第十話 委員長を中心としたクラスメイトの行方
【渡会円視点】
『配達人』の伝通君のお陰で何とかリーツェン王国から逃げ出したクラスメイトは『ドレスメイカー』の西方寺さん、『ガーデナー』の丸美屋さん、『ザッピング』の物語さん、『テレパシー』の不思議さん、『調合』の桐島さん、『聖女』の清瀬さん、『式神使い』の阿部さん、『呪術師』の道満さん、『人形使い』の浄瑠璃さん、これに『予知』の私を加えた11人と伝通君が方々を駆け回って助け出したリーツェン王国の民1000人だ。
こんなに乗ってるのに狭さを感じさせないって、どんな配達トラックなのかしら?
さらに食料も生で食べられる美味しいものを『ガーデナー』の丸美屋さんが皆んなに配ってくれているお陰で何とか士気を保てている。
襲いかかってくる魔物の相手は『式神使い』の阿部さんが呼び出した鵺が狩ったり『呪術師』の道満さんが呪い殺したり『人形使い』の浄瑠璃さんが糸で操って同士討ちさせたりして凌いでいる。
欲を言えば『クラフター』を持つ土台君が居てくれたら何処かに落ち着ける拠点を作れたかもしれない。
現状、私たちの生命線は伝通君の配達トラック頼みとなっている。
「チッ遠くに行くほど魔物の数増えてねぇか?阿部!道満!無理しない程度に追い返してくれ!」
「了解。式よ顕現しなさい鵺!」
「呪いの力よ。目の前の敵を穿て!」
この世界には魔力というものが存在する。
それは女神様から与えられた『ギフト』にも適用されるようで、戦い続けの3人は毎日すっからかんが当たり前で魔力切れを起こすと暫く動けない。
これは『聖女』の清瀬さんの回復魔法でも回復させることはできない。
一度、3人とも戦闘不能に陥ることがあれば、とてもじゃ無いけど守りきれない。
私の『予知』がその最悪な未来を提示していないことだけは今のところ救いね。
私たちは幾度とない魔物の襲撃を受け、ようやく落ち着けそうな大きな街へとやってきた。
「ようこそ冒険者の国プロイセン王国へ!って何だぁその鉄の塊は!?これ、どうやって動いてんだ?はっ!もしかしてアンタも勇者様か?そうかそうか、うちは勇者様大歓迎だ!何たって、町外れのダンジョンで毎日毎日、美味しいご飯が食べられてるからな!勇者様々だぜ。ワッハッハッハッ」
ダンジョンで美味しいご飯?
なんか似たような作品を小説で見た気が。
じゃなくて『ダンジョン』の不動君は既にこの世に居ない。
この世界でのダンジョンは危険なものと認知されているとリーツェン王国に暮らしている人から聞いた。
じゃあ安全なダンジョンで料理屋を営んでいる人が居るってこと?
それか女神様の『ギフト』が重複して存在するかのどちらか…考えていても仕方ない。
とにかく、そこに行った方が良い。
「伝通君、町外れのダンジョンへ」
「委員長、正気か?危険じゃねぇのか?」
「私の『予知』は危険を察知していない。それは大丈夫ってことよ」
「わかった。委員長を信じる。けどよ危ないと思ったら直ぐにでも逃げるからな!」
「えぇ」
この異世界で、無限に走る車の最高速度に敵うのなんて無いと思いたい。
まぁ、なるようになる。
そんな気がしてる。
【伝通佑視点】
俺の名前は伝通佑だ。
クラスメイトの全員が俺のことを男だと思っている。
それもそうだろう、俺は身体は男、心は女として産まれてきた性同一性障害、今は名前が変わって性別不合っていう精神病の一つだ。
昔からおかしいとは思ってたんだ。
何たって、俺が好きになるのはいつだって男だったからな。
そのことを不思議に思ったお袋と一緒に行った精神科で、診断された。
やっと授かった息子だと思っていた子が精神病と知って、精神病なら心も男にすれば治ると思ったのかお袋と親父はこれまで以上に俺のことを男として扱うようになった。
正直、俺は自分が男を好きなことに何の問題はなかったと知って、気持ちが楽になっていたのに、別の意味で気持ちは憂鬱だった。
そんな俺のお気に入りの場所が学校の屋上のさらに上にある平たいところに寝転がることだった。
「伝通ユウ君だったよね?」
俺の名前をユウなんて女らしく呼ばれたことに一瞬ドキリとして、目を開けると俺のことを見つめる青色の眼が。
確か、コイツは留学生のラルク=フォン=ビスマルクとかいうドイツ貴族だったな。
それにしても綺麗で引き込まれる瞳だな。
「タスクだ」
「あ!ごめん名前読み間違えてたんだね。でも、ユウの方が呼び易いからこのままでも良いかな?」
おかしなやつだと思ったと同時に女らしい名前呼びされることに何だか特別扱いされてる気がして、心が躍った。
まぁ、俺惚れ易い性格だからなぁ。
それからは屋上のこの場所は2人のお気に入りの場所になり、ちょくちょく話すようになって、俺は自分のことを打ち明けた。
「そうなんだ。辛いね親の気持ちを背負わされるのって。僕もね親の期待との狭間にいるから気持ちはよくわかるよ」
「ハハッ。いっそのことお前が呼んでくれるユウちゃんになれたら良いんだけどな」
「うーん。今度うちに来る?ローザとメアリーならそういう願いも叶えてくれるよ多分」
俺が女に?
それは、良いかもしれない。
都合のいい日を伝えて、ようやくその日を迎えた日、俺たちの学校は勇者召喚に巻き込まれた。
親からも解放されて、今の方が良いなんて気軽に言えるほど俺は親不孝では無い。
それに、気持ちはわかる。
親父とお袋も祖父と祖母から産むなら男の子よとずっと言われ続けてきたらしいからな。
待望の男児が実は心は女児でしたなんて、言えるわけがない。
こんな話をしてるのは、俺が今メイド服を着せさせられて、ダンジョン内をラルクと一緒に歩いているからだ。
「ラルク、流石にこれは」
「ユウ様。今は坊ちゃまのメイドですよ。坊ちゃまのことはラルク様もしくは旦那様とお呼びするように」
「失礼しました。メアリーメイド長」
「宜しい」
俺のことを女として扱ってくれるメアリーさんにも感謝しかない。
親に束縛されていないのに、未だに割り切れない俺の気持ちが問題なだけだ。
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それでは、次回もお楽しみに〜




