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リーズ・ナブルは此れにて御免 ~元軍人付与士は冒険者として成り上がる~  作者: アゲインスト
ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの???~
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嵐の前には微風に等しく

どうもアゲインストでございます。

先日は投稿のし忘れがございました、本当に申し訳ありません。

どうにも最近生活リズムが崩れがちでして、不徳の致すところでございます。

読者の皆様にはご迷惑をお掛けしておりますが、どうか気を長くしてお付き合いしていただきたく思います。


 こちらを顔を見ながら声を掛けてきたのは、青い瞳をした勝ち気な態度の男であった。

 隣に並んでいた六人ほどの集団、その中でも頭一つ抜けた力を感じさせる男であったが言葉ほどには向けてくる感情に悪いものは感じない。

 粗暴な態度ではあったが、単純にそういう性格なのだろう。冒険者には、というか戦う者にはありがちな性格と言える。

 

「よく見りゃどいつもガキじゃねぇか、何でこんなとこにきてんだ?」

「ちょっとナハト、いきなり失礼でしょ」

「だがよミラ、ここにくるってことはダンジョンに挑みに来たんだろ? とてもじゃねぇが力不足にしか見えねえ」

「ナハト!」


 心底疑問だとでも言うような表情をしてくるナハトという男に、仲間であろう魔法使い風の女が諌めている。

 

「保護者同伴か? おいあんた、こんなガキどもを連れて何しにきた?」

 

 しかし彼はそれで止まることなく今度は俺に語り掛けてきた。相変わらず隣の彼女が止めようとしているがどこ吹く風といったところ。

聞く耳持たぬといった感じだ。

 

 ライドたちはこの男の言葉に感じるところはあるだろいが、言い返すことなくグッと堪えていてくれている。これは俺が事前に言い聞かせていたことで、突っかかってくる奴がいたら俺に任せてくれるようにというのを守ってくれている。

 信じて任せてくれているのだ、役割をきちんと果たすべきだろう。

 

 

「おいおいお兄さん、いきなりご挨拶じゃないの。見掛けが子供だからってそんなこと言うもんじゃないぜ?」

「いやどう見ても経験不足って感じの奴らじゃねぇか。そっちの神官はともかく、他の三人はゴブリンだって殺したことがないような面構えだ」

「心配してくれてんの? 優しいねぇ……だが必要ねぇよ、こいつらは十分戦えるからな」

「そうか? 小僧は腕も細っそいし、もってる獲物も粗悪品だ。嬢ちゃん二人も命を奪うってこと慣れてるような感じじゃねぇ。お節介とかじゃない。

 

 ―――死ぬぞ? そいつら」

 

 ずけずけとした物言いは失礼そのものだが、言っていることはそこまで間違っていないところが反論のしずらいところだ。とは言ってもここで言い争いをしていても埒が明かない。前にいる奴らも気が気でないだろうし、後ろにも人が来はじめている。

 悪目立ちをするものではないが、ここはちょっと動くべきか……。

 と、俺がそんなことを考えていると、先ほど来たと思われる集団の後ろから声を掛けてくる奴が出てきた。

 

 そいつは何気ない足取りで歩いてきて、対立している俺とナハトの間に入ってきてこう切り出してきた。

 

 

「―――あらん? 昨日の少年たちじゃん。そっちはナハトの坊っちゃんだし、どうしたんだい? 何か問題でもあったの?」

 

 

 面白いものでも見るかのような表情で、その男は現れた。 

 「ガラドルの戦士団」を率いてこの土地へとやってきた、ダンジョン攻略の最有力組織の長。

 

 

 ―――現戦士長、ジュリウス。

 

 

 気安く俺の肩に手を回してきたその男は、出現と同時に場も注目をかっさらっていった。

 

「ちょっとあんた、止めてくれよ。今こいつと話をしてんだから」

「いーのいーの、お前さんみたいな骨のある奴はなかなかいないんだから俺様気に入ってんの。仲良く争い合おうぜ?」

「意味がわからねぇ……」

「競争相手がそんなこというなよぅ、ギスギスは嫌いなんだよ俺様。やるならやるでカラッとした戦いがしたいの」

「意味がわからねぇ……!」

 

 正直おかしい人でしかないのだが、これがわざとやっているようであるから質が悪い。こちらに絡んでくる様を見せつけているのは、ここにいる奴らに対する牽制なのだろう。

 実際ライドたちがここにいるのを疑問視していたナハトが悪い夢でも見ているかのような顔色で俺たちのことを見ている。

 

「じ、ジュリウス……何であんたがこんなとこに。あんたら、もう登録なんて済ましてるはずだろ」

「ああん? 俺様がどこで何しようが俺様の勝手だろう? 別に悪さをしてるわけじゃねぇんだから、そんなびくつくなってよ」

 

 ジュリウスに対するナハトの態度はまるで天敵にでも会ったかのようなものだ。ジュリウスはそんなナハトの様子を見てまたも面白がっている。

 

「……前にあんたとやりあってもう懲りてる。次はそこの奴らが標的なわけか」

 

「そういうこと。だから―――

 

 ―――手ぇ出すんじゃねぇぞ。俺様の獲物だからよ」

 

 

 ギンっ……と空気が締め付けられるような殺気が、ジュリウスを中心にして放たれた。

 その威圧はナハトだけでなく周囲の人間たちにも及び、息を飲む以外の音がしなくなり静寂が支配する。

 その重圧は気の弱い者にはキツいもので、こっちの経験の薄い少女二人は吐き気を催しているようでライドが顔色を悪くしながらも前に出て二人を守るようにしている。

 

