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計画

 協会支部長を名乗る男との食事を済ませ、クェードは再び襲撃を誘い込む行動を取ろうとするが、彼に止められる。

 “倒しにくい相手“に対する手段が街の破壊を伴う術か、昏倒のリスクのある術の二択であるクェードにその行動を取られるのは良くないと考えたサウマが告げる。術士協会に一振り、精神生命を斬ることができる剣があるのでそれを貸し出すとのこと。ただし手続き諸々が必要で、渡せるのは明日以降になる、宿泊の警備は一層強固にするので今日のところは寝て休めとも。

 相手が魔族であると推測される中、安心できる警備があるのだろうか。相手は姿を隠すのではなく、世界の裏側から沸いて出てくる類の怪魔だ。

 魔族。地獄とも比喩される、魔界に住まう種族。人間や通常の生命が根ざす世界の裏側、精神世界に重きをおくもの。

 あらゆる生命は物理と精神に分かれ、魂でそれを繋ぎ止める。人間や動物の体はそのほとんどを物理に頼り、精神はその物理の形をなぞる様に存在するが、魔族はその逆で、精神の体から投影される様に肉体が存在するのである。故に、時として物理で生きる人間たちには想像もできない様な技や、術を使い、また生物の精神を歪ませる。それはまさに、太古から伝えきく悪魔そのものだ。

 その襲撃を完全に防ぐことができるのか。それを疑問に投げかけるが、サウマは安心したまえ、とだけ返してくる。全世界に活動を広げる術士協会には、そういった術も持ち合わせているのだろうか。信頼はしないが、ここまで言われて正当防衛としても街を破壊したら罪も重くなるか。クェードは諦め帰路につく。

 彼を悩ませる悩みのもう一つ。自分を妻だと言い張って聞かない少女の対処を思案しながら。


 *


予想すべきだったか。浅慮だ。クェードも、アムも。

“大人しく待っていた方の部屋に泊まる“という条件に、自分の部屋に泊めたいアリシアはともかく、部屋を独占したいアムは“大人しく待つ理由がない“。観光がてら、近くの店を巡りに行って帰ってきていないとのことだった。もっともそれを話すアリシアが大人しく待つなとそそのかしたかもの知れないが。

 一応の師の言いつけを守らず、襲撃のあった次の日に警戒もせず外出する弟子に少々頭を痛める。自分ではなく師が狙われてるのだからと自由行動するのは敬意に欠ける分肝が据わっているのか。

 だが、日が落ちても戻ってこない弟子を探す必要はあるだろう。3度の襲撃から自分が狙われていることは確かだがその同行者が人質として狙われないとも限らない。

 アムを探しに行くと告げたアリシアは自分も捜索のついでに観光に行きたいと言い出してくる。夜の街に興味があるのだろう、領主令嬢は身支度を整えついてくる。

 拒否したいところだが、彼女一人置き去りにするよりは安全かも知れない。ここが安全だというサウマの話を完全には信用できないのもあったが。今回は人通りの多いところを通るとはいえもし襲撃があった際、アリシアの法術は対抗手段としては頼れるし、禁呪を使うことになった際のフォローも任せられるかも知れない。そうならないことを願うばかりだが…

 ところで。外出準備を済ませたアリシアは服をより一層可愛く演出したドレスに化粧をし、髪を整えて、浮かれた気分でクェードと腕を組もうと寄ってきたり、手を握ろうと狙ってくるのを避ける羽目になっているのはなんでだろうな、とため息をつく。

「デート!デート!アムに小遣い握らせて遠出するよう申しつけたかいがありましたわー」

 おい。

 自らの計画を包み隠さず明かす彼女に呆れながらも、それでも帰りの遅い弟子を迎えにいかなければならないか、と自分を納得させる。あとの問題はこの少女がそのデートとやらを長引かせようとせず、アムの行き先を素直に話してくれるかだった。

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