第十六話 ビスマルク診療所
【フランク王妃視点】
私たちの国と仲が良いプロイセン王国のルイーゼ王女様から聞いた聖女様とやらがいるところへとやってきた。
「この箱のようなものに乗れば良いのか?」
「はい。ビスマルク診療所は4階ですので、4というボタンを押してください」
「う、うむ」
主人に説明してくれたのは、プロイセン王国で冒険者をしていた女性で、今は料亭ビスマルクで働いてる従業員だそう。
料亭ビスマルクの料理は美味しかった…あの温かいラーメンなるものに、携帯食になりそうなおにぎり…豚の腸詰と聞いて躊躇したけど食べたらパリッとした食感に溢れ出る肉汁のフランクフルト…ジャガイモを細かく潰して焼いたというハッシュドポテト…デザートとやらには見た目も綺麗だったけどその味に感動したチョコレートケーキ…これらが働いたら賄いとやらで、従業員に無料提供されているらしい…私も国が無くなったことだし主人と雇ってもらえないかしらなどと本気で思った。
「アナタ、乗っただけでは動かないと説明を受けたでしょう?」
「あ、あぁ。そうであったな。4番…4番と」
ガコンと機会音が鳴り、箱が上下に動いているのを感じた後、ピッと音が鳴って、扉が開いた。
「この忙しい時に、またお客さんかよ!私たちを過労化させる気かよ!」
「依子ちゃん、頑張ったらラルク君が御褒美くれるかも知れないよ?」
「よーし、何人でもかかってこいや!ラルクきゅんからのご褒美のためならあーし、まだ頑張れる!」
廊下には、身体の何処かを負傷した我が国民が居た。
「陛下にラーニャ皇妃!?す、直ぐに」
立とうとした我が国民を制止して、私は言う。
「いえ、そのままで構いません。そのような大変な状況でも命があって、よかったです」
「おぉ。陛下とラーニャ皇妃が我らの慰問に来てくださったぞ。うぅ」
涙を流して喜んでくれる民…元はと言えばこれも私の育て方が悪いばかりに魔王に魂を売った息子のせい…頭を下げられるどころかこちらが頭を下げないといけないのに…。
「あ、さっき来た奴らはそこで待ってな。テメェらは、一列に並んだな。よしっ。後はあーしの特性塗り薬を欠損部分に塗ってと。良いぜ純子。やっちゃいな」
「了解だよ依子ちゃん。彼らの傷を癒したまえ…オールヒール!」
私は何を見せられているの?
足を無くしたものや手を無くしたもの…目を無くしたものや耳をなくしたもの…皆何事もなかったかのように、元通りに治っている。
こんなの神の奇跡と同等…これが勇者がかつてこの地に落とした紛い物の私のような存在では無く、本物の勇者の力…。
「うっし。じゃあ、お前らはとっとと一階の食堂に戻れ、2度とここに来んな」
「ありがとう。ありがとうございますじゃ聖女様!」
「あーしに近寄んなジジイ!あーしは、聖女じゃねぇ。聖女は、純子の方!」
「ふふっ。感謝されるのも良いでしょ依子ちゃん」
「よくねぇ!あーしに触れて良いのはラルクきゅんだけだから!」
「一途だねぇ」
感謝を述べて去っていく民たちが帰り際に話す。
「陛下や皇妃様も何も守れんかったワシらの慰問に来てくださりありがとうですじゃ。それでは、ワシらはここで失礼しますじゃ」
あの人は、義父がまだ王だった頃に近衛をしていた人だ。
とうに引退してるのに国の仲間達を守るために槍を持ったと聞いた。
さっきまで、片足と片腕が無かったそこには、まるで何事もなかったかのように…これは神の奇跡ね。
これなら私にどうして、子ができないのかも…。
「えーっと、ルイーゼちゃんから話は聞いてます。フランク王国の王様と王妃様ですよね?相談事は、不妊でしょうか?」
この子、本当に子供?
何で、そういうデリカシーの無いことをズバズバと聞いてこれるの?
「え、えぇ」
「じゃあ、ちょっと身体を触りますね」
「ちょ、ちょっと!?」
2人の子供が私の身体をペタペタと触る。
「こりゃ、だいぶやられてるな。この女、まだ三十路前ぐらいだろ?でもあーしらの世界で言うとここは、もうババアになって閉経しかけで腐ってる。こりゃ、男の方が相当、強くねぇと子供なんて無理だろ」
「依子ちゃん、言い方!友人がごめんなさい王妃様」
「い、いえ」
私の子宮が腐ってるですって?
それにしても失礼すぎるわねこのガキ!
「まぁ、あーしらに会えたこと感謝しなよ。直ぐに、ここをピカピカの新品に変えて、子供ドッカンドッカン産めるようにしてやるからよ!」
はっ?
このガキはまた何を言ってるの?
要は、私は外見は若くてもここは子供が産めないって診断をしたのよね?
「王妃様、心配なさらないでください。さっきのお爺さんたちと同じです。要は、王妃様はここをやられちゃったんです。でも、私なら治せます。信じてください」
「ここを誰に?」
「まぁ、あーしの見た目だと男の方には問題ねぇから、女の方の子宮を直接狙った呪いだろさ。にしてもアンタ、よくこれで無事だったよ。並の女なら死んでてもおかしくねぇよ。じゃあ、ちょっと手突っ込むからガバッと開いてくれ」
「へっ?」
このガキは何を言ってるのガバッて何?
「だから自分の両足を抱えて、手を突っ込みやすいように、こうするんだよ」
「そんな恥ずかしい真似できるわけないでしょうが!」
「じゃあ、治らなくて良いんだ?子供の顔、見なくて良いんだ?」
「う、うぅ。せめて、主人だけは遠ざけて」
「これは気がつかなくてすみません。治療が終わるまで、王様の方は待合室の方でお待ちいただけますか?」
「あ、あぁ」
私はこの日経験した恥ずかしい事を絶対に忘れない。
これで、子供ができなかったらこのガキ共、絶対にぜーったいに許さないんだからぁ!
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それでは、次回もお楽しみに〜




