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元天才子役の男子高校生、女装をして、女優科高校に入学する。  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!
柊穂乃果ルート 愛しの桜と幸せへの道 

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柊穂乃果ルート 第2話 お団子少女はお姉さまの夢を見る。

 穂乃果に手を引っ張られ、柊家の屋敷の中へと足を踏み入れる。


 そして、引き戸の鍵を閉め、穂乃果と共に、家族が寝静まったであろう薄暗い廊下を静かに歩いて行った。


 深夜に、同級生の少女の家に忍び足で入るというのは……何というか、背徳感があるな。


 まるで、いけないことをしているような気持ちになってくる。


「……ふふっ、何だかドキドキしますね、お姉さま」


 穂乃果も同じ気持ちだったのだろうか。


 彼女は肩越しにこちらを振り返ると、いたずらっぽく笑みを浮かべてきた。


 その純真無垢な彼女の様子に、性別を偽っている罪悪感がズキリと――胸を痛く締め付けてくる。


「お姉さま?」


「いえ、なんでもありませんよ。そうですね……何だか、泥棒さんにでもなった気分になってきますね」


「お姉さまが毎晩おうちに来てくださるのなら、穂乃果は泥棒さんでも良いですよ!」


「穂乃果さん、声! おうちの方を起こしてしまいますよ……!」


「あっ……はわわわ……」


 慌てて口を手で押さえ、オロオロしだす穂乃果。


 オレはそんな彼女にクスリと微笑み、口を開く。


「穂乃果さんのお母さまには、夜分遅くにお邪魔してしまったことを、後で謝罪しなければなりませんね」


「お母さんは、お姉さまだったら、いつでも来てOKだと思いますですよ? 以前来た時から、次は楓ちゃんはいつ来るのって、うるさいくらいなんですからぁ~」


「まぁ、そうなんですか? それはとても嬉しいことですね」


 穂乃果と小声で雑談を交わしながら、階段を登って行く。


 ギシギシと音が鳴る階段を登り終え、二階に辿り着き、奥にある穂乃果の部屋の前へと辿り着く。


 襖を開けると……薄暗い場所から一変、明るい穂乃果の部屋が視界に入る。


 その明るい光に、思わず目が眩んでしまった。


 瞼をパチパチと数回瞬かせることで、何とかその光に慣らしていく。


「穂乃果さんのお部屋は……相変わらず可愛らしい内装をしていらっしゃいますね」


 ピンク色のベッドの上には、リスだったりクマだったり、動物の人形が飾られている。


 オレンジ色のカーペットの上には丸い白いテーブル、勉強机の上には、飴の入った小瓶が置かれていた。


 テレビの横にある棚には相変わらずたくさんのゲームソフトが並べられており、壁には、色々なゲーム作品のタペストリーが飾られている。


 何というか……彼女の明るい性格が全面的に出ている、ポップな部屋、だな。


 女子の部屋となると、どうしてもあの部屋………花子のあのエロゲグッズだらけの部屋のトラウマを思い出してしまうが……あれは特殊な例と言えるだろう。


 穂乃果の自室は、とても女の子らしく、可愛いらしい部屋となっていた。


「ささっ、お姉さま! これから何をしましょうか!! また、ゲームをしますか!? それとも、この前言っていた、深夜の女子会でも致しましょうか!?」


 キラキラと目を輝かせ、こちらを見つめてくる穂乃果。


 オレはそんな彼女の頭を、ポカンと、優しく小突いた。


「いたたっ! お姉さまぁ、何するんですかぁ!?」


「穂乃果さん、私は遊びに来たわけではありませんよ? 私は、穂乃果さんが怖くて眠れないからということで、ここに来たのですからね」


「あぅぅ……。そうでした……お姉さまがお部屋に来られたことで、テンションが上がってしまいましたぁ。申し訳ございません~~」


「明日は学校もあるのですから。夜更かしは程々にしないと、お肌の天敵ですよ。早く寝てしまいましょう」


