計画②
王都は夜も活気があった。祭りも近く、準備期間においても既に出店が並んでいる。酒税免除の関係からそういった店が多いが、同行者が未成年なので選択肢には入らない。その同行者…ドレス姿に若干地面から浮いたままついてくる少女が好奇心から食べてみたい、というものを優先しながら、アムを迎えに行く。
見た目麗しいドレス姿の、空飛ぶ少女アリシアにに視線が集まる。つくづく目立つな、と心の中でぼやく。それを連れている男がどう見てもチンピラなのもあるだろうが。
「時間稼ぎに目的地誤魔化してないだろうなあ…」
そんなことをぼやいたりもするが、アリシアは首を横に振り。
「夜が明けるまで、お泊まり♥を挟んでも十分追いつけない距離まで離れるように申しつけましたしその点はご安心くださいませ」
なにが安心になるのか。半目になってアリシアを見つめる。ぽっという擬音が聞こえるように顔を赤面して首を振り始めた彼女から視線をそらし、やはりため息を吐く。
「本当、なんでこうなったんだか」
きっかけは、まぁ、魔物から助けたときなんだろうが。
客観的に見てもクェードの顔面は美形とはほど遠い。悪人顔と自覚している。目つきは悪いし老け顔だ。さらに言えば自分でも理由が分からない総白髪。先端だけ黒く染まってるのは白髪染めが手に入らなかったからだし、格好も旅に適した丈夫な革製でおしゃれとは言い難い。得物も装飾のない無骨な両刃剣。こだわりというと難所踏破を目的とした上質な靴ぐらいだ。宿に置いてきた荷物袋以外で自分の持っている衣服関連で一番金がかかっているかも知れない。かかととつま先の部分に金属が仕込んであってただ蹴るぐらいでも相手の骨を折ることが出来る。これは先の竜牙兵相手にも有効だった。再生されたが。
「一目惚れですし。知るほど好きになっていきましたし」
アリシアはそう言うも。クェードは突き放しはしたが、好意を重ねられる対応をした覚えがない。
(ま、どうせあの父親から離れる口実なんだろうが)
娘を溺愛し、拘束し、領民より娘を優先する領主の父。その冷や水として利用されたんだろうな、と一人納得する。ともすれば、適当に時間を過ごせばそのうち目的は達せられ、あっさりと別れることになるだろう。利用される身であるクェードはいい迷惑だが。
こちらにその気が無いのを利用し、言い寄っている風を装っているが。これで俺が"悪い男"だったらどうしてたのかね。と考える。いいご身分の令嬢相手に手を出さない、ということに高をくくっているのだろう。舐められている、とも考えられるがこれで嫌われあること無いこと吹聴されてはまた騎士と、父親による襲撃の恐れもある。面倒くさい。
「なんなら本当に休むか?」
と指さしたのは、主に"そういう目的"で使われる宿の、案内板。街の風俗を乱さないよう目立たないよう、されど商売上の主張をしたいと、路地裏を指して立てられている。
こういう手段を取れるのは、俺が無害だからだぞ、他のヤツにはやるんじゃねえぞ、という意味でからかい半分に言ってみたのだが。
「まあ!まあまあ!是非!是非!その気になってくださったのですねっ!!!」
「冗談だっ!本気にすんな!!」
悪手だった。咄嗟に嬉し涙で訴えてくるアリシアを小突いて気分を下げさせる。
ここまで乗り気なのはなんでだろうな、と発言を撤回しアムの元へ向かい、歩く。とても残念そうな表情のアリシアを背後に若干歩を早めながら。




