2話・路地裏に潜む虫
次の日。
創は辺りを警戒しながら街中を歩き、学校へ向かっていた。
(朝、昨日の事がニュースになってるのを
見てから、生きた心地がしねぇぇぇ……)
ーーーーー
やがて、教室に入り、そっと自分の席に座ると警戒するように周りを見渡す。
「昨日の花の創壊魔やばかったよなぁ」
「創壊神って名乗ってた奴、結局なんだったんだ?」
教室は昨日のグラウンドに出た創壊魔また創壊神の事で話が持ち切り状態だった。
(こ、この感じだと誰も俺が創壊神って事はバレてないのかな?)
少し安心し、深くため息をついた。
「ったく、心配して損したぁ……」
完全に気を抜いたその瞬間だった。
「おい」
後ろから聞き覚えある女性から
声を掛けられた。
恐る恐る振り返ると、
昨日ぶつかった金髪の女子生徒だった。
「ちょっと面貸せよ」
創は身体中から冷や汗がダラダラと
湧き出てきた。
(あ〜、完全に忘れてたぁぁぁ……)
ーーーーーーー
数分後。
青い空の下、コンクリートの床で出来た屋上の床に膝をつき女子高生に向かって頭を下げていた。
「昨日はほんっっっっとにすいませんでしたぁ!!!」
創の必死の声が屋上に響く。
「パンツの事は誰にも言って降りませんのでお許しをぉ!!!」
「やめろ!?パンツの事じゃねぇよ!!!」
「あ、今日はパンツ履いて来ました?」
「テメェ……」
女子生徒は顔を赤くした後に切り替えるように顔を左右に振ると改めて創へ目を向けた。
「今日はお前にお願いがあって呼んだんだよ。」
「お、俺に?」
ふと顔を上げる創。
「少し前から私の連れが学校に来なくてな。昨日やっと街中を歩いてるのを見つけたんだけど、様子がおかしくてな」
「お、おかしい……?」
首を傾げる創に女子高生は頷き続けた。
「それで、そいつが路地裏に行くからついて行ったんだよ。まあ途中で見失っちまったけど。……多分あの感じ創壊魔が絡んでると思うんだよな」
「……で?俺は何をしたらいいんすか?」
すると、女子高生の口角が上がった。
「お前って創壊魔の力使えるんだな?ああ、今は"創壊神"だっけか?」
創の背筋が凍り直ぐに顔を上げる。
「な、何で知って……あ」
つい心の声が出てしまった。
「見てたから」
「え?」
「何か怪しいなって思ってさ、部屋に戻って見たらお前、窓から飛び出て行くもん」
(あの仮面の時、見られてたのかよ……!)
完全に詰み状態。
(ど、どうするか……)
この場を乗り越える作戦を考える中、女子生徒が自信満々に創を見下す。
「この事。周りに言い回されたくないよな?それが嫌なら私の言う事ーーーー」
「別に?」
「……ふぇ?」
思ってたのと違う返答で顔が歪む女子生徒。
「別にあなたが皆に言っても、そんな胡散臭い事、誰も信じないですよ?」
創の冷静な態度に焦りを見せ出す。
「じ、じゃあ!お前が私のパンツ見たって事も言っちまうからな!?!?」
「それも同じっすよ。ついでにあなたに敬語使うの辞めますね?……戻っていい?」
立場逆転、女子高生を睨みつけキッパリと返した。
(友達の事は可哀想だけど、これ以上面倒事に
絡みに行ったらもっと
面倒な事に絡まれるからな…)
そう思いつつも創はくるりと体を回し、屋上を後にしようとした瞬間。
「……じゃあ何が欲しいんだよ?」
女子高生に悔しそうな声で呼び止められた。
「いや、欲しいとかじゃなくて…」
「せ、1000円でどう?」
女子生徒が創をジッと見る。
(小遣いかよ)
呆れるようにため息を零す。
「いや、金が欲しいとかじゃなくて……」
「じゃあ!5000円!!」
それでも女子生徒は中々、
引き下がらなかった。
「……俺こう見えてバイトしてるから、要らないって。少ないけど」
「だぁぁぁもう!!!!2万円!!!!!」
先程よりも大幅に値段を上げてきた。
(コイツ、こんなに高い値を出すって事は以外と金もって……)
創の心が揺らいでしまった。
「ダ、ダメだ!ほら、もう朝のチャイムなっちまうから……」
すると、女子高生は決心したような表情を浮かべながら、顔を上げた。
