迷宮の異変、迫り来るのは
どうもアゲインストでございます。
迷宮を進むリーズたち、しかしそこには無視できない疑問が。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
二階層の要所を潜り抜け、俺たちは三階層へと足を踏み入れていた。
今日の予定としては行けるところまで、攻略に躓くような要素があるのならそこで進行をやめ、後日改めて攻略を開始することになっている。
今のところ新しく出てきた魔物にも持ってきていた道具を使うことで対応できており、もう少し深層に潜ることができるかもしれないというところまできている。
しかし―――
「……おかしい」
「? どうかしましたのリーズさん」
相も変わらず暗闇が支配する空間を進む俺たち、魔物との遭遇に気を配りながらの行進を続けていたが、ここに来て頭の中に小さな違和感が芽生えるのを感じていた。
地図を見ていたマールが俺の言葉を拾い問いかけてきたが、その様子を見るに俺の違和感に気付いているようではなかった。
ライドたちもまた、俺の言葉が届いていたのかこちらに顔を向けてきている。
これまでの戦闘でそれなりの消耗はあるが、戦いを経験することで徐々に自信をつけているのがその表情からは伺える。だからだろうか、うまく事が進んでいることでこの違和感に思い至っていないようでもあった。
「……ここまで何とか進んできたが、他の冒険者たちに遭遇していない。階層の始めからここまで、誰とも会わないなんてあり得るのか? だって、あんなにも大勢の冒険者がいるんだぞ。地図ができるほどに攻略が進んでいいるのなら、どこかでかち合っていても何らおかしくはないにも関わらずに、だ」
そこまで言って、ようやくといった感じでライドたちはそのことに思い至り驚愕の表情を浮かべている。
俺が持つ違和感、それは俺たち以外の冒険者に全くと言っていいほど出会っていないことである。
俺もまずはダンジョンの雰囲気にライドたちを慣れさせようとしていたためにそのことに気が回らなかったのだが、よくよく考えてみればおかしいことばかりであった。
振り替えってみれば数々のヒントがあったのだが、一番は先ほどの大部屋である。
通常、あの場所を通ろうとすればあの数の魔物たちと戦わなければならない。
当然戦闘で起こる音というのは内部に響くことだろう。しかし、俺たちがいくまでの間に物音の一つもなかったというのは考えにくいことだ。
タイミングや内部にいる冒険者の数にもよるだろうが、少なくとも目の前に並んでいた奴らの背中すら見えないというのは一体どうしてなのか。
「いや、でも……別におかしいことはないのでは?」
あまりのことに立ち止まっていた俺たち、少し考えていたライドは俺の違和感をそこまでのことではないと口にする。
「僕たちが通ってきた道以外にも通路はありますし、結構な広さのある場所ですから音だって届くかどうか。それに会わないのであればそれはそれで軋轢も起きないからいいことでは?」
「確かにそうとも言える。だがな……」
「問題なくここまでこれてるんだし、気にすることないんじゃない?」
ライドの言っていることも一理あるし、決してありえないことではない。
だがそれでもなお、これがその事態に当てはまるかというと疑問を持たざる得ない。
それもこれも前提条件の違いを俺が知っているからなのだが……。
「……ん?」
そこまで考えて、ふと何かが動くような音が耳に入ってきた。
それはライドたちも同じようでいきなりの事態に周りを見回してその音がしてきた方向を探している。
「何だ、この音?」
「分かりません。でも何か、大きなものが動いているかのような……」
「上? 下? どの階層からなのかしら? でもそんな情報どこにもなかったわよ?」
「何か変な感じ……響いてるよこれ」
それぞれがそれぞれに疑問の声をあげるなか、それまで口を開くことのなかったシェルフィーが通路の先を見据えて警戒の声をあげる。
「皆さん気を付けて!! 大きな気配が向こうからやってきます!! 一つ前の横道に避難を、早く!!」
神官としての経験故か、俺が感じ取れないような気配に気付いたシェルフィーから退避の指示が飛ぶ。その必死な様子に俺たちが逆らうことなどなく、言われた通り全力で後退する。
「何がくるってんだ!? そんなヤベーのかよ!!」
「分かりません!! とにかく走って!! 追い付かれたら何が起こるか、私で予想できません!!」
「ちょっと本当になんだっていうのよう!!!」
「とにかく走るんだ!!」
「ちょっとま、あっ!?」
全力で走る俺たち、しかし咄嗟のことでマールが足を縺れさせてしまい倒れ込んでしまった。
横道まで後少しというところ、足の遅い彼女は二足ほど後方を走っていたのも悪かった。それに気付いたときには彼女の後ろに暗闇が差し迫っていた。
「ちぃいい……!!!」
それがシェルフィーの言っていたものか、そう思いつつもマールを助けるために踵を返す。
もう飲み込まれるのは目に見えてはいたが、それでも手が届くのは俺しかいない。
「リーズさん!」
「後は頼んだ!! 外にこの事を知らせてくれ!!」
マールのことを見て留まろうとしたライドをセルーナたちに任せ、俺はマールの側へ行くために闇色の壁へと飛び込んだ。
下半身を飲み込まれ、それでも何とかこちらへと手を伸ばすマール。
―――その手に触れた瞬間に、俺も壁へと飲み込まれ……、
意識がたち消え、暗闇の中へと落ちていくような感覚が最後に残った。
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