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元天才子役の男子高校生、女装をして、女優科高校に入学する。  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!
第2章 花ノ宮家の悪鬼たち

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第87話 女装男、メイドに睨まれる。

 深夜三時過ぎ。晩餐会から帰ったオレは、ずっと、ある作業に追われていた。


「――――――ふぅ。ざっとこんなものか」


 目の前にあるのは、コードに巻かれた電子機器の数々。


 これらは、電源タップや換気扇の内側、エアコンの上部、天井の電灯などに隠されてあった、盗聴器と監視カメラの数々だ。


 晩餐会であの爺さんが言っていたように……祖父、法十郎が、オレとルリカを監視するために仕掛けていたものに間違いない。


 本当、自分の孫に盗聴器と監視カメラ仕掛けるとか……頭がイカれているとしか思いようがないな。


 まぁ、これが、花ノ宮家の人間のやり方なのだろう。


 今回は学ばせてもらったと、好意的に受け止めておくとするか。


「……リビングと玄関に仕掛けてあったものは全て取り終えました。どうやら、お風呂、トイレ、ルリカさんのお部屋には仕掛けられてはいなかったみたいです」


 そう言って、オレの部屋に、メイド服を着た仏頂面の少女が現れる。


 彼女は、香恋のメイドである、秋葉玲奈だ。


 玲奈は、香恋の指示で、夜遅くまでオレの家にある監視カメラ除去を手伝ってくれていた。


 ……とても不機嫌そうで、嫌々、という感じではあったが。


「お手伝いいただき、ありがとうございます、玲奈さん。ということは……オレの部屋と、玄関、リビングだけに、祖父は監視の目を光らせていたんですね」


「そうなりますね」


「………まさか、殆ど会話したこともない祖父が、オレの家に監視の目を向けていただなんて……考えもしませんでしたよ」


「花ノ宮家の方々は、血縁者であろうとも……いえ、血縁者だからこそ、お互いを自身の下に付けようと、策謀を巡らせ、敵対視する傾向が強いです。柳沢楓馬。貴方も、後継者候補となった以上、これから先は常に身の回りには気を付けた方が良いでしょう」


「そう、ですね。肝に銘じておきます」


「………では、私は、これで」


「あっ、はい、お手伝いいただき、ありがとうございました」


 玲奈は部屋から出ようと、踵を返す。


 だが……彼女はもう一度こちらを振り向き、オレを睨みつけると、静かに口を開いた。


「貴方は、香恋お嬢様を、どう思われていますか?」


「え?」


「敵? 味方? 友人? 利害関係の一致する協力者? それとも……想い人?」


「急に何を言い出すんですか、貴方は……」


「この先のことを考えると、ここは、はっきりさせておいた方が良いと思いまして。……もし、貴方が、当主を目指し、お嬢様の道を阻むようなら……私は、貴方を処罰する策も考えなければなりませんので」


「それはないよ。むしろオレは、香恋に当主になって欲しいと考えている。というか、ただの高校生が、五億なんて金、稼げるわけがない」


「………ただの高校生、です、か。本当に腹が立つ男ですね。柳沢楓馬が、ただの高校生であるわけがないでしょう」


「え?」


「貴方は、お嬢様の世界を変えた人。そして、あの財界の魔王たる花ノ宮法十郎に恐れを抱かせた人」


「香恋の世界をオレが変えた…? 法十郎に恐れを抱かせた…? いや、あの爺さんにビビってるのは、間違いなくオレの方だと思うんだが?」


「あの極悪人の老人が、何の力も無い子供に、監視の目を向けると思いますか? それも、ルリカさんではなく、貴方の部屋にだけ重点的に監視カメラを仕掛けている……決定的でしょう?」


