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ナズナには、危険を感じたら股間を蹴れと言ってある。

だから、たぶん大丈夫だろう。


問題は、この西園寺という異常者だ。


訓練場の外にある庭園に来ると、


女は、ティーセットが用意された

簡易テーブルの椅子に腰を下ろした。


まるで自分の庭園のように。


「まぁ、立って話すのは野暮でしょ?

誤解を解きましょう」


「いいや。俺はこのままでいい」


俺は視線すら向けない。


「……そう? じゃあ、手っ取り早く

要点だけ告げるわ」


「あなた、私の物になりなさい」


「天上層の最も優れた集団と共に歩めるのよ?

こんな機会は、もう二度とないわ」


俺は鼻で笑った。


「あのね、正直言うけど……天上層の人間に声をかけられるのは

これで12回目だ。珍しいことじゃないんだよ」


「ふうん……でも、本物は私だけよ」


「私はすべてを持っているの。


地位も名誉も権力も。

私が持っていないものは、ない」


俺はさらに、見下した視線を向けた。


「そうか? じゃあ何も必要ないだろ。


本当に全部手に入れている奴は、

何も欲しがらないもんだぜ」


「俺はもう大切なものは手に入れたから、何もいらない。


あんた大変だよな。


そんだけ恵まれてるのに、

何も分かってないんだから」


西園寺は、ティーカップを持つ手が

一瞬だけ震えた。


「いいえ。私は少なくとも、

貴方を理解しようとしているわ。


お金が欲しいの?

それとも権力? 愛?


私は貴方のためなら、支援を躊躇わないわよ」


(これだから嫌になる。金と権力があるヤツの交渉はいつも同じパターンだ)


「じゃあ、あんた。俺の何が分かっているんだ?」


「少なくとも俺のナズナは、大真面目に

レポート用紙にまとめて、俺の研究ノートまで作った女だ」


「冗談抜きで、全部丸裸にされた」


「俺と視線を合わせただけで、

今日の俺の気分が分かるらしい」


「俺の筋肉をバカにする癖に、

負荷トレーニングの効率的アプローチを

研究してくる女だ」


「あいつは、俺を能力で見ていない。

あいつは俺を、一番理解している女だ」


「だから――他はいらないんだよ」

「悪いな」


西園寺の顔が、酷く歪む。


次の瞬間、

ティーカップが飛んできた。


「……私を拒むつもり?

……正気なの? あんな女に価値なんてないわ!


私は天上層の人間よ。最も優れた遺伝子を持つ――

誉れ高い、選ばれた人類よ! あなた達とは違うのよ」


俺は思わず、乾いた笑いが出た。


あまりにも目の前の女が格好悪い。


ナズナは違う。


「ナズナは、こんな品格に欠けたことはしない。

俺が『やっていいぞ』と言うまではな」


「あんた、全部負けてるよ」


「でもさ、あんたを理解してくれる華城がいるじゃん。

あいつなら、あんたを理解してくれると思うぜ。

同じ種類の人間だからな」


「まあ腹黒そうだけどさ。

似た者同士なんだから、仲良くやれよ。


俺はパスだけどな」


突如、西園寺は狂ったように高い声で笑った。


「あははは、そう? 私を拒むの?」


西園寺は、髪の毛を指先にゆっくりと巻きつけた。


「良い話をしてあげましょう」


「私を侮辱して、無事で済んだ者はいないわ」


「ねぇ桐生。私が優しいうちに、

わたしの支配を受け入れた方がいいわよ」


「貴方は、私の物。もう、一生逃げられないわ」


西園寺は、もう笑っていなかった。


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