新米小隊、関門に挑め
どうもアゲインストでございます。
ダンジョンの底へと進路をとるリーズたち、彼らの前に最初の関門が現れる。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
暗闇が支配する空間、魔道具がもたらす明かりを頼りにして通路の一つを進んでいた。
最初の戦闘、ゴブリンとの遭遇戦からいくらか時間が経ち階層も地下二階へと場所を移していた。
その間に他の魔物との戦闘もあったが、どうにか全員傷を負うことなくここまでこれている。
足の早いウルフ種、物理の効きづらいスライム種など、初心冒険者が相手をするにはもってこいの魔物たち。こうしてまずは手頃な存在を配置することによって警戒心を削いでいるのだろう、という邪推が働いてしまうほど基本に忠実。このダンジョンの奥にいる存在のことを知らなければただの初級ダンジョンにしか思えないだろう。
―――だがそれはまやかしに過ぎないことを俺は知っている。その上でここを利用しようというのだ、もしもの時には全てを抱える覚悟をしなければならない。
それがライドたちを巻き込んだ俺の果たさなければならない責任なのだから。
「―――……リーズ様。この先最初の関門って言われてるところですわ。二階層はこの大部屋に道が全て繋がっているらしく、ここを越えないと次に階層に行けないっていうところみたいですわね」
五人で集まりながら道を進み、周りを照らす最低限の明かりで地図を確認していたシェルフィーが進路の先にある要所が近づいてきたことを告げる。
「そうか。まあ想定内、こういうこともあるだろうと準備はしてきた」
「確かリーズさんが先に斥候に行ってからでしたよね」
「まあな、こういうのは得意だしな」
そうこうしている内に俺たちはその要所へとたどり着いた。
それまでの殺風景な通路とは趣が異なる、人の頭ほどはあるかという大きさの岩石の集合で入り口が作られている。
その先の空間からは複数の生き物の声が不気味に響き、来る者を拒むような雰囲気を醸し出している。
「何ここ、こわぁ……」
「巣ってわけでもないのにこんなになるなんて、ダンジョンってすごいとこだね……」
「リーズ様、では手筈通りにお願いします」
「はいよ、ちょいと離れてな」
事前に話をしていた通り、俺が先行して中を探ることにする。
四人から少し距離をあけ、懐に手を入れてそれに触る。
「『暗黒コウモリの翼膜』の効果発動、我が身を包め漆黒の帳」
魔物の素材に宿る魔力を利用し、その効果を全身へと付与させる。
その効果は『暗幕』、光を通さない魔力の膜を展開しこの暗い空間で姿を隠蔽する。このままだと俺も何も見えないので目の所だけは空いているがな。
ゴブリンなどは暗視に優れているが気配を察するのに疎く、濃い闇の中ならこちらを察知されることもない。ウルフ種などに臭いで見つかる可能性もあるがそれも対処している。
「こういうときにために消臭液を買ってるんだ。有効に使わないとな」
黒いシルエットだけになった俺の姿はその膜の中に入らない限り見ることはできない。ここに臭いを消す効果のある薬品を振りかければ存在の隠蔽はかなり完璧にできていると言えるだろう。
「まあ、これはこれは……」
「本当に真っ黒ね、不気味っちゃ不気味だわ」
「ちょっと怖いかも」
「まあこれくらいしなきゃバレちゃうからな。じゃあちょっと行ってくる待っててくれ」
「頼みましたリーズさん」
若干女性陣に不評ではあったがこれも安全のため、敵の戦力をきちんと把握するためにはしょうがないこと。
俺はみんなに入り口の影に潜んでいてもらい、広間へと侵入を始めた。
入り口からすぐ脇のところに沿うようにして移動する。内部な四角形の構造になっており、魔物の集団がその中央に集まるようにして各々好きなことをしている。
予想に反しこの中にいるのは最弱の魔物として名高いゴブリンだけだ。
「GYAGYA!!」
「GYO……」
「GOOO……GAAA……」
騒ぐもの、それを眺めるもの、眠るもの。
そのほとんどは通常のゴブリンであったが、一部はその種族としての特徴である小さな体躯を越える大きさの個体が何体か存在している。
ゴブリンの上位種、「ホブゴブリン」と呼ばれる個体だ。
(……結構いるなぁ)
その数、広間にいるゴブリンの約三分の一。
おおよそ四十は越えると思われる集団の内それだけの数がいて尚空間に余裕はある。無闇に挑んだら損害を被ることは逃れられないだろう。
だが、こういうことなら好都合。下手に異種族が混合されていないのなら例え上位種といえど同じ策で対応できるだろう。
内部の地形、敵の位置、種類、おおよそ見るべきところは見た。情報をもってみんなのところに帰ろう。
「戻った」
「うわぁああ、うぶぅ……!?」
「お静かにライド君、リーズ様ですわ」
驚かすつもりはなかったのだが、存外暗闇に目が慣れていたらしいライドには暗幕を解いて急に浮き上がった俺の姿にビックリしてしまったようで。
大声を挙げそうになったその口をシェルフィーが押さえて押し止める。ここでそんなことをされたらどうなることか分からんわけではないだろう、よくフォローしてくれた。
「すまん、余計なことをしたな」
「い、いえ……すいません」
「それでリーズ様、中の様子はどうでしたか」
「ああ、まあ事前情報通りってところだ。ただ数が多いだけで大したことはない。ほんのゴブリン四十体、内十数体はホブゴブリンだ。何の問題もない」
「……いや、何でもないことのように言うけど、それって結構な戦力よね。本当にどうにかなるの?」
調べていたことの報告を行うと、改めてその脅威に立ち向かうことの困難さにセルーナが顔をしかませている。
「大丈夫だって。無策で挑んでいるわけじゃないのは重々承知だろう? 準備はしてきてる、そのための買い物だ。
まあ、ほとんど自前なんだがな」
―――秘密兵器を用意してある。
俺の言葉に怪訝な顔をする四人衆を尻目に、密かに拵えていた代物がある懐へと手を伸ばす。
これもまた俺が付与士として特異と言えるが故に製造できるもの。
個人としての攻撃力が足りない俺が、何年もの歳月を掛けて作り上げた秀作。
ここで御披露目といこうじゃないか、心が踊るぜ。
読了ありがとうございました。
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