第九話 もう2人はビスマルクダンジョンのト・リ・コ
【ヴィクトリア視点】
子供連れ向けにお食事をした方にアミューズメントエリアを無料開放とは、思い切ったことをするものですね。
でも家族連れが楽しめるダンジョン。
こういうところは、陛下を説得するアピールポイントになるかも知れませんね。
だってルイーゼがこんなに楽しそうに何をしようか考えてるんですもの。
「クソッ!今日も取れなかったぜスコッティぐるみ!アームが弱すぎんだよ!クソッタレ!」
あぁいうのは向こうの世界でも見かけましたわね。
景品が取れないのを自分の腕のせいにせずアームのせいにして、台パンして、壊して弁償させられた人も居ましたわね。
あぁいうのはアームで直で取りに行こうとするのがいけないんですのよ。
アームを引っ掛けられるところはたくさんあるんですから。
成程、成程。
向こうの世界のアニメキャラとかではなく、こちらの世界の魔物をモチーフにしたぬいぐるみですのね。
「お母様?あれ、何?何で、大人たちが列を成して、皆で台を叩いてるの?」
「まぁ、アレは悪い例ですわね。それよりもルイーゼもやってみます?」
「うん!大人たちが並ぶぐらいに楽しいって事だよね。やる!」
順番を守るために列に並んだ私たちを見た冒険者たちは。
「皇妃様!?す、すいません!直ぐに代わります!」
「いえ、構いませんわよ。待つのも楽しみと言うじゃありませんか。それよりも子供も来るところで台を叩くなんてはしたない真似をおやめなさいな」
「は、はい!」
さっきまで並んでいた冒険者たちが蜘蛛の子を散らすように、コイン落としの方に行ってしまいましたわ。
少し、言いすぎましたかしら?
「えーっと。コレ銅貨入れないとできないよ?」
「大変、失礼致しました。こちら、坊ちゃま。いえ、当ビスマルクダンジョンのオーナー様より子供が存分に楽しめるようにお渡しするようにと」
この娘は、いつの間に?
見た目は、女執事さんと言ったところかしら?
それにしても、この銅貨を持ち逃げする可能性もあるのに、随分と太っ腹なのね。
「ありがとう。えーっと」
「ローザとお呼びください。ヴィクトリア皇妃様」
「えぇ、ありがとうローザ」
私の名前はもうオーナーを名乗るドイツ貴族さんから聞いたようね。
「ありがとう黒服のお姉ちゃん!」
娘の笑顔が見れたのですから私はそれだけで構いませんことよ。
「えーっと。このアームで、中にいるぬいぐるみ?さんを掴むと。やってみる!」
「おい。皇妃様は姫様にとことん甘いと聞いている。姫様が景品を取れないなんて事になったら…」
「あぁ。間違いなくここに血の雨が降るぞ」
あの、貴方たちは私を災害か何かと勘違いしているのではなくて?
そんなこと致しませんわよ。
「ルイーゼ。アームで直接狙うよりも面白い方法があるわよ。例えば、もう少しで落ちそうに見えるあの子とか」
「あの手前の子だよね。落ちそうなのに場所を変えたりしないから実は罠だと思ってた!」
「良い着眼点よルイーゼ。アレは罠なの落とせると思って普通にアームで掴みに行くと。大概掴みきれない。ここはね。私の言った通りにしてみなさい。ゴニョゴニョゴニョ」
「うん!わかった。やってみるね!」
貴方たち冒険者の中でも脳筋たちは頭が回らないからカモにされるのよ。
こういうのは、頭を使うのよ。
今から私の娘が手本を見せてあげるわ。
「えーっと。尻尾のあたりを掴んで、持ち上げる落とすでバウンドさせるだよね。できるかなぁ」
私は娘の肩に手を置いた。
「そう気負わずにリラックスして、チャンスは5回よ」
「うん。ありがとうお母様。あの可愛い猫ちゃんのぬいぐるみ?取ってみせる!」
1回目は、後ろすぎたわね。
2回目は、手前すぎよ。
3回目は、そこは脳筋たちと同じところよ。
4回目は、うーん惜しい!
5回目…。
「お母様、このゲーム距離感が難しいよ」
まぁ、そう教えて直ぐにできるものでも無いわよね。
仕方がない娘のために私が取ってあげましょう。
「私も自腹で一回だけ良いかしら?」
「はい。いえ、家族連れの方への無料サービスなのでこちらから」
「結構よ。見てて自分のお金で手に入れて娘にプレゼントしたくなったの」
「そういう事でしたら」
ローザと名乗った女執事さんが離れて、こちらを伺うように作業に戻っていった。
「お母様!頑張って!」
「えぇ。ルイーゼが応援してくれたらママ、もっと頑張れるわ」
「うん!フレーフレーお母様!」
さぁ、昔の感覚を思い出すのよ私。
スーハー。
尻尾よりちょい前、お尻の辺りを掴んでバウンド。
『そんなところで止めちゃって〜』
ふふっ。
娘がやってる時も思ったけれど、このフレーズは懐かしいわ。
ちょうど私がこっちに来る少し前にUFOキャッチャーにAIが搭載されて、声優さんが声を当てたりしていたのよね。
そして、的外れなところとかだとこんな声が聞こえるのよ。
まぁ、関係ないんだけど。
『また来てね〜』
えぇ、とても楽しかったわ。
「どうぞ。私の小さな恋人さん」
「あ、ありがとうお母様!フカフカで超気持ちいいよ〜」
「それは良かったわ。もうすっかり遅くなってしまったわね。今日のところはこれで帰りましょうか?パパも心配するから」
「うん。お母様、明日もまた来たいな」
「えぇ。また一緒にお城を抜け出しちゃいましょう」
「パパも来てくれたら良いのにな」
「ふふっ。それじゃあ、毎日のようにここに通ってパパを嫉妬させちゃいましょう。貴方の愛する妻と娘は、このままだとダンジョンに喰われちゃうよ〜って。クスクス」
「アハハ。お母様がそんな冗談を言うなんて。でもそれでパパが来てくれたら私嬉しい」
こうして、私と娘がダンジョンに足繁く通っている事にようやく気付いたのだと思ったら、初めはこのダンジョンの粗探しをしに来たと温泉で話してくださいました。
その後、もうなったかは私が語るよりも皆様の方がご存じでしょう?
ここまで、お読みくださりありがとうございます。
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それでは、次回もお楽しみに〜




