第十五話 フランク王国の人々
【フランク王国の村人視点】
ここってダンジョンだよな?
ダンジョンって、魔族が生息してる危険な場所だよな?
何で、プロイセン王国の冒険者たちにここに連れ込まれるんだ?
まさか、プロイセン王国は既に魔王の手先に…?
「おぅ。よく頑張ったな。もう安心しろ。怪我はねぇんだろ。さぁ食え」
真っ白い帽子に真っ白い服を着たイカついオッサンから、黒いものが巻かれた丸いものと丼から湯気が出ている熱々の黄色い長細いものが入った物を渡された。
「あ!すまねぇすまねぇ!この真っ黒いのは、海苔だ。んで、中には米、その中に鮭を入れてる。で、こっちのは」
「料理長、ラーメンの説明はおいどんがするでごわすよ。今回のラーメンは、おにぎりを中に入れられるように、味噌味でごわす。さぁ!さぁ!食べるでごわすよ!」
料理長と呼ばれたイカついオッサンの3倍太そうなやつから、丼の中身を食べるように圧をかけられる。
ええぃ!
ダンジョンの中で、ご飯を食べたら魔物になってしまうのかも知れないが、さっきから鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いには抗えない。
俺は恐る恐る、箸で黄色い長細い物を掴んで、口に入れる。
な、何だよコレ!?
黄色い長細い物に味噌がよく絡んで、ツルツルといくらでも食べられるそうだ。
それに、このスープ…。
妻と共にここまで子供を連れて逃げてきたが、その子供が真っ黒い服に身を包んだ女性にいきなりナイフで刺されて、魔物に変わったのを見て、妻と共に絶望した俺の心に優しく染みる。
何故、俺の子を殺したのかと詰め寄ったところ、あの真っ黒い服に身を包んだ女性が言うには『ここがフランク王国の最期の砦ですので、失礼ながらこの鑑定の目で魔物と判断したので処理させていただきました。お気持ちは分かりますが魔物をあなた方夫婦の子として育てるおつもりですか?』と。
分かってはいた。
俺の子の流した血の色は緑色だった。
そして、カエルのような姿に変わって行った。
でも、俺の子の姿をしてたんだ…割り切れるわけねぇだろ。
でもそんなことを忘れるぐらい…この料理は。
「美味い」
俺はそれ以外の言葉を忘れたかのようにその言葉をずっと呟きながら完食した。
横を見たら同じように妻も涙を流しながら完食していた。
あの子はもう帰ってこないが、後追いなんてしたらあの子が悲しむ。
妻と共に今を精一杯生きなければ…。
あの子がもう一度、俺たちの元に産まれたいと思えるように…。
【フランク王視点】
我が息子の暴走を止めてくれたメイドの女に従い、やってきたのはダンジョンであった。
ダンジョンは、魔の者が運営しているとして、見つけ次第、調査して危険と判断したらコアを破壊して消滅させなければならない。
危険で無いと判断した場合は、ダンジョンで生計を立てている冒険者のために管理・運営をするというのがこの世界の方針だ。
だが、ここは入った時から違う。
余のせいで、大切な者を亡くした者たちが談笑し合い、食事をしていた。
余の民たちの目は、絶望に打ちひしがれ希望を無くした目では無い。
未来への希望に満ち溢れた眼をしていた。
こんなダンジョンがあるのか…。
「久しいなクローヴィス」
だからこんなところにプロイセン王が居て、驚いた。
彼は、冒険者の命を守るため、ダンジョンを将来的には全部消滅させたいという苛烈な思考を持っていた。
それが妃と娘を連れ、まるで家族サービスをしているかのようなラフな服装で楽しそうに食事をしているのだ。
「ゲオルクか?」
「あぁ、ダンジョン嫌いの俺が楽しそうにしていて驚いたか?」
「あ、あぁ。ヴィクトリア妃とルイーゼ王女も御挨拶が遅れて」
「お気になさらずフランク王。ここでは皆無礼講だから気にしないで。さぁ一緒に食べましょう。腹が立っては戦はできないというでしょう?」
「お母様、それを言うなら腹が空いてはですよ」
「あら、そうだったかしら」
「いえ、ルイーゼ王女。正確には腹が減ってはですわね」
「そ、そうとも言う〜」
ヴィクトリア妃の間違いを指摘したルイーゼ王女にラーニャがさらに間違いを指摘して、可愛く笑顔を振り撒くルイーゼ王女…その口元を拭いてやるゲオルク。
「あ!クローヴィスおじさんとラーニャおばさんは、子供が出来なくて悩んでたよね?ここにはね。そんな悩みを解決してくれるお医者さんも居るんだよ!」
「そ、それは本当なのですかルイーゼ王女」
「うん。多分。きっと。私の怪我もぽわぽわって治してくれたもん」
怪我と子が出来ないことに何の関係が?
「ルイーゼ王女、私のはケガでは無いので…無理かと」
ラーニャの言葉は至極もっともだ。
「うーん。でも、聖女様が言ってたよ。王族は、子供が出来にくいように魔王が呪いをかけてるのがセオリーだよねって。意味はまーったくわかんなかったけど。エヘヘ」
確かにゲオルクの前妻も子供が出来ず失意のままに身体が衰弱していき亡くなったと聞く、それから暫くして出会った今のヴィクトリア妃と年甲斐も無くハッスルしたところ、子供が出来たと。
ヴィクトリア妃は、ゲオルクとの間に一男一女を設けていて、確か今第三子を妊娠中であったはず。
まぁ、王子の方は冒険者として各地のダンジョンを制覇するのに忙しいらしく、後を継いではくれないかもしれんから次の子に期待していると前回会った時に言っていた。
確かに子供がいる国の方が少ない気はする。
本当に魔王が呪いの類を?
「ラーニャよ。ダメ元でルイーゼ王女の言う聖女様とやらに会ってみぬか?」
「アナタまで何を言い出すのよ。まぁ、会うだけなら別に構わないのだけれど」
「おぉ!そうであった。クローヴィスにヴィクトリアよ。ここには温泉にアミューズメントなる遊び場もある。どうじゃ、温泉上がりに卓球で勝負せぬかクローヴィス?」
「卓球?」
「そうであったな卓球はここにしか無いのであった…なぁにルイーゼは、スコティッシュケルベロスのスコッティちゃんやチワワヘルハウンドのチーちゃんにも勝つぐらいの天才プレイヤーゆえ、ワシのように教えを乞うと良いぞ」
「あ、あぁ。そういうことであれば」
これも王同士の交流と思えば良いか。
それにしても温泉まであるとは…。
ダンジョン嫌いのゲオルクが入り浸っているのも納得…いや昔のアヤツを知っておるからこそ別人なのではと疑ってしまうな。
ん?
今、スコティッシュケルベロスにチワワヘルハウンドと言ったか?
まさかな…1匹で国を滅ぼす力を持つ伝説の魔獣と、その炎は竜のブレスに匹敵すると恐れられている幻獣が居て、このダンジョンが危険で無いわけが…無いよな?
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それでは、次回もお楽しみに〜




