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第30話 ユカの正体に驚きの事実が!?


「ああ、俺の人生終わる…死ぬ」


  冷たい風を切って、地面が恐ろしいスピードで迫ってくる。そして――。


『ドンッ』


 全身が砕け散るような激痛を覚悟した瞬間、ふっと意識が途切れた。




……あれっ??


 痛みは全くない。ゆっくりと目を開けると、そこは柔らかな光に包まれた、どこか見覚えのある不思議な空間だった。


「ここは……前にも来たよな? 天国かな?」


 ぼんやりと辺りを見回すと、目の前に見知った顔が立っていた。ノアだ。


 その姿を見た瞬間、なぜだかひどくホッとして、全身の力が抜けていくのがわかった。


「あれっ、ノア? ここは天国? ってことは、俺はやっぱり死んだの?」


 俺が尋ねると、ノアはいつも通り淡々とした口調で、あっさりと答えた。


「はい! 死にました」


「おいっ! そんなに簡単に言わないでよ! だっておかしいでだろ? こうやって普通にノアと喋ってるんだよ!」


  思わず突っ込む俺に、ノアは静かに首を振った。


「でも大丈夫ですよ。ひとつのパラレルワールドが終わっただけですから」


「パラレルワールド……?」


「ええ。それにしても、あなたもとんでもない悪い女に引っかかりましたね」


 ノアの言葉に、俺はハッと息を呑んだ。ユカのことだ。


「あの女は、詐欺と窃盗で前科がある正真正銘の悪党です。しかも警察にはばれていませんが、過去に何人もの男をお金のために殺しています。お金のためなら本当に何でもする、残酷でずる賢い女ですよ」


「……なんだって?」


「あの女は、あなたの全財産と車をすべて自分の物にしようとして、周到に豪華客船の旅を計画し、すべてを奪い取ったんです。一ヶ月もあれば、名義変更から財産の移動まで、計画を実行するには十分すぎる時間です。」


「えっ……?」


「船の旅は、一度乗ってしまえば簡単には戻れませんからね。あなたを殺した証拠も残らない。母親が倒れたって言うのも全部嘘で、あなたを一人で船に乗せた時点で、彼女の恐ろしい計画はもう始まっていたんですよ」




「本当なのか……?」


 俺は愕然とした。最後に背中を強く押されて、ベランダから落ちる瞬間に振り返った時の、あのユカの顔が脳裏に蘇る。


 薄笑いを浮かべ、まるでゴミでも捨てるかのように『さ・よ・な・ら』と手を振っていたあの姿。


「俺は、まんまとユカの計画にはめられていたんだな!? ……なんて恐ろしい女なんだ! あいつには心はないのか?」


 怒りよりも、底知れない恐怖で体が震えた。


「そのようです。人間の中には、稀にそのような心の欠落した人間が存在します」


 ノアは静かに俺の目を見つめ、諭すように言った。


「いいですか、よく聞いてください。世の中は、悪い人間がいるから『良い人間』が存在するんです。すべてが良い人間しかいなかったら、良い人間という概念すら存在しません」


「……そうなのか? まあ、もう俺は殺されちゃったんだから、今更何を言ってもしょうがないよな!?」


 俺は大きく息を吐き出し、頭をかいた。


「さっき、ひとつのパラレルワールドが終わったって言ってたけど、じゃあ俺はまた違う世界に行って、新しい生活ができるってことなの??」


「もちろんです。次にどの世界に行くかはわかりませんが、あなたはまだ『ツインレイ』を見つけていませんからね」


「ツインレイ……」


「やみくもに探すのではなく、今までに会った人の中にいるかもしれません。胸に手を当てて、よく考えてみてください。…私に会いたくなったら、また呼んでくださいね」


 ノアの言葉に、俺は不思議と前向きな気持ちになっていた。 あんな最悪な死に方をしたのに、またチャンスがもらえるなんて。


「また生きて生活できるんだったら、どの世界でもいいや! ノア、ありがとう」


 俺が笑顔でそう答えると、ノアの姿と光の空間が、ゆっくりと溶けるように消えていった。


  新しいパラレルワールドが、すぐそこまで来ているのか?




続く

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