第三話 フランク王の来店
【フランク王視点】
「いらっしゃいませ」
ほぉ、ここがダンジョンの中にある料理屋か。
外からは洞窟にしか見えないのに内装は全く異なるのだな。
受付にいるのは、喋る兎か…喋る兎だと!?
どうみても魔族だろうアレは!
何処が安全性を確認しただ!
「あ!ゲオルク陛下もカリバーに連れられて食べに来たんですね。こちらの席へどうぞ。ホプキンス店長、2名様御来店です」
「あいよ」
真っ黒な服装に緑のエプロンで働いてるのは上級冒険者のア、アンヌでは無いか!?
向こうにいるのは期待の新人のリーリル!?
その他にも見渡す限り、我が国の多くの女性冒険者が統一された服装を着て、冒険者たちを案内しているだと!?
貴様らはここが何処だか分かっているのか?
ダンジョンの中だぞ!
いや、今はまだ事を荒げることは無い。
先ずは、カリバーが舌鼓を打つ未知の料理の数々を堪能するとしよう。
「初めてお越しのゲオルク陛下には、メインは肉料理のビスマルク豚のハンバーグステーキがオススメです。汁物からは、ビスマルク野菜のアイントプフ、デザートにバウムクーヘンは如何でしょうか?」
ハンバーグステーキ?
アイントプフ?
バウムクーヘン?
さも当然のように訳のわからない料理を勧められるとは…。
しかも、我が国で上級冒険者にまで登り詰めたアンヌに…。
ここで、俺が断ると怪しまれよう。
「う、うむ。アンヌが勧めるのなら間違いはなかろう…それで」
「待った!デザートにはチーズケーキの方がオススメですぞゲオルク陛下!」
チーズケーキ?
チーズとケーキは分かるがアレを混ぜたものが美味しいのか?
いや、そこでは無い。
さも当然のように待ったをかけるカリバーも相当だ。
「いや、アンヌが勧めたもので構わん」
「流石ゲオルク陛下です。ホプキンス店長!オーダー入ります。ビスマルク豚のハンバーグステーキにビスマルク野菜のアイントプフにビスマルク特製バウムクーヘンの3点です」
「あいよ」
しかし、アンヌの動きはまるでずっとここで働いているかのように軽やかだな。
「あ!忘れてたぜ。アンヌにリーリル、お前さんたちも今入ってきたお客様に料理を届けたら休憩に入っておきな」
「えっ!良いんですか!ヤッター!まかない!まかない!楽しみだなぁ!」
アンヌの喜び方は、数々の魔物を叩き斬ってきた姿と全く重ならん。
どうなっているのだ。
「お給金も出て、美味しい料理も食べれるなんて、ここでバイトして私良かったです!アンヌ先輩、誘ってくださってありがとうございます!」
バイトとは何だ?
お給金、ここで働いて金を得ているのか?
アンヌがリーリルを誘った?
もう訳がわからん。
「良いのよ!美味しいものを一緒に食べれば美味しさ2倍だもの!」
ここまで上級冒険者を取り込むとは、これでこのダンジョンに危険性は無いなどとよく言えたものだ。
このままでは、この国の冒険者の多くが腑抜けとなろう。
やはり、王として俺が何とかせねばなるまい。
「ゲオルク陛下、こちらビスマルク豚のハンバーグステーキになります。そして、こちらは初来店のお客様への当店の店長からのサービスでハッシュドポテトとなります」
ほぉ…これがカリバーたちも舌鼓を打つ道の料理か。
卵形の肉の塊にソースのような物がかかっているのがハンバーグステーキで、ハンバーグステーキと同じような形で、それを更に平べったくしてような物がハッシュドポテトとやらか。
フン、何が出てくるかと思えば、ただの肉の塊と同じような塊であろう…こんな物が美味しい訳が。
「何という美味さだ。こんな肉料理、食べたことがない。それに食べた先から、身体に力が漲るようだ」
いかんいかん、俺としたことが。
しかし、このハンバーグステーキとやら、外はこんがりなのに中から肉汁がジュワーっとカリバーが招きたいと思ったのも無理はない。
だが、それならこの料理人だけを招けば済んだ話だ。
女神様からダンジョンなどという危険なギフトを貰った勇者まで招く必要はないはずだ。
「こ、これは…。まさか、芋なのか?」
「ゲオルク陛下、分かりますか!そうなのです!これはあの味気のない芋なのです!俺も最初に聞いた時はめちゃくちゃ驚きました。そして、この外はカリカリ、中はホクホクの美味さにも!今では、毎日頼んでいるぐらいです!」
毎日?
こんなに美味しい料理が安い訳がない…毎日金を支払っていたら…いつか破産する。
まさか、それが魔王軍の狙いなのか!
おのれ、卑劣な。
いかんいかん、料理に罪はない。
「ゲオルク陛下、こちらビスマルク野菜のアイントプフです」
ほぉ、これはまた色々な野菜がごった返したスープか。
これでは美味しさも半減するであろう…。
「何だこの美味さは!?一つ一つの野菜がまるで共にハーモニーを奏でているかのようだ。お互いが味を引き立て合っている…美味いとしか言えん」
ふぅ…随分と腹がいっぱいになった。
「ゲオルク陛下、こちらが私オススメのデザート、バウムクーヘンです!やっと運び終わった〜。リーリル、まかないを食べに行くわよ!」
「はい!アンヌ先輩!」
一国の王を前にして、さっさと料理を置いてでも食べたい料理…か。
まぁ、分からんでもない。
こんなに美味いのだ。
料理人の腕が相当に良い。
そして、アンヌの勧めるバウムクーヘンとやらは、まるで樹木の年輪のようだな。
形こそ美味しそうに見えないが…。
「しっとりとして柔らかい…こんなデザートは食べたことがない。美味い」
通いたくなるのもよーくわかる。
だからこそ、このダンジョンは危険だと判断せざるを得ない。
だが、まだ判断を降すべき時ではない。
「勘定を」
「はい。こちら、中銅貨5枚になります」
馬鹿な!?
安い安すぎる!
これだけの美味さで、どんなに安月給な冒険者でも通える金額設定…か。
この店を潰す=ダンジョンを潰すと言えば、反乱が起こりかねんな。
ハハッここまで我が国の冒険者たちを懐に抱き込むとは…カリバーの出会ったダンジョンマスターの少年とやらは、中々の策士とみえる。
それにお会計のところは、幼い少女とアレ1匹で国を滅ぼしたこともあると言われるスコティッシュケルベロスとは…このダンジョンを攻略ではなく招くと決めたのも納得だ。
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それでは、次回もお楽しみに〜




