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エッグキーパーズ Egg keepers 〜秋山ダイチの宇宙戦争〜  作者: GOM
第一章 小学生編その1:シリウス攻防戦

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第七話 うちゅうのえんそく

 ダイチが、幼年学校に入って約1年、だいぶ人型兵器の操縦になれたころの5年生の春、修学旅行、いや宇宙での機動訓練が行われることになった。

訓練場所は、主に木星軌道上、木星-太陽間のラグランジュ点L4トロヤ小惑星群ギリシャ側にある宇宙ステーション。

なぜ木星の本星近郊で無いかというと、いくら遮蔽できるとは言え木星の強力な放射線下に小学生を行かせるのは健康上よろしくないからである。

幼年学校には、ダイチ達が通う小学部以外にも中学部が存在する、ただ幼年学校が設立されたのは、ここ1年なので訓練内容は小学部と中学部ではそう大変わりはしないのだが。

まずは、先に中学部の訓練が二週間程行われたあと、ダイチの学年の番となった。どのような訓練が行われるのか、すでに中学部が行っているので噂は聞こえてくる訳で、ダイチのクラスではその話題でもちきり、授業に差し障りが出るほどであった。

 そういう状況では、まじめな委員長のマイの機嫌がいいはずは無い。

授業中、浮かれて話し込む学友に対して怒る、人型機動兵器を使用している教練中でも秘話モード会話をしている人たちを見つけては怒る。

小隊だけでの訓練時でも「ぷんぷんモード」なので、ミスが多いダイチやシンゴは怒られてばっかり。特に問題が無いカズアキも巻き込まれるのだから、たまったもんじゃない。

「どーして、みんな浮かれて勝手ばかりするのよ! このままじゃ、絶対宇宙で事故するのに。そうなってからじゃ遅いのよ!」

マイはお怒りモードまっさかりなので落ち着かせるために、小隊の男子3人でコンビニアイスをおごって、近所の公園のベンチで冷却中なのである。

帰宅中の買い食いがあまりよろしくないのはしょうがないけど、そのことについては、おごってもらったマイは文句ひとつ言わない。

マイ「第一、宇宙に行くのがそんなにめずらしいものなの?」

ダイチ「あのね、いいんちょ、普通の人は宇宙には旅行でもなかなかいけないんだよ。ボクなんて小さい頃身体が弱かったから宇宙はおろか、この学校に来るまで生まれ故郷を離れたことなかったし。」

シンゴ「オレの周りでも宇宙旅行は、新婚旅行で月観光ってのを聞いたくらいだぞ。」

カズアキ「姫の場合は、宇宙勤務のお父上に会いに行くという事情があるし、ご家庭は裕福。一般家庭の子息が多いクラスの皆が、姫と同じように宇宙旅行できるとはならないだろ。」

マイ「そーなのは、分かるけど、でも皆浮かれすぎ。機体の装甲の向こうは真空で放射線いっぱいの死の世界。昔の諺にあった「板子一枚下は地獄」だっけ?

ちょっと間違えるだけで簡単に死んじゃうのよ。そういう目にワタシがあうのも、目の前でクラスの子達がそうなるのもワタシは嫌なの!」

ダイチ「いいんちょの言いたいことはわかるよ。でも、皆せっかくの旅行を楽しみたいんだよ。だって、いつまで楽しく「子供」でいられるか分からないんだもの、ボクたち。」つい、しんみりしてしまうダイチであった。

戦況が良くないのは、ニュースや漏れ聞こえてくる情報から理解している。

いつまで遊ばせてくれるのか、実戦投入されれば、殺し合いの始まり。敵を殺すこともあるし、逆に自らの死はいつ訪れるか分からない。少なくとももう「子供」じゃいられなくなる。それを皆薄々分かっており、はしゃぐのは不安の裏返しでもあったりするのだ。

