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桐生が訓練場に戻ってきた。
わたしは華城から離れ、歩み寄る。
「桐生。股間を狙ったが、
到達距離が足りなかった。すまない」
「ええ!? お前……華城の股間を蹴ったの?」
「君のアドバイスは的確だった。しかし、私と華城の身長差では
到達できなかった」
「非常に残念な結果だ。しかし、データは取得できた。
分析すれば、次は到達可能だと予測される」
桐生は、ほんの少し呆れた顔で笑う。
「やめなさい。賠償責任で大変なことになるぞ」
「しかし、有名人の股間を蹴ってはいけないという
法律は確認されていない」
「彼は私のパーソナルスペースを侵害した。
ならば、私の判断は誤りだったということか?」
桐生は即答した。
「蹴ってよし!」
「そうだろう」
華城が、わたしたちの会話に口を挟んだ。
「ねぇ、桐生くん。ナズナちゃんに“西園寺と付き合え”って
言われたの、本当なの?」
桐生がわたしの頭を軽く叩いた。
「痛いぞ、桐生」
「またややこしいことになるぞ、お前」
「合理的判断で提案し、君に否決されたではないか。
ならば共有しても問題はない」
華城はクスクスと笑いながら、桐生の前に立った。
「ふーん。確かにいい顔だよね? 僕には劣るけどさ」
「男は顔じゃない。筋肉だ」
わたしは首をかしげて答えた。
「その判断基準は、君だけだ。桐生」
「俺の味方がいない!」
華城は思わず噴き出した。
「あははは~。いや~ほんと面白いよね、ナズナちゃん最高。
今日は楽しかったから、
君たちに一つアドバイスをあげるよ」
「西園寺はね。手に入れるって決めたら、
ルールも人間も関係なく壊す子なんだ。
十分気を付けたほうがいい」
華城の目は笑っていなかった。
桐生はわたしを後ろに隠すように立ち塞がった。
「……忠告どうも。
あんたは止める気なさそうだもんな」
「ご名答だね」
「じゃあ、お二人さん。元気でね?」
華城は背を向けた。
そして、手を振りながら去った。
「もう来るなよ。お前のお姫様にも言っとけ」
わたしは答えた。
「そちらも元気でやってください。」
――その頃。
西園寺は、誰もいなくなった庭園で、
黄金のアンドロイドに端末を操作させていた。
<SEAL通信ノード侵入完了しました>
西園寺の顔は、歪んだ笑みに変わった。
「桐生の通信も、押さえたの?」
<侵入完了。現在、桐生の通信識別コードを変更しています>
<ただしSEALは24時間以内にシステムを再構築する可能性があります。
それ以降、このアクセスは無効化されます>
「時間稼ぎには、十分よ。桐生を手に入れるのは私よ」
「だから、邪魔者は全部潰す」
「まずは、あの研究者――ナズナからね」