「はいぃ~。わかりましたですぅ……」


 そう言って、穂乃果はそのまま、ベッドの中へと入って行く。


 しかし、パジャマ姿の穂乃果というのも新鮮だが、髪を下ろしている状態の穂乃果も、今更ながら、珍しいものだな。


 栗毛色の長い髪に、まっすぐと切り揃えられた前髪から見えるまんまるな大きな瞳……そして、パジャマの上からでも分かる、大きな胸のふくら……。


「………おいおい、だから、邪な気持ちを抱いてんじゃねぇよ……変態かよ、オレは……」


「? お姉さま? どうかしましたですか?」


「な、何でもありませんよ! さっ、も、もう、夜も遅いですし、寝てしまいましょう! 私は、カーペットの上で寝かせてもらいますねっ!! おやすみなさいっ!!」


 電気を消し、着替えなどを入れて予め持って来ていた鞄を枕代わりにして、寝ようとした……その時。


 穂乃果が、突如、ベッドから飛び降りて、オレの背中に抱き着いて来た。


「待ってください! 約束が違いますですよ!! お姉さまっ!!」


「え……?」


「一緒に寝てくださいって、私、電話で言ったじゃないですかぁ……!」


 そう言って彼女は、オレの顔を、潤んだ瞳で見上げてきた。


 ……オレンジ色の薄暗い電灯が、部屋の中を照らす中。


 オレと彼女は……静かに、見つめ合っていた。


「で、ですが、穂乃果さん……それは、その……」


「お願いですぅ、お姉さまぁ……」


「で、でも、それは………」


「一生の、お願いですぅ……」


 潤んだ瞳でこちらをジッと見つめてくる、穂乃果。


 オレはそんな彼女のお願いを……断ることができなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「えへへへ……」


 目の前に、穂乃果の顔がある。


 布団の中に顔を沈め、3,4cm程の距離にある、穂乃果の顔。


 オレは今、穂乃果のベッドの上で、穂乃果と一緒に……布団の中に入っていた。


 (……何故、オレは、こんな状態になってしまっているのだろう……)


 普通、ここは、無理やりにでも穂乃果を説得して、カーペットの上で眠る選択を取るべきところのはず。


 なのに、オレは……穂乃果と一緒に寝ることを選択してしまった。


 何故だ……何故、オレは、彼女の言葉に素直に従ってしまったんだ……。


 柳沢楓馬、お前、分かってるのか? オレは女装男で、彼女は、女の子なんだぞ?


 付き合ってもいない、そもそも女としか見られていないオレが、彼女と同じ布団で同衾するとか……犯罪行為でしかないだろ……。


 しかも、彼女は、男性恐怖症だというのに……何やってんだよ、オレは……。


「………ごめんなさい、お姉さま。私、少し、強引すぎましたかね」


 オレの表情の変化を読み取って、今考えていることを察したのか……穂乃果がすぐにそう謝罪してくる。


 オレはそんな彼女に対して、困ったように笑みを浮かべた。


「そうですね。穂乃果さんは時折、すごく強引な時があります。反省してください」


「あぅぅ……ごめんなさいですぅ……」


「ですが……そういうところが、穂乃果さんの良いところなのだと思いますよ。自分が思ったこと、やりたいことはすぐに実行に移して、実現させる。私のように、ウジウジとしていて、嘘ばっかり付いている人間には……その在り方はとても眩しいものです」


「お姉さまはウジウジなんてしていませんし、嘘なんて付いてませんよ。貴方様は、穂乃果にとって目指すべき、理想の女優……理想の女の子の姿そのものなのですから」


「理想の、女の子、ですか……」


「はいですっ! 前にも言いましたが、穂乃果は、お姉さまのようなかっこいい女優さんになりたいのです! いつだって人前で堂々としていて、困っている人がいたら助けて、曲がった事には真っ正面からぶつかっていって……周囲から尊敬の眼差しを向けられる、そんな、かっこいい女の子。私が幼い頃から理想とするヒロイン像は、楓お姉さまそのものなのです」


