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華城は、訓練場に並ぶ兵士やアンドロイドに対して


「はいはい、君達はもう訓練に戻っていいよ。お疲れさん」



兵士たちは戸惑ったように顔を見合わせた。


命令系統は存在する。

しかし今、誰が命令を出しているのか分からない。


上官たちは西園寺の表情を窺っていた。



「解散していいわ。……はぁ、私に感謝してよね」


西園寺は当然のように桐生の腕に手を回した。


まるで最初から

自分の所有物であるかのように。


「それじゃあ、彼は貰っていくわね」


桐生は苛立ったように言った。


「離せ!」



彼女の腕を振りほどいた。



「……桐生。私を怒らせないほうがいいと

言った意味がまだ分からないの?」


西園寺の表情が冷えた。


――パアン



乾いた音が訓練場に響いた。


誰も動かない。

桐生の頬が弾かれる。


西園寺が、彼を殴ったのだ。

訓練場の空気が一瞬止まる。



「……謝りなさい」

「私に無礼な態度を取ったことを」


「心から謝罪しなさいよ」


誰も動かない中、わたしが口を開いた。


「あなたは面白い」


「権力とは、傲慢で独善的に振る舞うことが

許容される立場だと君は認識している」


「だが君は桐生を全く理解していない」


「君の前提は、誤っている」


わたしは小さく首を傾げた。

赤い目を細め、口角を上げる。


「ゆえに、君は面白い観察対象だよ」



西園寺の表情が歪む。


――予測通り。


打撃による損傷は軽度と推定。


彼女が拳を振り上げた、その瞬間。



桐生が前に出る。

その表情は、恐ろしいほど怒りに満ちていた。




西園寺の前に立ち塞がり、低く言う。



「これ以上、俺を怒らすつもりがあるのなら

ここで、暴れてやってもいいんだぞ」



西園寺の顔の筋肉が、僅かに歪んだ。



「桐生。なぜ止めた」


わたしは桐生を見つめる。



「私が西園寺に殴られていれば

正当防衛が成立した」


「殴り返す合理的理由が得られたのに」


「非常に残念だ」



桐生は呆れた顔で私の両肩を掴んだ。


そして思いきり揺さぶる。



「お前、バカじゃねーのか!」



「桐生。わたしは知能レベルには自信がある」


「その評価は私には該当しない、取り消しを要求する」



桐生の怒りは、落ち着きを取り戻した。



「わたしは問題ない。だから、速やかに、この馬鹿げた

対話を終えるべきだ」



桐生は頭を乱暴に掻き、華城を指をさして

わたしに言う。


「……いいか、その男に何かされそうになったら

 股間を蹴り上げろ」


「理解した」



華城が笑う。


「はは……」

「ナズナちゃん」


「君、本当に面白いね」



ナズナはハッキリと華城に線を引いた。


「君は私を侮っている」

「私は“面白い女枠”に分類される人間ではない」


桐生は思わず笑い、

噴き出した。


西園寺の鋭い視線が私に向けられる。

しかし私は、彼女を見つめ返した。




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