「くっ……!」

 

 一方、直接殺気を向けられたナハトは歯を食い縛って殺気に耐えていた。退きそうになっている足を必死に抑える様は恐怖を感じながらも自分を奮い立たせているようでいて、それなりの修羅場を掻い潜ってきたことを伺わせる。

 その反応が思っていたものではなかったのか、ジュリウスはさらに強力な殺気を放とうとしている気配がしてくる。

 正直間近でこの殺気を食らっている身としては先ほど以上のものが放たれるのは勘弁してほしい。さすがに俺でも堪える。

 俺はもう止めてもらえないかとばかりに絡んできている腕を押し退けた。

 

「……そういうのいいから。こんなとこでおっ始めるつもりかよ」


 押し退けられた反動で後退したジュリウスは両手を広げながら不満そうな顔をしてくる。

 タイミングを外されたからだろう、もう先ほどのような恐ろしい気配はしていない。

 

「んだよ、釘指しといてやろうっていう俺様からの善意だぜ? どうせ絡まれてんだろうなってわざわざ来てやったってのにそりゃねぇよ」

「余計なお世話さ。仮にあんたの介入がなくても切り抜けてたよ」

「ほう? そういうことなら……邪魔したな。本当ならだけど」

「本当さ」

 

 

 ―――こうやってな。

 

 

 言うが早いか、という速度でジュリウスへ向けて拳を放つ。

 周りの人間にはコマ落としかのように見えるだろう。事前動作のほとんどを省略したそれの初動を見抜けた奴はいないだろう。

 

「……っ!」

 

 ジュリウスの頬を掠めるように突き出された俺の拳は、スピードに伴うようにして奴の後ろ側へと空気が弾ける。

 それはジュリウスの殺気によって張り詰めていた場を一掃させるに足るものであったようで、恐怖の色で染められていた空気が別のものへと変貌していく。

 

「なっ……!!」

「うっそ……」

 

 ナハト陣営の二人は驚愕していた。

 まさかここでジュリウスの方に手を出すとは、と。

 

 ナハトは自分でも納得するほどには単純な男ではあったが、相手の力を見抜く眼力については自信を持っていた。

 それに従って実力不足と見受けられた奴らに忠告のつもりで話し掛けたのだったが、それがまさかあの「ガラドルの戦士団」のジュリウスに目をつけられている何て夢にも思わなかった。

 

 

 

 以前、「鉄の街」と呼ばれる『アイアマラ』にて駆け出しと言える程度の実力しかなかった頃。まだ団員の一人であったジュリウスは、妹分のユリアナを連れてその場にいたギルドの冒険者の大半を半殺しにしたのである。

 

 正面からの、唐突な襲撃であった。

 

 瞬く間に蹴散らされていく仲間たち、そして手も足もでなかった当時の記憶は苦い経験として胸に刻まれている。

 そんな奴がよもやこんな子供と言えるような奴らを擁している男を敵と認めているなどとは。そしてその男が、自分が恐怖を抱いている相手に対して躊躇なく一撃を放ったのだ。その光景はナハトにとってはとてもでは信じられないものであった。

 それは彼を諌める立場であったミラ、リーズに動くことを止められていたライドたちや周りで事の成り行きを見守っていた面々も同じである。

 

 

 ―――まさか殴りかかるとは、と。

 

 

「……面白いねぇ」

 

 若干の間を置いて口を開いたジュリウスの第一声は、周りが予想したものとは掛け離れたものであった。

 もっと怒りを表すかと思えば、むしろ歓喜の表情を浮かべている。

 これが攻撃をされた人間のする顔なのかと、まるで同じ人間のする表情ではないではないかと。

 先ほどとは違う恐怖が辺りに感染し出すのを感じながらも、俺は目の前の男から目を反らさない。

 

「そうじゃなきゃ面白くないよ、いやはや俺様の目に間違いはなかったってわけだ。お前さんに任せときゃあの子らもいい感じに成長しそうだねぇ」

 

 そんな周りの雰囲気をまるで気にすることなく、軽い口調で評価を下すジュリウス。

 玩具の性能が確かめられたのに満足したのか、狂気的とも言える笑みが鳴りを潜めて大人しくなっていく。

 

「勝負はあくまでダンジョンで、だ。ルールを忘れんな」

「わかってるよぅ、横紙破りはご法度だ。今日はここまでにしとくさね」

 

 ―――じゃあ、またの機会に。

 

 そうして、言うだけ言って、やるだけやった男は、その存在感を周囲へと刻み付けて悠々と立ち去っていくのだった。

 周りの奴らも、その動きを妨げることのないように道を譲って避けていく。

 そしてその後ろ姿が扉の先に消えていき、ようやく見えなくなったというところで室内にいた奴らはやっと一息つくことができただった。

 

 

 ―――そうした一幕の後、俺たちの登録が憐れみの視線で囲まれていたのだが、それはまあいいだろう。

 実力を疑問視されるかもしれない、という問題がまるでなかったことの方が余程重要であったからな。

 

 こうして若干の衝突はあったものの、はれてダンジョンへの挑戦権を得ることに成功したのだった。

読了ありがとうございました。

感想など大募集しておりますのでよろしくお願いいたします。

評価、ブクマも御一考!

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