「………」


 オレは……ただ、そういう女優を……如月楓を演じているだけにすぎない。


 本来のオレは、柳沢楓馬は、如月楓のように輝いている存在ではない。


 オレは堂々となんかしていないし、誰かが困っていても素通りする、そんな、冷たい人間だ。


 役者になる夢を諦めて、花ノ宮家の騒動からも逃げ出して、ただ、この如月楓という環境が心地よいから、甘んじて選択しただけの、半端もの。


 本当のオレは、穂乃果に焦がれてもらうような……そんな、輝かしい人間などではない。


 柳沢楓馬として出逢っていれば、きっと、穂乃果はオレのことなど好きにはならなかっただろう。


 彼女のような正しい生き方をしている人間からすれば、オレなど、卑怯な小悪党。


 ただの、影の人間にしかすぎないのだから。


「………むっ、また悩み事ですか、お姉さま」


「え?」


 その時、穂乃果がギュッと手を握ってきた。


 そして彼女はえへへとはにかんだように笑うと、目を細めて、優しい微笑みを向けてくる。


「お姉さまのお抱えになっている悩み事は、穂乃果には分かりません。ですが、安心してください。穂乃果は、何があっても、お姉さまの味方ですから」


「何が、あっても……?」


「はいです。もし、世界中がお姉さまの敵になったとしても……私だけは、貴方の味方です。この前やったゲームで、シュツインズゲート? ってゲームがあったのですけど、そのゲームでは、この世界には選択肢の数だけ無数に世界線が広がっている……って、そんなことを言っていたのですよ」


「世界線……。つまり、人の未来は、たくさんあるということですか? 例えば、私が、花ノ宮女学院に入学していない未来もある、と?」


「お姉さまが花ノ宮女学院に入学していない未来は、考えたくもないですけれど……そういうことです。それで、話は戻るんですけど、穂乃果はどの世界線でも、お姉さまのお傍にいると思うのですよ」


「………私の、傍に、ですか」


「はいです。それで、どの未来でも、私は、貴方様の一番の妹分になっているんだと思います。どんなことがあっても、私は、貴方様の味方……です」


 ふわぁぁと大きな欠伸をした直後、穂乃果の目が徐々に細くなっていく。


「お姉さまの匂いに包まれたまま、眠れる……あふぅ、とっても幸せですぅ………えへへ……」


 そう言葉を残して、瞼を閉じて、すーすーと可愛らしい寝息を立てながら、彼女は眠りに就く。


 こっちとしては、女の子の甘い匂いに包まれるこの布団の中で眠るなど……落ち着いて寝られそうにないんだけどな……。


 まぁ、今は穂乃果が落ち着いて眠れることが、何よりも大事なこと、か。


「………どんなことがあっても、私の味方、ですか………」


 そう呟いて、穂乃果の手の甲をそっと撫でる。


 オレも、どの世界線でも、この優しくて暖かい、太陽のような少女の味方でいたいものだな。


「むにゃむにゃ……お姉さま、好きです、お慕いしておりますぅ………スースー……」


 この可愛い女の子の笑顔を、守りたい。彼女の寝顔を見て、オレは何故だかそう、思った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


《柳沢恭一郎 視点》


「……おい、樹。こんな時間にこんなところに呼び出して、いったい何の用だ」


 そう言って、オレは……柳沢恭一郎は、公園のベンチに座る白いスーツの男、花ノ宮樹にそう声を掛ける。


 すると彼はフッと笑みを浮かべ、青みがかった、朝焼けの空へと視線を向けた。


「恭一郎。君と私は協力関係にある。私は、花ノ宮家の当主に付くのが目的で、君は、借金を返済し、自分の子供たちを取り戻すことが目的だ」


「今更何を言ってやがる。まさか、このオレとの契約を破棄したい、とか、言う気じゃねぇだろうな?」


「まさか。私はこれでも君のことは高く評価しているつもりだ。私は無能は嫌いだが、才能のある人間に対しては一定の敬意を払う。君を裏切ることなど、一度も考えたことはないさ」


「だったらこんな夜中にオレを呼びだして何のつもりだ? てめぇら花ノ宮家の後継者候補は、闇討ちを嫌って、夜中に一人で外は出歩かないんじゃねぇのか?」


「無論、警護の者は現在も見えない位置に配置しているよ。フフッ、むしろ、私を狙ってくるのなら是非もないことではあるのだがね。その証拠を持って、後継者候補を一人、その座から引きずり降ろせるのなら……こちらとしては嬉しいことこの上ない」


