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計画③

 クェードが宿に戻り、アムを迎えに出かける数時間前。つまりは、襲撃者の輪郭を掴もうと誘い出しに出かけた直後。

 宿に残されたアムと、アリシアは互いに話す話題がないことを悟りながら、宿一階の食堂で向かい合って座り少し早めの夕食をとっていた。

 そもそも、半ば強引にクェードの弟子になったアムとかなり強引にクェードと婚約した(してない)アリシア、ただクェードに同行してるだけでそれ以外の関係はない。旅は長くなるはずだし(クェードの本心はともかく)、ある程度の友好関係は築くべきだろう。

「その、アリシアさんは師匠のどこが気に入ったのです?」

 おそるおそる、アリシアに質問を投げかけるアム。二人の共通の話題となれば、それは当然クェードのことになる。彼女が本心からクェードについて回ってるのかわからないが。むしろここで確認しておけば彼女への対応も変わってくる。師がおそらく、と前置きをした"家出の延長"であれば彼女の言動を真面目に受け取らなくていいし、むしろ修行の邪魔者として扱い、あわよくば旅の同行を諦めさせる、という流れになるかもしれない。

「………」

 言われ、長く考え込みだす彼女見て、やはり師の考え通りだったのかな。とアムが思い始めた矢先、アリシアが口を開く。

「少々、言語化が難しいのですが…」

 その後、アムは自分が質問したことを後悔することになったのであった。


「まず、馴れ初めですわね。そう、あれは私が悪漢に襲われ命と貞操の危機だったところにクェード様が颯爽と現れ、一瞬で悪を薙ぎ倒し私に向かって笑みを浮かべて無事を確認し、名も告げず去ろうとしたのを、私が引き止め、お礼がしたいと申し上げたのです。クェード様はそれを快諾し同行を許可して頂きました。当然お礼は色々考えていましたがこれは私を差し上げるのが一番という結論になり結納を済ませて今日に至ります」

 はて。アリシアが襲われクェードが倒したのは魔物とだけは聞き、記憶していたし、聞いた対応は師の性格からあり得ない。当然の様に結納もその返礼もないだろう。どちらが結納をしたのか考えるのも無駄だ。内容の雲行きの怪しさを感じながら、特に言葉を挟む余裕もなくアリシアが話を続ける。

「クェード様は確かに悪人顔と言われても仕方ない風貌をしてますわ。ただそれは目つきの悪さからくるもので顔立ちは整っていますし、不意に笑うととても優しい目をしてくださりますの。それを私に向けられた時の衝撃ときたら、こう、体が電撃に晒され私の私がおかしくなりそうでした」

 既におかしいでしょ貴女。という揶揄はせず。聞きに徹するアム。ああ、そうだ。彼女は。

「そしてこれがクェード様に渡された婚約指輪で、こちらは両名サイン付き結婚届。後はお父様の許可ぐらいですわね!ああ結婚式が楽しみですわ!当然海岸の見える教会で…」

 あの領主の娘だったな。と、散々アリシアの素晴らしさを大半聞き流してたアムに構わず垂れ流した彼女の父親を思い出すのであった。彼女のその内容は妄想の比率が高そうだったが。


 *


 アムが、クェード様とやらの(自分の師ではあるが)かっこいいところ百選から逃れ、自分がどこまで彼女の妄想に付き合ったのか思い出せないまま、小遣いを握らせられ、なるだけ遠くの店で時間を潰してこいと命じられて疲弊から素直に了承してしまったことに気づくのは、少々いかがわしい店の並ぶ、人通りの多い…色街の通りでのことだった。

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