「分かった!!!それならもう、私の全財産全てやる!!!!」
「乗ったァァァァァァァ!!!」
即答だった。
ーーーーーーーー
3時間後。
昼過ぎ学校を抜け出すと二人は街の中を歩く茶髪の女性の後を後ろから追いかけていた。
「例の路地裏ってまだ先?」
「むん、もうむほひ……したら路地裏に着く」
口をもごもごとしながら答える。
「……なぁ?」
「ン?」
「何であんぱんと牛乳食ってんの?」
「ん〜と、探偵っぽいじゃん?」
「……はぁ?」
呆れたように顔を背ける。
「んだよ、牛乳ならやるよ」
「いらない」
即答だった。
そんな会話をしていると、前方にいた茶髪の女性が例の路地裏へと入って行った。
「おい、路地裏入ってったぞ!」
直ぐさま創達は路地裏へと入り、茶髪の女性に築かれずに後ろをマークする。
「いいか、変な物音立てんなよ」
前にいる女子高生が、そっと創へ呟く。
「コッチのセリフだっての……」
ーーーーーーーーーー
少しすると、少し広く開けた所へ足を踏み入れた。
茶髪の女性は、スっと路地中央で足を止めるのを見た創達は、慌てるように近くの箱の山へと身を隠した。
「な、何だ?いきなり止まったぞ?」
創が眉を顰めた瞬間。
カサカサカサカサ……。
路地の暗闇から、気味の悪い音がコチラへ向かって来た。
「おい、お前。まさか今日も獲物を連れて来れなかったのか……?」
やがて、路地の奥から滑らかに足を動かしながら、
蜘蛛のをした創壊魔が姿を表した来た。
「……申し訳ありません」
創壊魔は小柄な女性を睨み付ける。
「もういい、お前は今日をもって、私の栄養分になってもらう……ついでにそこの後ろの奴らもな」
蜘蛛の創壊魔はそう言うと目線を箱の山へと向けた。
「おい、そこにいるのは知ってるんだよ。今すぐに出て来い」
創と女子生徒の体から冷や汗が湧き出てくる。
「……おい!?めっちゃバレてるじゃねぇか!?」
「た、ただの脅しに決まってるだろ?大丈夫バレてないって……」
小さな声で話していたのもつかの間。
「フン」
ーーーーバゴォン!
蜘蛛の創壊魔は糸を使い、箱の山を一気に吹き飛ばした。
「「うおわぁぉぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」」
箱の山を崩され完全に、姿を現してしまう二人。
「お〜?そっちの金髪は昨日も来てたよなぁ?
見逃してやったのにま〜た来たのかい?」
創壊魔がニヤニヤとしながら女子生徒を見下ろす。
女子高生は足を1歩前に出すと、茶髪の女性へと指を指した。
「そこのやつを連れ戻しに来たんだよ!良いから黙って返せ!!」
「あ〜この役立たづねぇ〜……」
創壊魔は少し悩んだ後、舌をぐるりと舐め回した。
「コイツを今から栄養にするって言ったらどうすんだ?」
「今ココでお前を潰す!!!……コイツがな!!!」
女子生徒はサッと創を前へ押し出していた。
「はぁ!?何でだよ!?お前も戦うんだよ!?」
「いや、私戦えないし」
「コイツゥ……!」
二人の言い争いを他所に蜘蛛の創壊魔の口角が上がった。
「……丁度いい。そろそろ俺も力を試したくなって来た頃だったんだ」
創壊魔が茶髪の女性の横を通り、創達へ近付いてくる。
「お前ら2人とっ捕まえて、一気に3人俺の栄養にしてやる!!!」
次の瞬間、蜘蛛の創壊魔は何本もの足を動かしコチラへ走って来た。
「じ、じゃあ後は任せた!!!」
女子生徒は、そう言い残すと逃げるように路地の奥へと逃げて行ってしまった。
「あ、テメこの野郎!?」
叫び止めようとした瞬間、創目掛けて糸が飛んでくる。
「うぉい!?」
何とか、体を捻り糸を避け切る。
「だー!ちきしょう!!!」
歯を食いしばりつつ、創は手元に弓を作り出し蜘蛛へ狙いを定めた。
蜘蛛の糸避けながらも当たるかどうか分からない弓矢を放つ。……が、矢は蜘蛛の横を通って行くばかりだった。
「当たらねぇ!?やっぱり直接の方が!」
創は手に持っていた、弓を二つに割りタガー型に変えると、蜘蛛へ地を蹴った。
「とりあえず足を…!!」
足目掛け走っていた瞬間。
ーーーパシュ!!!
