第32話 まさかマユが俺のツインレイ!?
俺は居ても立っても居られなくなり、携帯を手に取って迷わずマユの番号をタップした。
呼び出し音が鳴る間、柄にもなく心臓がバクバクと高鳴っている。
「もしもし?」
電話口から聞こえるマユの声に、少しだけ肩の力が抜けた。
「あっマユ、もう家に着いたのか?」
「もう着いてるよ! どうしたの……?」
少し不思議そうなマユの声に、俺は変に緊張しながらも本題を切り出した。
「あ、いや……あのさ……近いうちに、うちに泊まりに来ないか?」
「ええっ……、どうしたの急に?」
そりゃ驚くよな。さっきまで一緒に海にいて別れたばかりの元夫から、突然のお泊まりの誘いなんだから。
「いや、またマユとゆっくりお酒飲みたくなってね!」
俺が照れ隠しのように明るく言うと、マユは少し考えてから答えた。
「別にいいよ! タロウも一緒だけど!」
「もちろん! 料理とお酒は俺がバッチリ用意するからさ、マユはタロウの飲み物と好きなお菓子でも買ってきてよ」
「ん~! わかった! ……来週末だったら、大丈夫だよ」
「わかった! じゃあまた日が近くなったら連絡するよ、それじゃ」
電話を切った後、俺は思わず小さくガッツポーズをした。なんだか急に、来週末が待ち遠しくてたまらなくなってきた。
それからの一週間、俺は普通に仕事をこなしながらも、頭の中は常にマユのことでいっぱいだった。
ふとした瞬間にマユの笑顔が思い浮かび、タロウのはしゃぐ声が耳の奥で蘇る。
(本当にマユが俺のツインレイなのか……?)
考えれば考えるほど、これまでの後悔や、マユが許してくれた優しさが胸に染み渡っていく。マユのことを考える時間が、日に日に増えていったのだ。
そして、待ちに待った約束の当日。
まだお昼前にチャイムが鳴り、ドアを開けると、笑顔のマユとタロウが立っていた。
「いらっしゃい! さっそくだけど、昼飯でも食いに行くか!」
俺の提案で、三人で車に乗って出かけた。助手席にはマユ、後部座席にはタロウ。かつては当たり前だったこの光景が、今は奇跡のように愛おしく感じる。
賑やかな昼食の後、スーパーに寄って三人でカートを引きながら夕食の買い出しをした。まるで、普通の幸せな家族の休日のようだ。
家に帰ると、俺はさっそく今日の夕食と酒のおつまみの仕込みを始めた。
「マユとタロウは、先にお風呂に入ってきなよ」
「ありがとう! じゃあお言葉に甘えて」
バスルームから聞こえてくる二人の楽しそうな水音や笑い声を聞きながら、キッチンに立つ。
それだけで、独りぼっちだった部屋が急に暖かく、居心地の良い場所に変わっていた。
夜になり、テーブルには俺の手料理が並んだ。
風呂上がりのタロウは美味しそうにご飯を頬張り、俺とマユは向かい合って軽く飲み始めた。
酒が進むにつれて、心地よいリラックスした空気が二人の間に流れる。
俺は酒の入ったコップを置き、まっすぐにマユの目を見た。
「マユ……あのさ、この前、海からの帰りに話してくれたことだけど……」
「うん?」
「俺も、やっぱり三人で暮らしたいなと思ってね!」
その瞬間、マユの目が驚きで大きく見開かれた。
「……本当!?」
「ああ、本当だよ。毎日タロウの顔も見れるし、なにより……」
俺は少し照れくさくて言葉を濁したが、しっかりと頷いた。
マユの顔がパッと明るくなり、隣でご飯を食べていたタロウに向かって嬉しそうに言った。
「タロウ聞いた!? パパとまた一緒に暮らせるんだよ!」
タロウも「やったー!」と無邪気に喜んでいる。その姿を見て、俺の胸の奥がじんわりと熱くなった。
「それで、いつくらいから……?」
マユが期待に満ちた声で聞いてくる。
「うん! 引越しとか色々と準備もあるし、あと二、三ヶ月後くらいかな? それでどうかな?」
「いいよ! わかった! じゃあ決まりねっ!」
マユは満面の笑みでそう答え、俺たち三人の新しい未来が、この瞬間に動き出した。
「うん! じゃあ決まりだな。……ありがとう、マユ」
俺は心からの感謝を込めて、そう呟いた。
続く




