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「じゃあ、ナズナちゃん。僕とお話をしようか?」
「了解した」
「あれ? 存外、不用心なんだね」
私は華城の顔を眺めた。
「君は私を侮りすぎている。だから忠告しよう」
「私は、自分も含めて犠牲を厭わない性質だ。」
「つまり、君が何かを仕掛けてくる方が私には都合がいい。それだけだ」
華城は、酷く歪んだ笑みを浮かべ、
何の躊躇いもなく私の肩を掴んだ。
「あ〜、やっぱりそうだよね。これって運命感じちゃうよね?」
「君、僕と同類だ」
私はきっぱり答えた。
「いや、君のように歪んだ感性はない」
「君は悪意で観察している。私は論理で観察している」
「そこが違う」
「だが研究対象としては興味深い」
「わーんフラれちゃった。ねぇ、僕のこと知っててその態度なの?」
「君は華城。西園寺と同じ天上層の住人だ」
「……え? それだけ? 僕のこと知らないの?」
「君は華城。それ以上の情報はない」
「今日会ったばかりの人物に詳しい方が不自然だ」
華城は噴き出して大笑いした。
「すごい。初めてかもしれない。本当に知らないんだね?」
「本当に惜しいよ。西園寺よりも先に会ってたらなぁ」
華城は私の手を掴みながら、距離を詰めようとした。
危険を察知。
反撃を選択。
私は――
股間を蹴り上げた。
「やはり、桐生のアドバイスは適格だった」
華城は私の蹴り上げた足を、軽く手で払った。
「……ひっどいなぁ、君は野蛮人だ。世界的有名人の股間を蹴ろうとするなんて。
まぁ、ガードしたから痛くないけど」
「世界的有名人の股間を蹴ってはいけないという
法律は確認されていない」
華城は、一瞬ぽかんとした。
次の瞬間、堪えきれないように噴き出す。
肩を震わせながら笑っていた。
「うそでしょう? 君は僕が近づくのは嫌なんだ?」
わたしは、少し距離をとりながら話す。
「わたしの外見から、未成年に見える可能性は理解している」
「だが私は、成人女性だ」
「パーソナルスペースに侵入した時点で、
反撃の可能性は想定すべきだ」
華城は笑いすぎて滲んだ涙を拭いながら言った。
「あ~最高!」
華城が肩を震わせて、笑いがようやく治まる。
「ねぇ、ナズナちゃん。桐生くんを西園寺に譲ってほしいな」
華城は両手を合わせて、ナズナに懇願するようなポーズを取った。
私は首を傾げる。
「理解できないな。なぜ、私に尋ねる」
華城は楽しそうに笑った。
「だって、その方が面白いだろ?」
「君も、そう思わない?」
私は少し考えてから、ため息を吐き答えた。
「……その提案は既に桐生にしている」
「しかし桐生は受け入れなかった」
「つまり、私に出来ることは残っていない」
華城は目を丸くした。
「え? もう提案したの?」
「うん」
「それ断られたの?」
「そうだ」
華城は楽しそうに笑う。
「ナズナちゃん、本当に最高だ」
「ありがとう。私の知性は高水準だと言っておこう」
華城は、また大声で笑った。
わたしは、その底にある悪意から目を離さなかった。
〜ふんわり観測メモ〜
私の研究対象外であるが、
世界的マルチタレントという職業が存在する。
彼らの生活は豪華らしい。
また、
股間防御能力も
高水準である可能性がある。