「それは……オレが単に、役者としての利用価値があったからだけの話だろう……」


「その程度のことで、貴方が稼ぐはした金程度のことで、あの男はここまでしませんよ。そもそも……今日の晩餐会で、法十郎の目を真っ向から見つめることができていたのは、貴方だけです。あの眼光を前にしては、誰もが顔を俯かせ、黙り込んでしまうものなのに……貴方は目を逸らさなかった。私は、今日の貴方を見て、当主候補の中で柳沢楓馬が誰よりも危険な存在だと、そう認識しました」


 そう口にして、玲奈は、懐から―――――一本のナイフを取り出した。


 そして、それをオレの眼前に付きつけると、不機嫌そうな顔をしたまま、再度、開口する。


「……ほら、ナイフを突きつけられているというのに、貴方は微動だにしない。まるで、私など、恐れてなどいない」


「どうしようもないから諦めている、そうは受け取れないのか?」


「………本当に腹の立つ男です、貴方は。私が殺したいほど憎んでいる、法十郎と同じ目をしているだけじゃなくて……お嬢様の心まで貴方は奪っている。私は、それが絶対に許せない……!!」


「………あんたの事情はよく分からないが……オレは、あんたの敵ではないことは確実だ。香恋に害を成す気はないし、今のところ、法十郎とも敵対している。後継者候補に任命されたが、オレは未だに香恋派閥の人間だと認識もらって構わない」


 そう口にすると、玲奈はチッと舌打ちをして、ナイフを懐に仕舞った。


 そして、踵を返すと……肩越しにこちらに鋭い眼光を向けてくる。


「貴方がもし、香恋様を選ぶことが、あったのなら……その時は、覚悟をすることです。彼女の運命は、貴方が想像しているよりも、重いものですから」


 そう言って、玲奈は、オレの部屋から出て――――マンションの外へと出て行った。


 自室で一人になったオレは、ふぅと、大きくため息を溢す。


「本当、随分と厄介なことになったものだな」


 そう呟き、オレはベッドの上に背中から倒れて行った。


 天井にある蛍光灯の光を見つめた後、オレは、壁に掛けられている制服へと視線を向ける。


 それは、如月楓がいつも着ている……花ノ宮女学院の制服。


 この先、オレは、どうしていけば良いのだろうな。


 香恋の言う通り、花ノ宮女学院で大人しく、如月楓として女優活動を行って行けば良いのか。


 それとも、香恋の言葉に背き、花ノ宮家に深く足を踏み込んで……彼女を全面的にバックアップすれば良いのか。


 ……法十郎が亡くなる時を待って、ルリカと海外に逃亡するという道もあるか。


 いや……これは、何も手が無くなった時の最終手段だな。あの妖怪ジジイが、100歳まで生きるという可能性もある。


 そうなったら、手遅れだ。オレとルリカは見ず知らずの人間と婚約を結ばれ、一生をカゴの中で生きることを強いられてしまう。


 現状、香恋を当主にする以外に、オレに残された道は……ない、な。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌日、オレは一睡もしないまま、如月楓に変装し、花ノ宮女学院へと向かっていた。


 午前七時過ぎ。


 仙台駅、改札口前にあるステンドグラス前でいつものように友人たちを待っていると―――穂乃果と陽菜、花子が姿を現した。


「お姉さま、おはようございますですっ!」


「……おはようございます、穂乃果さん」


「はいっ! 今日もお姉さまのお美しいお顔を拝見できて、穂乃果、とっても幸せですよぉう!! ………って、あれ? お姉さま? どうか……なさいましたか? 何だか、元気がないように思われますが……」


