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第28話 家に帰ったら、金庫が空っぽに!


 一ヶ月に及ぶ長くも夢のような船旅が終わり、俺は家への帰路についていた。


 見慣れた街並みを通り抜けながらも、頭の中はユカのことでいっぱいだった。


(今頃どこで、何してるんだろうな……?)


 もしかしたら、お母さんの具合も良くなって、もううちに戻ってきて俺の帰りを待っているんじゃないかな?


 そんな淡い期待すら抱きながら、足早に我が家へと向かった。


 そして、ようやく見慣れた自宅のドアの前にたどり着いた。 「ふぅ、やっぱり家が一番だな」 そう呟きながらドアノブに手をかけた瞬間、俺は「あれっ……?」と声を漏らした。


 ガチャリ。 なんと、鍵がかかっていないのだ。


(ユカがいるのか?)


胸の奥でドクンと心臓が大きく跳ねた。俺は勢いよくドアを開け、玄関に飛び込んだ。


「ユカ! ユカ……! いるのか……!」


 大声で呼びかけてみたものの、返事はまったく無い。家の中はしんとしていて、人のいる気配は微塵も感じられなかった。


 じゃあ、なんで鍵が開けっぱなしだったんだ?


「……ユカの奴、慌てて実家に向かう時に鍵をかけ忘れたんだな」


 最初はそんな風に気楽に考えていた。急いでお母さんのところへ行ったんだから、それくらいは仕方ないだろうと。


 荷物を引きずりながら部屋に入ると、一ヶ月も家を空けていたせいか、なんだか他人の家に来たような妙なよそよそしさを感じた。


 いや、それだけじゃない。空気が違うというか、何かが決定的に「おかしい」という違和感が肌にまとわりついてくる。


 なんだ、この嫌な予感は……。


 背筋を冷たい汗が伝うのを感じながら、俺はふと嫌な想像に駆られ、奥にある金庫の前に向かった。


 震える手でダイヤルを回し、重い扉を開ける。 




「え~っ……!! 空っぽ!!」


 思わず叫び声が部屋に響き渡った。いつもそこにあるはずの現金も、大切な書類も、すべてが綺麗さっぱり消え失せている。


(まさか、車のキーは……?)


  慌てて引き出しをひっくり返すが、どこにも見当たらない。


 俺は転がるようにして家を飛び出し、地下の駐車場へと走った。息を切らして自分の駐車スペースを確認した瞬間、膝から崩れ落ちそうになった。


 俺の愛車であるポルシェもマセラティも、跡形もなく消え去っていたのだ。


 血の気が完全に引き、全身がカタカタと震え出した。


 俺は蒼ざめた顔のまま、這うようにして再び部屋に戻り、もう一度金庫の中を隅々まで確認した。


 すると、空っぽだと思っていた金庫の奥に、ポツンと一つの見慣れない携帯電話と、一枚のメモ用紙が置かれているのに気がついた。


 恐る恐るそのメモを手に取ると、そこには見覚えのある、間違いなくユカの字でこう書かれていた。


『カズキ、お帰りなさい。 貴方の全財産と車は、安全な場所に隠してあるから安心して。 この手紙を見たら、この携帯電話で000-0000-0000に電話して』


――一体何があったんだ??


 頭の中が真っ白になり、完全に思考が停止した。 わけがわからない!


  俺の全財産と車を「安全な場所に隠してる」って、どういう事なんだ!? 泥棒じゃないのか?


 それを、あのユカがやったというのか!?


 俺はメモと携帯電話を握りしめたまま、その場にへたり込んだ。何をどう考えても、今の状況がさっぱり理解できなかった。




続く


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