「相変わらずの自信過剰野郎だな、てめぇは」


 そう言ってオレは樹の隣に座り、胸ポケットから煙草を取り出し、口に咥える。


 そして、ライターを取り出そうとズボンのポケットを漁っていると……隣から、樹がジッポライターを取り出し、オレの煙草に火を点けてくれた。


「てめぇ、ライターなんか持ってたのかよ。大学生のクソガキのくせに煙草なんて吸うのか?」


「いや、私は吸わない。ただ、社交界で財界の重鎮たちが煙草を吸う際には、ライターは常備していた方が何かと都合が良いのでね。印象を良くするために、持っているだけさ」


「はっ、大富豪の御曹司といえども、やってることは普通の会社員と何ら変わりはねぇんだな。上司のご機嫌取りは、どこの世界でも共通、ということか」


「恭一郎、君はそのようなことはしなさそうだね。どんな大御所の役者相手にも、下手には行かず、むしろ噛みついていきそうだ」


「オレを何だと思っていやがるんだ、てめぇは。目上の者には敬意を払う、それくらいの常識は持っているぞ。そんな、どんな大御所相手でも噛みつくようなイカれた役者は……オレの知っている限り、うちのバカ息子くらいしか知らねぇな」


「………柳沢楓馬、か」


 そう言って樹は疲れたようにため息を吐くと、チラリと、こちらに視線を向けてくる。


「本題に移るが……君にはこの件を話すかどうかを、私は一か月間、悩みに悩み抜いた。だが……協力者として、私は、君に話すことを決めた。ある人間が、予期しない行動を取り始めたのでね」


「ようやく本題か。で、何の話だ? 前にも言ったが、花ノ宮香恋を懐柔する件は無理だぜ? あの女は、オレに対して、ものすごい警戒を――――」


「……柳沢楓馬が、法十郎によって、花ノ宮家の後継者候補に任命された」


「…………………………は?」


 その言葉に、思わず、口に咥えていた煙草をポロリと落としてしまう。


 オレは慌てて煙草を咥え直すと、樹の顔を見つめて、そのまま開口した。


「い、いったい、どういうことなんだ……? 楓馬が、花ノ宮家の後継者候補、に……?」


「私にも、法十郎のその行動の意図は、よくは分かっていない。ただ……祖父はこう言っていたよ。柳沢恭一郎が花ノ宮家に与えた損害、四億六千万を、息子である柳沢楓馬が稼げ。そうすれば、お前を後継者の座に据えてやる、と」


 オレはその言葉に、思わず、ベンチの上に拳を叩き落としてしまった。


「あの妖怪のクソジジイが!!!! その借金は全部オレが抱えていたもんだろうが!!!! ふざけたことを言いやがって!!!!!」


「………そうだな。恭一郎、君が怒るのはもっとものことだ。だが、落ち着きたまえ。あの老人は、元より、金の亡者、極悪という言葉を体現したような人間だ。君の裏の事情を知らない楓馬くんを利用するのも、可能性としてはあり得る話だろう」


「チッ!! 本当にふざけたジジイだ!! よくあんな妖怪から、由紀のような優しい人間が産まれたものだな!! 信じられねぇぜ!!」


「君は、妻である由紀叔母さんが亡くなった後、花ノ宮家から非合法な手段で無理やり借金を背負わされた。そして、担保として、子供を奪われた。その借金の額は、総額七億六千万。完済できれば、子供は返ってくる。だが、完済できなかった、その時は……」


「楓馬と瑠理花は、花ノ宮の人間として、他家に嫁ぐことになる。そのことは、あの男から口酸っぱく言われてきたことだ。……既に、三億は返したってのに、その残りをただの高校生である楓馬に背負わせるとは、な……。分かってはいたが、つくづく、腐った男だぜ、花ノ宮法十郎という男は……!!」


