第11話 妻に浮気がバレて修羅場に!まさかのAI言い訳
俺はマリカとの関係にすっかりハマり、完全に調子に乗っていた。
自分ではうまく隠しているつもりだったが、周りから見れば、浮かれた中年男の行動などバレバレだったのかもしれない。
「中学の同窓会」
「男友達と朝まで飲み」
そんな雑な嘘をついては、2週間に一度は外泊していた。
マユだってバカじゃない。不審に思うのは当然だ。
ある夜、マユが探るように聞いてきた。
「ねえカズキ。……まさか浮気してないよね?」
ドキッとしたが、俺は平静を装って笑い飛ばした。
「えー? するわけないだろ! 今更そんなめんどくさいことしないよ。同窓会の連中と盛り上がっちゃってさ、断れないんだよ」
「ふーん……ほんとに? なんか怪しい」
俺は明らかに目が泳いでいたと思う。
マユはジッと俺を見て、釘を刺した。
「ま、いいわ。もし浮気してたらどうなるか、わかってるわよね?」
背筋が凍ったが、喉元過ぎれば熱さを忘れる。
俺は「バレてない」とタカをくくって、マリカとの密会を続けてしまった。
そして、運命の日がやってきた。
日曜日の昼下がり。
リビングでくつろいでいると、マユが真顔でやってきた。
空気が、張り詰めている。
「カズキ。二人だけで話があるんだけど、ちょっといい?」
「あ、ああ……いいよ(……ヤバい、バレたか?)」
ダイニングテーブルに向かい合って座る。
マユは無言のまま、バッグから数枚の写真を取り出し、テーブルに叩きつけた。
バシッ!!
「……ッ!?」
俺の心臓が止まった。
そこに写っていたのは、紛れもない俺とマリカだ。
ラブホテルの入り口で腕を組む姿。出てきてキスをする姿。
顔もバッチリ写っている。言い逃れようがない「決定的証拠」だった。
「これ、誰だかわかるわよね?」
マユの声は、怒りを通り越して氷のように冷たかった。
「カズキと、パパの秘書の沢田マリカ。……信じられない。よりによってパパの会社の人とやる? 恩を仇で返すにも程があるわよ」
脇汗が滝のように流れる。
思考が真っ白になる中、俺の口から出たのは、あまりにも情けない、往生際の悪い言葉だった。
「な、なんだこれ……? こ、これ、CGじゃないか!? そうだ、最近流行りの生成AIだよ! ほら、今はAIでどんな画像でも作れちゃうから……誰かの悪戯だよ! 俺を陥れようとしてるんだ!」
必死に作り笑いを浮かべて訴える俺を、マユはゴミを見るような目で見下ろした。
「……あんた、バカなの?」
「えっ…?」
「もっとマシな言い訳できないの? 最近あんたの雰囲気が変わったから、興信所に頼んだのよ。プロの調査員が撮った写真を『AI』で誤魔化せると思ってるの? 女の勘をナメないで」
「…………」
終わった。
俺はガックリと項垂れた。
何も言い返せない。
「……ごめん。申し訳ない」
震える声で謝罪したが、マユの目には涙が浮かんでいた。
それは悲しみではなく、決別の涙だった。
「明日から、パパの会社には来なくていいわ。当然、沢田マリカもクビにする。二人で好きにすればいい」
マユは吐き捨てるように言い残し、自室へと消えた。
リビングに一人残された俺は、震える手でマリカにLINEを送った。
『マユにバレた。探偵雇われてた。全部知られた』
即座に既読がついた。
マリカからの返信は、あまりにも早かった。
『わかった!! お互い、少し離れましょう!』
え? それだけ?
「大丈夫?」とか「会いたい」とかないのか?
俺たちの絆は、そんな簡単に切れるものだったのか?
スマホを握りしめたまま、俺は天井を仰いだ。
天国から地獄へ。
転落のジェットコースターが、動き始めた。
続く




