第六話 ここは何処?
【ラルク視点】
ローザからの提案を一蹴した翌日。
僕は、仮の姿で前世の妻である愛美とその間に産まれた息子の智樹、愛美が世話をしていた子供達を集めて、話を聞いていた。
「集まって貰って申し訳ない」
「うさぎしゃんからまた優しい声が聞こえる〜あたち、こっちの方が良い〜」
「美結ちゃん、そんなに抱きついたらうさぎさんが困っちゃうから先生のところにおいで」
「やだやだ!美結は、優しいうさぎしゃんを独占する〜」
「倉間先生、お気になさらず。では本題に入ろう。ここが何処か分かるものは居るか?」
「ここが何処か?現実世界とは別の世界で異世界と呼ばれる場所ですよね?」
「母さん、この魔族が知りたいのは、そういうことじゃない。それにこの魔族の質問に答える義務もない」
「智樹、そんなこと言っちゃだめよ。この人は魔物なのかもしれないけど私たちのことを助けてくれた優しい魔物さんなんだから」
「母さんは、直ぐに他人を信用しすぎなんだよ!冷静に考えてさ。コイツらが現れたから俺たちがこの世界に召喚された可能性もあるって分かってる?」
「そ、それは…」
確かに2人の気持ちも分からないでもない。
2人から見れば僕はいきなり現れた不審者と変わりないのだから。
「美結はね。ここが何処だか分かんないよ。パパもねママもね居ないんだよ。でもねでもね優しい愛美先生がね守ってくれたよ」
美結と呼ばれる少女は首を傾げながら話してくれた。
大事なことが省かれていて、分かりづらいけど言いたいことはよく分かった。
「美結ちゃんは、倉間先生が大好きなんだね」
「うん。美結が走り回っても怒らないし。美結が床や壁にお絵描きしても褒めてくれるの。でも龍牙兄とつくし姉は嫌い。愛美先生困ってないのに困らせてるって美結のこと良く怒るもん」
床や壁に落書きされても黙ってるのはどうかと思うけど…。
「美結ちゃんは絵を描くのが好きなの?」
「うん、だいしゅき。あとねあとねウサギしゃんも愛美先生と同じくらいしゅき〜」
愛美はウサギと同等なのか…。
それはそれでどうなんだろう?
「美結ちゃんが困らせてしまって申し訳ありません」
「気にしないでください。このぐらいの歳の子なら寧ろこれぐらい元気があった方が良いですよ。それにしても美結ちゃんのランキングでは倉間先生はウサギと同等なんですね。ふふっ」
「その笑う仕草!?」
ん?
僕の笑う仕草がそんなに驚くことなのかな?
「どうかされましたか?」
「いえ、亡くなった主人に重なったもので、もう12年も前なんですけど…あ!ごめんなさい私の話なんてして。美結ちゃんも言ってた通り、ここが何処だか私にも分からなくて…」
あー癖は中々抜けないって言うけど、愛美に言われないと気付かなかったな。
僕は笑う時に手を拳にして口元に当てる…これって僕の癖だったのか。
それにしても愛美にもここが何処だか分からないのか…じゃあ一体どうやってプロイセン王国とフランク王国の中間地点に帰るべきか…。
転移魔法の使い手とか居たら行ったことのある街にファストトラベルとかできるのだろうか?
「あのウサギさん?ウサギさんはどうしてこちらに?」
「あぁ、なんか不思議な光に包まれまして、気が付いたらここに」
「嘘…」
僕の言葉を聞いた愛美の顔が驚きと困惑に満ちている。
でも僕は嘘なんてついてないからそこは否定しないと。
「嘘じゃありません。だからここが何処か僕にも分からなくて、貴方たちなら何か知ってるかなとお呼び立てしたのです」
「勇輝さんなの?」
はっ?
えっ!?
えっ!?
えっ!?
何故、バレた!?
僕は何か失言したのか?
横を見ると控えていたローザが笑いを堪え、メアリーは初めて聞く名前にキョトンとしている。
さてはローザめ。
謀ったな。
迂闊だった。
それにしても僕の言葉の何が地雷だったんだ?
光に包まれて…気が付いたら…ここに…。
あっ!
これ、聞き方によっては何かに召喚されたってことに…ということは愛美のギフトは『召喚』とか?
ギフトの説明に求めに応じたものを召喚できるとか書かれていたとしたら…愛美が助けを求めた相手が僕だったとしたら…事ここに至っては誤魔化すのも無理か。
「はぁ。合わせる顔が無いから隠し通すつもりだったんだけどなぁ。今はラルク=フォン=ビスマルクとしてこの世に生を受けている。ここにいるローザは僕の専属執事、ここにいるメアリーは僕の専属メイドだよ。久しぶりでいいのかな…愛美」
「本当に勇輝さんなの?」
「正確には、前世の記憶が薄ら残ってる別人だよ」
実際、僕は住んでた街のことは覚えていたが住んでた家のことは思い出せなかった。
だから家に行くという選択は最初からなかったし、覚えてたとしても住居不法侵入なんて罪を犯すつもりもなかった。
前世の職業にしてもレスキュー隊としての知識はあるが助けた人のことや働いていた仲間のことは思い出せない。
だが愛美とのことは事細かに鮮明に覚えている。
どうしても忘れられなくて魂に刻まれていたのかも知れない。
「イタッ」
「ふざけんな!はっ?お前が俺の父親?別人として転生してました?それを信じろって?信じれるわけねぇだろ!」
深く思考していた僕は胸ぐらを掴まれて、息子の智樹に殴られていた。
ここまで、お読みくださりありがとうございます。
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それでは、次回もお楽しみに〜




