第27話 豪華客船の中は想像以上の豪華で驚いた
港に到着して見上げた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。
「おーっ! なんてでかいんだ……!」
目の前に停泊しているその豪華客船は、まるで巨大な高層ビルをそのまま横に寝かせたような圧倒的なスケールだった。
真っ白な船体が朝日に輝き、これから始まる約一ヶ月の果てしない海の旅を物語っている。
タラップを登り、船内に足を踏み入れた途端、俺はその豪華さに完全に度肝を抜かれた。エントランスにはまばゆい照明が輝き、ふかふかの絨毯がどこまでも続いている。
まずは自分の部屋を探し当てて荷物を置き、さっそく船の中をあちこち歩き回ってみた。
だが、一日ではとても回りきれないほど広い。レストランやカフェはもちろん、映画館やショッピングモール、フィットネスジムまで、ありとあらゆるものが揃っている。
ここはただの乗り物じゃない。一生涯暮らせるくらいの設備が整った、海に浮かぶ一つの「町」だった。
「あ〜、ユカがここにいてくれたらな……」
ふとした瞬間に、独り言が漏れる。これだけ素晴らしい場所に一人でいると、退屈はしそうにないが、どこか心がすきま風に吹かれているような気分だった。
何か楽しいことを見つけて過ごすしかない。そう自分に言い聞かせる。
船の生活に慣れてくると、だんだんと顔見知りも増えてきた。すれ違うたびに挨拶を交わす人たちもいて、一人旅の寂しさは少しずつ楽しい時間へと変わっていった。
ただ、気がかりなのはユカのことだ。たまに気を使ってラインを送ったり、電話をかけてみたりするのだが、まったく連絡が取れない。
「あの日から、お母さんどうなったんだろう……?」
まさかお母さんが亡くなって、電話にも出たくないほど落ち込んでいる状況なのだろうか。
悪い想像ばかりが頭をよぎる。何があったのかはわからないが、今は無理に連絡を取ろうとせず、そっとしといた方がいいのかもしれない。
俺はそう自分を納得させ、とにかくこの船での旅を精一杯楽しもうと心に決めた。
それからの毎日は、まさに夢のようなルーティンだった。
朝起きると、まずはデッキにある広大なプールで軽く泳ぐ。
その後はデッキチェアに寝そべって、潮風を感じながらのんびりと日光浴。
お腹が空いたら豪華な食事を堪能する。夕方になれば、オレンジ色に染まる海を眺めながら優雅にレストランで食事をし、夜は落ち着いた雰囲気のバーでグラスを傾ける。
毎晩バーで酒を飲んでいると、自然と色んな人に声をかけられるようになった。
その中の何人かとは意気投合し、一緒に食事をしたり、プールサイドでカクテルを飲みながらゲームに興じたり、華やかなパーティに連れ立って出かけたりもした。
新しい友人たちとの時間は刺激的だった。中には、俺好みの魅力的な女性もいて、親しげに話しかけられることもあった。
一人旅なんだし、ちょっとくらい羽目を外すチャンスなんていくらでも転がっていた。
「なんかもったいない気もするな……」
正直そう思う瞬間もあったが、俺はきっちりと一線を引いていた。心のどこかで、ずっとユカが合流するのを待っていたからだ。
どんなに綺麗な景色を見ても、どんなに美味しい酒を飲んでも、一番共有したい相手はユカしかいない。
賑やかなバーから自分の部屋に戻ると、そこにはふかふかのセミダブルベッドが二つ並んでいる。もちろん、もう一つはユカが眠るはずだったベッドだ。
綺麗に整えられたままのシーツを見るたびに、俺はため息をついた。
「あ~あ、早くユカ来ないかな。早く会いたいな……」
一人でもこれだけ楽しいんだ。もしここにユカがいたら、もっともっと楽しい時間が過ごせただろうに。
毎晩、暗い部屋で一人ベッドに横たわりながら、そんなことばかり考えていた。
しかし、俺の願いも虚しく、ユカとは連絡が取れないまま、一ヶ月の船の旅はもうすぐ終わりを迎えようとしていた。
結局、ユカは最後までこの船に現れなかった。
そして、いよいよ明日は下船の日。長い旅が終わり、ようやく家に帰れる。
だけど今の俺の心境は、この夢のような空間でもう少し暮らしていたいという名残惜しさと、やっと家に帰ってユカの顔が見られるという嬉しさが入り混じって、ひどく混乱している。
それでも、間違いなく言えるのは「楽しかった」ということだ。こんな素晴らしい経験ができたのは、船旅を勧めてくれたユカのおかげだ。
早く家に帰って、ユカに会いたい。そして、この船でのたくさんの土産話を真っ先に聞かせてやろう。
そんな思いを胸に抱きながら、俺の長い一人旅は、静かに幕を下ろした。
続く