「……今、花ノ宮家はとても混乱しているよ。忌子である楓馬くんを、後継者の座に据えるのはどういうことなのか、とね」


「そりゃ、そうだろうな。……で? 楓馬を管理していた花ノ宮愛莉、ひいては、花ノ宮香恋の様子はどんな感じだ?」


「あまり変化はない。ただ、楓馬くんとは内部分裂……とまではいかないが、どうやら疎遠になりつつあるようだね。香恋も愛莉叔母さんも、ここ最近、楓馬くんとはあまり会ってはいない様子だ」


「そうか。オレとしちゃ、楓馬には普通の高校生として生きて欲しいから……香恋と関わっていないなら、好都合な話だな」


 そう言って大きくため息を吐いた後、オレは俯き、自分の足元を見つめる。


「あいつは……楓馬は、由紀の死で、もう、役者として舞台には立てなくなってしまった。役者の世界は、才能を無くした者にとっては残酷すぎる世界だ。もう一度這い上がることは、地獄の道を歩むようなもの。オレは……父親として、楓馬にはもう、傷付くような道は歩んで欲しくはない」


「……」


「こんなダメ親父が今更父親面するなと、楓馬にはそう言われそうだが……由紀の遺した子供であるあいつらには、何が何でも幸せになってほしい。それが、オレの……唯一の願い、だ……」


 ポタポタと、涙の雫が頬を伝って、地面へと落ちていく。


 由紀が今のオレを見たら……男のくせに情けないと、一喝してきそうだな。


 どうして、オレは今、楓馬と瑠璃花の傍にいれないのだろうか。


 どうして、成長していく我が子を、傍で見つめることができないのだろうか。


 どうして、過去のオレは、楓馬に役者の才能があるからといって……あんなに厳しい態度で、あいつと接してしまっていたのだろうか。


 もっと……もっと、楓馬と瑠理花に優しくしておけば良かった。

 

 もっと、二人の頭を撫でておけば、良かった……。


 妻が亡くなってから塵のように積もった後悔が、オレの心をどんどん重くしていく。


「………恭一郎。前にも言ったが、私が当主になれさえすれば、全てが片付くことだ」


 そう言って、樹は席を立ち、オレの前で仁王立ちをする。


 そして彼は、不敵に笑ってみせた。


「私は、何が何でも、当主の座に付かなければならない。私には、私が目指すべき、覇道がある」


「………」


「正直、私は、ホッとしているのだよ。香恋と楓馬くんが疎遠になってくれてね」


「ホッとした……?」


「あぁ。私は、常に様々なケースを想定して、行動を起こしているのだが……君の息子と我が妹君が手を組んだ未来を想像した時。とても、嫌な予感がした」


「珍しく随分と抽象的なことを言いやがるな。現実主義のお前らしくも無い」


「そうだな。だが、柳沢楓馬が……どこか、普通じゃない雰囲気を持った少年であるのは事実だ。恭一郎も、そこは理解しているのではないのかね?」


「……」


「あの少年は、敵に回すのは危うい。私は、彼と相対した時にそう、直感した」


 そう言って樹は目を伏せ、フッと笑みを浮かべると、頭を振る。


 そして、話は終わったのか、そのまま踵を返した。


 だが――――。


「あぁ、そうだった。これも言っておかねばならないな。君の教え子……如月楓と言った少女が、花ノ宮女学院には在籍しているのだろう?」


「如月? あぁ、確かにいるが……どうしたんだ?」


「花ノ宮家当主、三代目後継者候補の花ノ宮有栖に、その生徒、狙われているぞ。私としては、香恋の手駒などどうなっても良いのだが……一応、君が気に掛けていた生徒だからな。報告はしておこう」


「如月が……花ノ宮家の後継者候補、に……狙われている……?」


 そう疑問の声を上げるが、樹は何も返さずに、そのまま公園から去って行ってしまった。


穂乃果ルート第二話を読んでくださって、ありがとうございました!

みなさまが読んでくださるおかげで、何とかここまで続けられています!

本当に、ありがとうございます!


続きは、明日投稿する予定です!

また読んでくださると嬉しいです! 三日月猫でした! では、また!


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