 いつもの如月楓として元気よく振る舞っていたつもりだったのだが……元気がないことを、一発で穂乃果に看破されてしまった。


 これじゃあ、花ノ宮女学院の看板役者になんてなれないな。


 オレは首を横に振り、努めて平静を装い、穂乃果に対して笑みを向ける。


「何でもございませんよ。さぁ、学校へ行きましょう、穂乃果さん」


 そう言って、歩き出そうとしたオレの手を、穂乃果はギュッと強く握って、止めてくる。


 そんな彼女らしからぬ強引な行動に驚きつつ、肩越しに背後へと視線を向けると―――穂乃果はどこか怒ったように、可愛らしく頬をプクッと膨らませていた。


「お姉さまっ! 穂乃果は今、とっても怒っていますです!!」


「え? 怒って、る……?」


「はいですっ! 穂乃果は、お姉さまと出逢ってから今までずっと、貴方様を見てきました。ですから、以前、お姉さまが私の家に来た時に、打ち明けてくれようとしてくれた……私には言えない、何か大きな秘密を抱えていることも知っています」


「穂乃果さん……?」


「その秘密のことは良いんです。お姉さまにとってそれは、とっても大事なことだって、分かっていますから。………でもっ!」


 穂乃果は強く、オレの目を見つめてくる。


 こんな力強い目ができる子なのかと……オレはこの時初めて、穂乃果という少女の強さを知った。


「でも! 辛いときは虚勢を張らずに、穂乃果の前でくらい弱みをみせてくださいよっ!! 以前、私の家で、見せてくださった時のように……!! また私を、頼ってくださいよぉう!! お姉さま!!」


 彼女は………とても、暖かい人なんだな。


 弱った時に限って、穂乃果はいつも、このオレを支えてくれる。


 本当にこの子は……オレのような人間には、眩しくて仕方がない、純粋で優しい子だ。


「そうだよー、楓っち。アタシ、楓っちのマブダチだって思ってるんだからさ。アタシにもたまには完璧美少女の弱いところ、見せてくれよ~!」


「陽菜さん……」


「まぁ、そうですね。お前は少し、一人で抱えすぎなのかもしれません。この真祖の吸血鬼、フランチェスカさんに助力を頼むのもまた手ではありますよ。………バレーで助けられた借りも、ありますし、ね」


「花子さん……」


 花ノ宮女学院で出会った友人たちが、オレを支えてくれる。


 ―――――――夏の風が到来しつつある、六月中旬。


 オレは……この学校で出会った友人たちの温かさに、感動してしまっていた。


「……じゃあ、今日は、穂乃果のおうちで、四人でお泊り会しましょう~~!! パジャマパーティーの、女子会ですぅ!!」


「あっ、それいいね? 夏も近いし、怪談とかしちゃう? 肝試し的な?」


「ま……待ってください。お、お泊りは流石に……問題のある行為かと、フランチェスカさんはそう思います」


「え? 何でよ、花子? てか、頬を赤らめて、楓っちの顔をチラチラと見ちゃって……どうしちゃったの?」


「な、何でもありません!! あ、青き瞳の者も、何か言ってください!! お泊りは不味いと!! 貴方のバハムートが暴走してしまうと!!」


「暴走はしませんよ!? そんな見境なくはありませんよ!?」


「バハムート……? ねぇ、最近、度々出てくる花子のそのバハムートって何なの?」


「な、何でもありませんよ? 何でも!! ……そ、そうですね。みなさんと遊びたいのは山々ですが……泊まりは流石に不味いですね……ごめんなさい」


 その後、何とか花子と共に穂乃果と陽菜を説き伏せて……お泊り会は無しとなった。


 少し、この三人となら夜通し語り合ってみたいなという気持ちはあったのだが……それは流石に性別を偽っている現状ではただの変質者になりかねないので、遠慮させてもらうことにした。


 いや……もう女子高に女装して通ってる時点で、ただの変質者ではあるか……はははは………。

第87話を読んでくださって、ありがとうございました!

すいません、次回から、穂乃果ルートを書いていこうと思います!

ここまでが共通ルートで、あとは、他のヒロインのルートに分岐する感じです!


次回は、明日投稿する予定です。

よろしかったら、モチベーション維持のために、評価、ブクマ、いいね、よろしくお願いいたします!


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