第二十五話 風呂で死にかけて
【冒険者集団のリーダー(カリバー)視点】
俺は警戒しながら、洞窟の中へと足を踏み入れた。
迎え入れてくれたのは、貴族の家でよく見るメイド姿の女性と……執事の女性?
それとあれは働いてる人がよく来ているスーツを着ている女性……あぁ俺たちに付いて来た女性もスーツ姿だったな。
あの2人は、友達のようだな。
再会できたようで何よりだ。
俺は、長年の相棒に対応を任せると辺りをくまなく探知した。
成程、作りはこの料亭と地下2階か。
まぁ、この時は百歩譲って、洞窟を作り替えるギフトを持つ勇者の力だと思ったが……この後不思議な魔力を感じて、もう一度探知すると階層が増えていた。
間違いない、これはダンジョンだ。
人間が住み着いたダンジョン或いはダンジョンを作り出せるギフトを女神様から授かった勇者様とやらが存在するかのどちらかだ。
今のところ、ここの魔物らしい魔物は、上級冒険者が100人程束になって、ようやく倒せる程の……馬鹿なスコティッシュケルベロスだと!?
それが幼い少女に鼻先を押し当てて、甘えているとでも言うのか!?
ヤバい、間違いなくこのダンジョンはヤバい。
敵対行動の一つでも取れば、俺たちは一瞬のうちに細切れだ。
ニコニコと近寄って来て、当店のオーナーと名乗る子供……こんな子供がダンジョンマスターだとでも言うのか!?
いや、待てダンジョンマスターがこんなにも簡単に姿を現すとは…好機…ここで…。
あまりの殺気に尋常じゃないほどの冷や汗が止まらない。
あのメイドと執事か!?
ヤバい、このダンジョンはマジでヤバい。
こんなところで飯を呑気に食うなど。
「美味い!こんな美味い飯、今までに食ったことがない!」
う、迂闊だった…もしこれに毒が仕込まれていたら…直ぐに吐き出さなければ…しかし美味すぎる。
料理に罪はない。
凄く美味かった。
それにあの哀れな盗賊だが、おそらく魔物に襲われてやむなく盗賊に身を奴したのだろう。
その盗賊の一味をメイドが殴り飛ばして、追い返した。
それも息も切らさず素手で、嬉々として殴り付けていた。
絶対に敵対行動は取るべきではない。
あのメイド、冒険者でも一握りとされている英雄クラスの実力がある。
それに、先程からずっと頬を伝う汗が止まらない、女執事がこちらをじっと睨み付けているのだ。
上級冒険者の俺を一睨みで脅せる実力、あの女執事もかなりの実力者と見て良い。
食事を終えて、帰るつもりだったが宿に泊まればこっそりと抜け出して、あのダンジョンマスターを暗殺できるかもしれない。
おそらく、あのオーナーの子供もメイドも女執事も受付の猫耳のお嬢ちゃんも魔族だ。
俺はできるだけ有効的に接して、向こうの欲しい情報も提供した。
再度泊まることができるか聞く俺に可能だと言って、部屋の鍵を渡しながらラルク=フォン=ビスマルクと名乗る少年が言った。
「あ、言い忘れてました。僕のギフトは『ダンジョン』です」
皆が口々にあぁダンジョンねの後に絶句だ。
そりゃそうだ。
何故、自ら敵だと名乗る。
俺たちを一体どうするつもりだ。
「女神様はラルク君に試練をお与えになったのね。人なのに魔王しか扱えないダンジョンなんてものを作れる力をお与えになるなんて。大丈夫よ!私が守ってあげるから」
いや、アンヌ…お前ほどの上級冒険者が何を言って?
「アンヌ先輩の言う通りです!こんな美味しい料理を多くの人に食べさせたいラルク君に罪なんて無いのです!」
新人冒険者の中でも有望株のリーリルまでだと!?
まさかこんなにも周到に冒険者を切り取るなんて……やられた。
あの料理に魅了の魔法がかけられてたのか。
「ふぅ〜極楽極楽〜」
待て!
何故、俺は今貴族のような風呂を堪能している。
それにこのシャワーとやら、いったいどこからあったかい水が出てくるのだ?
き、気持ち良すぎるだろ。
いや、冷静になれ俺!
あの後、治療魔法使いにアンヌたちに状態異常を打ち消す魔法を使って貰うように頼んだが、そもそも状態異常にすらなっていないとのことだ。
なら素で、今まで共に過ごした冒険者よりもダンジョンなんて危ないものを作るラルク=フォン=ビスマルクなる少年を選んだと言うのか?
一瞬で、上級冒険者の心を掴むあの少年が恐ろしい。
しかし、風呂がこんなに気持ちいいものだったとは…これは貴族連中が毎日入るのもわかる気がするな。
こっちは、川での水浴びが主流だってのに。
何だか、俺まで腹が立ってきた。
そもそも、こんな暮らしを貴族だけがしてるのは不公平では無いか?
いかん!
毒されている!
この風呂に精神をおかしくさせる何かが入っているのか!?
まずい!
あの密室のような部屋に逃げ込まなければ!
「何だこの熱気は!?新手の敵の攻撃か!暑い暑すぎる!」
「ボス!何を1人で騒いでるんです?というか、この暑さが良いんじゃないですか。もう限界ですか?」
「いや!ここ、暑すぎるだろ!」
「蒸風呂というらしいです。流石にこれは貴族連中も知らないでしょ。いやぁ、何というか。身体がポカポカしたら外の長椅子に寝転んで、風に当たりながら冷ますをさっきから繰り返しているんですが、なんかね整うんですよ」
コイツが何を言いたいのか全然わからない。
俺はもう限界だ!
「ボス。そんなに暑いならこの蒸風呂の前にある小さい方に入ってください。凄く気持ちいいですから。その際、いきなり飛び込んじゃダメですよ!足元からゆっくりと身体に慣らす感じで。いきなり飛び込むと色々と大変ですから」
何が大変だ!
お前らが少しづつ毒されていることに気づかない方がよっぽど大変だ!
ドボン。
冷たすぎるだろ!
何だよコレ!
あっ意識が。
「だから言わんこっちゃない。この蒸風呂に入る前にきちんと前の張り紙の注意事項ぐらい読んでくださいよボス!」
この後、治療魔法使いの治療魔法のお陰で何とか意識を取り戻した。
俺の心をズタボロにしてくる…このダンジョンは危険だ。
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