第一話 ライン諸島連合の勇者召喚
【ライン諸島連合の盟主視点】
突然だが余はライン諸島連合という小国の集まりを束ねる盟主のラインバーテンだ。
最早、ここまでか…我が小さな諸島に魔王軍と対抗できうる力はない。
初めこそ魔王軍をライン諸島から追い出してやると意気揚々だった連合参加者たちも、魔王軍がワイバーンやサイクロプスを投入して、一気に風向きは変わった。
ワイバーンの火球で、数千の命が一瞬で奪われ、サイクロプスの大岩のような投石で、外壁は全くの意味を為さない。
士気はみるみると地に堕ち、盟主の余に責任を押し付けて逃げる連合参加者もいる始末だ。
こんな状況を覆す方法なんて…。
いや、一つだけ一つだけまだ方法が…どれだけの犠牲を払おうとも異世界から勇者さえ召喚できれば、女神様より賜りし強力な力を持って魔族どもを追い払ってくれよう。
そう願い、魔法使いどもを引き連れて地下室に籠って数週間が経過した。
魔王軍が投入したワイバーンの火球が直撃し、幾度となく揺れが発生…サイクロプスの投石攻撃で民家や城は既に無いだろう…それでも異世界から勇者さえ召喚できれば…まだなんとかなる。
そう信じなければ、余とて心を保つことができない。
また1人、また1人と勇者召喚の魔法陣に魔力を注ぎ込み倒れていく我が国の魔法師たち。
必ずお前たちの犠牲は無駄にはしない。
この国を余の代で絶対に終わらせぬ。
やがて、魔法陣が光り輝いた。
「おぉ。これでようやく余の国が救われる」
何故だ!何故こうなった!
呼び出されたのは、歳は3〜5歳ぐらいの子供が10人とまだ幼さが残り青年とはいえない子供と大人の女性が1人。
まだだ…幼児と言えど女神様から素晴らしい力を賜っていれば…馬鹿を申すな!
子供を戦場に送ることなどできるか!
まだだ…まだ諦めてはならん…この女性が全てを覆す力を持っているかも知れないでは無いか!
「そこの女!こっちに来い!これを持て」
「私は何でもしますからどうか子供たちには危害を加えないでください」
「早くしろ!これを持て!」
この勇者の羽根ペンとやらは異世界から召喚された勇者がどんな力を持っているかを紙に書き示す。
この女だけが頼りなのだ…頼む。
表示されたギフトは…召喚?
一体、何を召喚するというのだクソが!
あー終わった!
ライン諸島連合は魔王軍の物だ。
いや、どうせ滅ぶならこのガキどもも使う…いやいやそれは流石に人道に…いや異世界から勝手に勇者を召喚した時点で一緒だな。
「ガキども!テメェらもこのペンを持て!」
「や、やめてください!貴方、何を考えているんですか!まだ、幼い子供なんですよ!」
「煩い!黙れ!役立たずの女が!」
「きゃっ!?」
「愛美先生に暴力を振るうな!僕が成敗してやるぞクソ野郎!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ダメ龍牙くん!私のことはいいから逃げて!」
「このこのこの離せクソ野郎!」
「フン!今はその不遜な態度も許して、まだ殺さないでおいてやる。とっととこれを持て!」
「いやだ!いやだ!いやだ!」
「うぅ。龍牙くん。智樹!皆んなを連れて逃げて!」
「でも、母さん!」
「親御さんから預かってる子供たちの命が1番大事だから」
「父さんも仕事優先で助けを求めてる人を助けるのがレスキュー隊員の仕事だって!まだ当時0歳だった僕を残して死んだんでしょ!この上、母さんまで失いたくないよ!」
「智樹、お願いだから子供達を守って。私に力があったら…勇輝さん。お願い助けて」
な、何だこの光は!?
目がぁ!
目がァァァァァァ!!!!
ようやく明滅が治まり辺りを見回すと余が捕まえていたガキも誰1人としてその場にいなかった。
「何処だ!?何処に行った!出てこい!余の国を守れ異世界の勇者ども!」
「子供に手を出すとか終わってんなお前?坊ちゃまが1番嫌いな人種だわ。それに国が滅ぶのはテメェが無能だからだろ?それを棚に上げて異世界から勇者を召喚して守ってもらおうなんてさ。虫が良すぎるんじゃね?テメェの国が滅ぶのはテメェのせいで、自業自得だろうが!」
「ゴベッ」
何だ?
何処からこのメイドは現れた?
しかもライン諸島連合の盟主である余に対して、何と不遜な物言いか…手打ちにしてくれるわ!
「剣抜いたな?これで、殺されても文句言えねぇよな?坊ちゃまとの時間を奪った罪、その身で償ってもらおうか…カス!」
「ギャベし」
余の意識は最後に突如として現れた洞窟を見ていた。
ハハッ…ダンジョンがよもやこんなところにできていたとは…運にも見放されたか。
いい気味だ…余に盟主を押し付けて一目散に逃げ出した他の奴らもここを落とした魔王軍を相手に抗う術などあるはずもない。
それに、もう地下深くにダンジョンという根も張られていたのだ…余のやろうとしたことは何の意味もない…全てが無駄…無駄なことだったのだ。
「メアリー、殺したらダメじゃないか!」
「大丈夫です。坊ちゃまの嫌がることは致しません。気絶させただけです」
「本当かなぁ?」
「メアリーのことをお疑いになるのですか坊ちゃま。うぅ」
「嘘嘘嘘、勿論信じてるよメアリーのこと」
「坊ちゃま!」
余の意識が途絶える頃、そんな声が聞こえた。
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それでは、次回もお楽しみに〜




