよ」
「これだけ言っても、まだ分からないの?
あなたは騙されていたのよ!」
病室には、計測されたモニター音だけが響いた。
俺は知っている。ナズナはそんな女じゃない。
アイツはバカみたいに合理主義の論理派だ。
「たとえ、そうだとしても…ナズナにしては優しい方だ」
「アイツなら化け物並みの
遺伝子組み換えを考えていてもおかしくない」
「それを、単に俺を強化するだけだ」
「つまり――」
「俺を死なせたくないって事だろ」
そこに、間宮と長谷部が現れた。
「桐生! ナズナちゃんが……!」
長谷部は泣いている。
「私が、わたしが悪いんだ。ごめん…」
間宮が、長谷部を守る様に抱きしめている。
「すまん。桐生…俺が怪我して弱かったせいで…足引っ張った」
「全部、俺のせいだ。俺があの時、防御ラインを動かなければ……
動揺しなければ…」
「おいおい待て、2人とも黙れ」
「あんなクソみたいな状況で3人が生き残っているのが不思議なくらいだ」
桐生は、頭を左右に揺らして首を鳴らして話す。
「もし誰かが責任を負わなきゃいけないなら
俺たち全員のせいでいいだろ?」
「だから俺に謝るなよ」
「ナズナのことは俺に任せろ」
「それに、あいつは
お前らに謝ってほしくて助けたんじゃない」
「あいつは『当然のことをしたまでだ』としか言わないだろ」
「だから、謝るな。あやまるくらいなら、アイツに感謝してやってくれ」
間宮と長谷部は、俺の顔を見て
少し笑った。
「お前、ナズナちゃんの事を大好きすぎだろ」
「はやく結婚しろよ」
「私、ナズナちゃんが戻ってきたら
もう一度直接謝りたい。そうじゃないと…すごく嫌だ」
西園寺は嘲笑った。
「は、気持ち悪い。」
「あの女がそんな事を気にすると思う?」
「謝罪より先に実験データを取りに来るわよ」
「全員おめでたい位に騙されているのに謝りたい?」
「本当、これだから…下層と仲良くする奴らの言葉は理解できないわ」
長谷部は、西園寺に向かって
「うわぁ…性格ブスって本当にいるのね」
「長谷部!」
間宮は、長谷部の口を塞いだ。
西園寺は、俺たちを睨みつけた後
何も言わずに病室を出た。
いつもなら、そこに座っているであろう
ナズナの場所は空席だった




