第十七話 ビスマルク旅館
【フランク王視点】
待合室とやらで待つとラーニャが顔を赤らめて出てきた。
相当、恥ずかしい目にあったのだろう。
「うっし。これで大丈夫だから今日からズッコンバッコン励めよな」
「このガキは、最後までデリカシーないのね!」
「ニシシシ。あ!でも守る国がもう無いんだっけ?」
「依子ちゃん!言い過ぎ!ごめんなさい!ごめんなさい!悪気は無いんです」
確かにちと直球すぎる気はするが、守る国が無くなったのは事実だ。
「まぁ、アレだ?昔の人は何も無いところから国を作ったんだろ?崩れちまったなら前より頑丈なものをこれから作っていけばいいんだよ。歴史の授業で習ったし、合ってるよな純子?」
「うーん。この世界のことは知らないけど、確かに私たちの住んでた世界ではそうだね」
歴史の授業とやらは知らぬが確かにこの子供の言う通りだ。
ここに国を建国したときは、何も無い更地だったと聞く…守れなかったのならまた作れば良い…か。
簡単には割り切れぬが…そういう選択肢もあるのだろうな。
「それよりも赤ちゃんが出来たらまた来いよな。あーし、そういうことにめちゃ興味あるし」
「絶対にぜーったいにもうここにはこないから!」
「ハハッ」
子供好きのラーニャがあんなに言い返すなんて、相当恥ずかしい目に…。
「アナタは、何を笑ってるの?」
「いや、子供好きなラーニャの珍しい一面を見れて、可愛いなと思ってな」
「…。もう!今日は寝かさないからね」
何故、そこで顔を赤らめる?
いや、今日は寝かせてくれ.息子のことでもう心身ともに限界なんだ。
「あ!そうだ。酷く疲れた顔してるアンタらに2階にある旅館を勧めるぜ。マジで、温泉は気持ちいいから疲れも一瞬で吹き飛んで、夜もビンビン、子供もあっさりなんて…な」
「アナタ、聞いたわね!さぁ、2階の旅館に行くわよ!今すぐに!」
「いや、ラーニャよ。そんなに引っ張るな」
再び箱の中に入り、ラーニャが2のボタンを押す。
「あの子、王族相手に全く物怖じしないどころか生意気な子でしたわね」
「ハハッ。ラーニャがそんな事を言うとは、よっぽど気に入ったか?」
「そ、そんなんじゃありませんわ!あの子のことは絶対にぜーったいに許しませんの」
こんなラーニャの一面を見るとは…俺たちの子供か…もし、本当にこれからできるかも知れないのならあの聖女には感謝しないとな。
「おぅ!新規のお客が2名だぜ姫!」
「ありがとう、リザードワン」
「姫に褒められた。う、嬉しい〜」
ハハハ。
君らもここに居たか。
「久しいな。勇者黛よ」
「あ!フランク王様!この度は、その御愁傷様です」
「全く、せっかく勇者黛も守ってくれたのにこんな結果になってしまった」
「アナタ、その人を知ってるの?」
「あぁ、ラーニャは初めてであったな。我が王国が魔物の襲撃を受け、クロータルの奴が召喚した勇者の1人で、リザードマンをアイデクセムから寝返らせた勇者黛だ」
「初めまして」
「リザードマンを寝返らせたですって!?とんでもない力ね」
「エヘヘ…それ程でも〜。それでは、改めまして。ゴホン。お客様、本日はご宿泊ですか?それとも温泉だけのご利用ですか?」
「宿泊で頼む」
「かしこまりました。こちら、当ビスマルクダンジョンのオーナー様より、初めての宿泊者様限定にお配りしているアミューズメントエリアの無料利用権です」
「そのようなサービスが。確かゲオルクの奴に卓球とやらに誘われていたな。それもアミューズメントエリアとやらにあるのか?」
「はい、あります。それでは、こちらがお部屋の鍵となります。ごゆっくりとお楽しみくださいませ」
鍵に書かれた番号の部屋に入る。
「ほぉ。何とも心落ち着く空間だな」
「えぇ。タイルでは無いですわね。何でしょうこの緑の…」
「失礼するぜ。姫から説明を頼まれた仲居のリザードツーだ。よろしく頼むぜ。早速だが、王妃さんの触ってるそれは畳と呼ばれてるものらしい。まぁ、俺っちも姫から聞いただけで、あまりよくわかってねぇ。姫曰く、とても落ち着けるらしい…知らんけど。で、机の上にあるそれはポット。ボタンを押すと熱々のお湯が出る。だからって、それを湯船に溜めて浸かるとかじゃねぇぜ。そこに用意されてる湯呑みに昆布茶ってのを入れて注いで飲むんだ。結構、お客さんたちに人気だ。俺っちは飲んだことないから…知らんけど。まぁ、そんな感じだ。晩御飯は、食堂からこの部屋に20時に届けられる。それまでは、がゆっくりとくつろいでくれ。最後に俺の説明がわかりやすかったら高評価押しといてくれ、俺だって姫から褒められたいんだ。頼むぜ本当に」
魔王軍の幹部が直々に率いる恐ろしい奴らが1人の女性にこうも従順どころか褒められたいなどと言い出すとは…人生わからんものだな。
まぁ、言われた通りに、湯呑みとやらに昆布茶とやらを入れて、ポットのボタンを押す。
「はぁ。落ち着くなぁ」
「えぇ。落ち着きますねぇ」
特にこの昆布茶とやらが渋いのに味気があって美味い。
後で、これを買うことができないか相談…。
部屋にも備え付けの風呂とやらがあるみたいだが…せっかくだから温泉に。
「アナタ、温泉に家族風呂というのがあるらしいですわよ」
「な、なんだと!?直ぐに向かおう」
「予約制らしくて…部屋にある電話でフロントとやらの番号に電話をかけて確認を取らないといけないらしいですわ」
「わかった」
結論から言うと、フロントからの返答では偶々ちょうど今、空いたらしく今から30分貸切にして貰えた。
「ふぅ〜。これほどの湯をダンジョンの中で堪能できるとは…。」
「えぇ。身体の芯からポカポカと温まって、良い気持ちですわ」
俺は妻の言葉に頷くとふと部屋の隅に目を向けた。
そこには、見慣れない部屋みたいなのがあり、サウナと書かれていた。
「あっつ!何だこの部屋は!?」
「本当ですわね。でも、何だか心地よい暑さですわよ」
「ふ、ふむ。少し、試してみるか…。」
耐えられん!
何で、妻はこんな暑いのに平然と居られるのだ。
ダメだ。
外の空気に…あー何だこれは…外の風が肌に心地良く…。
「サウナ、すごく良いですわ。それに、氷の入った風呂なんて、何の意味があるのかと思いましたが、こうして、熱った身体を鎮めるためでしたのね」
「あ、あぁ」
サウナを侮っていた。
暑い…確かに暑いが…その後外に用意された椅子に座って…ん?
ダンジョン内なのに外?
まぁ、どうでも良いか。
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それでは、次回もお楽しみに〜




