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Log:27


残存体力をすべて使い果たした―


間宮の恋人である長谷部のエネルギーを転用した影響で、

彼女のバイタルは急激に低下している。


(しかし、彼女の必死な願いは通じた……)


(よかった)


瀕死の二人を同時に治癒したため、

普段ほとんど痛みを感じないこの身体でも、

悲鳴をあげそうな激痛だった。


この処置は、推奨されない。


死傷者が多く出ているにもかかわらず、

作戦変更はなく、

小隊が崩壊しても撤退命令は出なかった。


――生還を前提としていない配置。


異常事態が重なりすぎた。


――足音。


規則的。複数。

重装備特有の床振動が、

廊下側から接近してくる。


このフロアは特別病棟。通常警備ではない。


桐生がいる緊急治療ルームのドアが、

激しい衝撃音とともに開いた。


空気圧が変化し、

室内の静音が破壊される。


ルール違反者の拘束部隊。


SEAL執行代行者だ。


「個別ID:ナズナ博士。


匿名の通報に基づき、軍事規約逸脱の証拠を確認した。

君は重大なSEAL法違反の被疑者だ。


――間違いないか?」


わたしは立ち上がることが出来なかった。

仕方なく、その場にて釈明した。


「その通りです」


「……確認した。

ナズナ博士をSEAL法違反で拘束する」


「本時刻をもってSEAL研究博士の権限を停止。

24時間以内に中層階級資格を剥奪する」


「身柄は執行局へ移送する」


わたしは無抵抗のまま拘束された。


執行代行が、わたしを立たせようとする。


視界が揺れる。


鼻からの出血が止まらない。


エネルギー消耗が大きすぎる。

身体が言うことをきかない。


「……すまない。現在、起立は不可能だ」


「把握。拘束を維持。運搬ドローンを要請する」


金属アームが降下する。


両腕、両脚を固定。生体認証ロック、三重。


振動とともに、床が遠ざかる。

その時、病室の扉が開いた。


西園寺が入ってくる。


……それで、すべて理解した。


西園寺は、私を見るなり嘲笑った。


「見苦しいわね。早く連れて行ってちょうだい」


わたしを一瞥しただけで、

興味を失ったように視線を外す。


桐生、間宮、長谷部、そして多くの負傷者。

あの作戦配置。撤退命令の欠如。


わたしは西園寺に聞いた。


「私を排除するためだけに、あの作戦配置を組んだのか?

多くの犠牲を出してまで……桐生を、あそこに置いた」


西園寺は、悪びれる様子もなく返答する。


「証拠? あるとでも?」


「仮にあったとしても、あなたには関係ないわ」


「――あなたは、ここで終わり。

次に目を覚ます場所は追放のスラムの地よ」




「……君はひどく私を憎んでいる。

それは理解した。


だが、桐生への執着は本物だろう。

……ならば、これ以上、彼を傷つけるな」



西園寺の目は鋭く、今にも襲いかかりたそうに

私を睨んでいる。



「執行代行、早く連れて行ってくださらない?気分が悪いわ」


わたしは、連行されていく最後に


桐生を見つめた。


再会確率は、限りなく低い。


しかし、最悪の状況から抜け出す方法を

考える。今は、従うしかない。



病室を出る瞬間、

桐生の安定したバイタルが、

わずかに動いた音がした。


わたしは、こうして犯罪者として登録され、

すべての資格は剥奪された。


「ナズナ博士……

SEAL研究第一任者である貴方が、


非戦闘員の戦場区域侵入が

SEAL法違反であることを

知らないはずがない。


……このことを非常に残念に思う」


SEAL執行代行の男が、

ぽつりとこぼす。


「イレギュラーが発生した。

私は、それに対応しただけだ。


今回の行動は合理的判断だ。

そして覚悟していたことだ。


裁きは受けるつもりだ」


「今回の殲滅作戦。被害が甚大だ……


そこに貴方まで失う事になるとは、

未来をどうするおつもりだ?」


「未来は桐生に託した。

彼が生きているなら、人類は守られる可能性が高い。


それに、スラムに堕ちたら

全てが終わるのか?


わたしは最下層で続ける。やることは変わらない」


SEAL執行代行は笑った。


「貴方は変わっている。

普通の人間なら、


スラム行きを告げられた瞬間、

冷静ではいられないものですが。


貴方は、やはり賢人です」


「ありがとう。私は知能だけは自信があるんだ」


運搬ドローンに乗せられた私は、

最下層行きの搬送レーンに流されていく。


執行代行は、

私に敬礼をしていた。


彼の行動倫理は理解不能だが、

不快ではなかった。

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