創の体に糸が巻き付き体が動かなくなってしまった。
「しまっーーー!!」
瞬間、創の体は蜘蛛の足に蹴られ路地裏のビルの壁に勢い良く吹き飛ばされてしまった。
ドォォォン!!!
「ぐっ……」
視界がフラフラとしながらも、体に巻き付いた糸を振り解こうとする中、ゆっくりと蜘蛛が創へ歩いて来る。
「なんだぁ、もっと遊べる奴と思ってたけど、そうでもなかったな」
蜘蛛が近寄り嘲笑いながら語り続ける。
「あの金髪ヤンキーちゃん、お前達を置いて助けて逃げちまったよ?」
「クッソ……!取れねぇ!」
蜘蛛の創壊魔は糸ので動けない創を見下しながら嘲笑う。
「大丈夫大丈夫。君も僕の栄養にして活用してあげるからな〜。感謝しろよ〜?」
そう言い蜘蛛は創へ足を伸ばした、次の瞬間。
「私をヤンキーと一緒にすんなぁぁぁぁ!!!!」
蜘蛛の横顔面に金髪の女子生徒の拳が突き刺さった。
「ごばぁぁぁぁぁ!!!」
ーーードォォォォン!!!!
蜘蛛は思いっきり吹き飛ばされ廃墟のビルに穴を開けながら倒れた。
体に巻き付いた糸を解いた創は立ち上がり女子高生へ声を上げた。
「お前戦えるじゃねぇか!!!」
その瞬間、女子高生の手を見詰めながら疑問が過ぎった。
(あの、蜘蛛を一発で吹っ飛ばす力……まさか)
創は茶髪の女性を背負い上げる金髪の女子高生へ近寄ると、ふと呟いた。
「なぁ?もしかして、お前も創壊魔の力持ってんのか?」
金髪の女子高生は創へ顔を向けると、無表情のまま口を開いた。
「……持ってるけど、何か文句ある?」
沈黙。
お互いは何も言わずに、茶髪の女性を連れて路地を後にした。
ーーーーーーーーーーー
数時間後。
茶髪の女性を背負い、公園へと移動した創達。
あたりはいつの間にか夕暮れに満ちている中公園内のベンチで茶髪の女性が目を覚ました。
「……あ、あれ?」
「お?やっと起きたか」
金髪の女子生徒が少し安心した顔で見つめる。
「あ、姉御?私……」
「お前〜、今回はマジ大変だったんだぜ〜?」
これまでの事を話し合う女子生徒二人を少し離れたベンチから創は微笑みながら見守っていた。
(そういえば路地裏の創壊魔ってそのままにしてて良かったのか……?ビルの壁もぶち壊してたし警察型になりそうだけども)
そんな事を考えてると金髪の女子生徒が創の前へ歩いて来た。
「終わったぞ」
「そうか、……って、さっきの茶髪の人は?」
さっきまでいた小柄の女性が見当たらくなっていた。
「ん?帰らせた」
金髪の女子生徒がそう答えた後にベンチに座る創を見下ろしながら口を開いた。
「そういえば名前聞いてなかったな?お前、名前は?」
「マジ今更だな……」
苦笑いを浮かべながらも、創はため息を零し顔を上げた。
「……俺は、浜田 創。で、ヤンキーちゃんは?」
「だから、ヤンキーじゃないってば!!」
女子生徒はムッとしながらも、名前を名乗った。
「み、美月。"掛田 美月"。分かったか!?」
金髪の女子高生、"美月"は、少し照れ臭そうに頬をかく。
「コレで良いだろ!!もう私帰る!!」
美月はそう言い残し公園の出入口へ足を運んだ時。
「あーーー!!!ちょと待ってぇ!!!」
創が思い出しようにベンチから飛び上がった。
「まだ報酬の"全財産"貰ってないぞ!」
「……それまだ覚えてたのかよ」
美月はそう言うとポケットから何かを取り出し創に向かって何かを投げた。
ーーパシっ。
創がキャッチし確認する。
「……じゅ、10円?」
創が呟いた時には美月は公園から走って出て行ってしまっていた。
「あああああああ!!!この野郎!?嘘ついたなぁぁぁぁぁ!!!」
創の声は届かず、公園に1人取り残されてしまった。
「ちきしょぉぉぉぉぉぉ!!!」
創は怒りに任せ、叫んだ後空に向かって叫んだ。
「誰か俺に報酬をくれよぉぉぉおおお!!」
創の声は悲しくも誰にも届かず
公園に悲しき声だけが響いた。
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