Log:14 KIRYU
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俺の耳デバイスが短く震えた。
間宮と長谷部からのメッセージだ。
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長谷部<< ナズナちゃんと仲良くね。
間宮&長谷部は恋の相談24時間受付中 ( *´艸`) >>
間宮<< こっちは任せろ。傲慢女は帰った。
だが気をつけろ。ああいうタイプは執念深い。
何かあれば俺が介入する >>
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……良い奴らだ。
勢いで放置してきたのに、文句の一つもない。
俺はメッセージを間宮に送った。
<<お前ら二人を置いていったのはスマン。いま、ナズナの家で
説教中だ。長谷部にも伝えてくれ。また後でな>>
ナズナは、横でホームパネルを操作している。
飲み物を選んでいるらしい。
いつも通り無表情だ。
(……危なかった)
俺はさっきから、頻繁に届く
天上層の住人、西園寺からのメッセージを無視している。
思い込みの激しそうな女。
ナズナを馬鹿にするような視線。
どれも全部、不快だった。
人生で一番焦ったかもしれない。
ナズナは俺を、一番にしている。
それは分かってる。
分かってるのに――
あいつは、平気な顔で離れようとする。
『君の最優先を合理的に考えた結果だ』
そう言ったときの顔を思い出す。
泣いてもいない。迷ってもいない。
ただ、決めた顔だった。
あいつの中で、自分の痛みは、
最初から“計算対象外”なんだ。
全部、“最適解”で片付ける。
もし――
明日、ナズナに会えなくなるとしたら。
俺のために犠牲になる選択肢があるなら、
あいつは迷わず選ぶ。
それが正しいと、信じて。
そんな未来、認めるわけがない。
だから止める。
何度でも止める。
寝不足で研究室を燃やしかけたが、
全ては俺の装備を改装したせいだった。
ドローン修理開発をして、
ドローンに殺されかけたが、
それがいま俺の相棒のSG-02《ゴリラ》だ。
この前は、俺の戦闘データ研究で
寝不足になり、階段から落ちて
血だらけになった。
「私のログには何もない…」と言いながら、
治癒能力を使った。
ある、問題ばかりだ。
危なすぎて、放っておけない。
それ以上に、こいつを幸せにしたい。
それが「好き」じゃないなら、
他に何なんだよ。
「桐生」
「お、おう!?」
「壁を睨んでも穴は開かない。君の能力を使用しない限り。
なお、我が家で能力行使は控えてほしい」
ナズナはため息を吐きながら、こちらを眺め
宅配ドローンから炭酸飲料とお茶を受け取っている。
「……お前という女は……」
はぁ、と呆れた声が漏れた。
(くそ)
やっぱ無理だ。
いろんな意味で諦められる気がしない。
いい。
そのまま気付かないでいろ。
ナズナが分かるまで、俺が分からせる。
……いつものことだ。