マイ、苦笑いしながら「はいはい、分かりました。皆が楽しめるよう、そして安全にできるようにワタシががんばればいいのね。」

ダイチ「うん、ボクも精一杯協力するから。二人とも手伝ってくれるよね。」

シンゴ「しょうがないな、ひとつ貸しだぞ、お嬢。」

カズアキ「御意。姫の仰せのままに。」

三人三様の答えについ噴出してしまうマイ。

「これ、ドロ舟に3人の船頭で、船がどこ行くか分からないやつじゃない?」

おかしくて笑いあう、神楽坂小隊の4人であった。

 小隊の皆で話し合った日から4日ほど過ぎた6月の中頃後、いよいよ旅行の日が来た。

朝まで緊張してあまり寝られなかったダイチ、集合したクラスメートを見回ってみると、数人眠そうにしている様子であった。

シンゴは朝から元気いっぱい「さあ、気合入れてがんばるぞー!」

カズアキは、旅行のしおりの再確認中。

マイは、先生と打ち合わせをしている。

今回の旅行はクラス全体での移動となるので、準備も多い。

今回は人型機動兵器は地球から打ち上げるのが大変なので、AIブロックのみを運び、宇宙に準備している機体に組み込んで使用する。

すでにAIユニット及び整備部隊は、宇宙へ打ち上げ済み。

これからダイチ達が宇宙に上がる番なのである。

宇宙へ向かうシャトル型宇宙船打ち上げ場へは、学校からバスで移動する。

皆緊張と期待で興奮状態の中、ただ一人乗り物酔いでバス最前席でぐったりなダイチ。

「おかしいなぁ、だいぶ乗り物には強くなったはずだし、酔い止め飲んだのに。」

横で介抱しているマイ「ダイチ、機動兵器に乗っているときはなんとも無くてあんなに無茶な機動しているのに、何でバス程度で酔っちゃうのよ。これじゃ宇宙行けないんじゃないの? そうなったらウチの小隊だけ欠員出ちゃう。頼むから気合で宇宙行きなさいよ!」

ダイチとしてもなんとかしたいのはヤマヤマ、根性入れないと思う脳裏に浮かぶのは、明け方にうとうとした際に見た夢。

ぼんやりと白い光の向こうから聞こえた声は、どこかで聞いたような覚えがある。

「これから最初の試練が待っています。なんとしても生き残ってください。あと、この言葉を忘れずに..***....」

あまりに唐突かつ意味深な内容なので、聞き返そうと思った瞬間、目覚まし時計が鳴り目を覚ましてしまった。

夢の声だから聞き返しても都合よく答えてくれるはずないのだけれども、聞き覚えがある声にダイチは気になる。「まさか、宇宙で事故にあうとか無いよね。」

つい、声に出してしまったのを聞きつけたマイ「何よ、今の話は。何か根拠あっての事なの? 根拠もなく思いつきで言うのはやめてよね、皆不安がるから。ワタシもイヤよ、変なフラグ立たせたくないもん。」

ダイチ「ごめんごめん、夕べあまり寝れなかった上に、明け方変な夢みちゃったから、つい。」

マイ「変な夢って?」ダイチはあらましを説明する。

マイ「目覚める前の夢だから、はっきり覚えているだけでしょ。大丈夫よ、先生方も守ってくれるし、まさか木星軌道まで帝国が攻めてくる訳無いでしょ。」

今回同行する先生方は、教頭、担任の「鬼軍曹」大谷教諭と副担任の「お姉さん先生」神津教諭の3人の他、整備部隊の方々。「お姉さん先生」は、二十台半ば過ぎでまだ未婚。大学生っぽい雰囲気を残しながらもしっかりと子供達の面倒をみている男女どちらからも「お姉さん」になって欲しい長髪の美人である。

ダイチ「ボクもそう思うんだけどね。そろそろ打ち上げ場に着くのかな。いいんちょ、ありがとうね。いいんちょと話している間にだいぶ気分も良くなったよ。」

マイ威張って「それならいいんだけど。宇宙では存分にしごいてあげるから、がんばるのよ。」

ダイチ苦笑いしながら「ぜひとも、お手柔らかに。」

バスが打ち上げ場駐車場につき、降りた皆は手荷物を持って防疫・待合室のある建物へ移動する。大荷物はバスの荷物置き場から積み出されて、防疫・危険物チェック後宇宙船へ積み込みが行われる。

待合室でクラス全員がそろったところで、先生方からの最終説明。

鬼軍曹「一応、前に説明したし、旅行のしおりにも書いてあるけれども、念のためにもう一度説明するぞ。これで聴いていないなんて言ったら、後で宇宙遊泳してもらうからな!」子供たちをちょっと脅す鬼軍曹である。

「これからシャトルに乗る前に、防疫・危険物所持検査が行われるんだ。

男女別の一列になって、そこの金属探知機のある入り口へ手荷物を持って入れ。歩いている間にチェックが終わるから、チェック完了しだい船内服に着替えるので、男女それぞれの着替え室に行くんだ。

船内服に着替えたら、ヘルメットのバイザーはまだ閉めなくていいから、打ち上げ準備室にもう一度集まれ。そろい次第、シャトルの席に移動するぞ。」

また緊張しだすダイチではあったが、後ろからシンゴが「大丈夫」って言ってくれたのは助かった。

船内服とは、本格的な宇宙服とパイロットスーツの間の服。

与圧をすることができ、緊急時でも短時間なら宇宙での生存が可能なものである。

みな、船内服に着替えて、シャトルへ搭乗、指定席へ座る。

シャトル型宇宙船は全長80m程度、ラムジェット・ロケット推進で水平状態で発進、途中から軌道上へと打ち上げるもので、最大Gは2程度。

客席の座席は横2人×4、縦15列。神楽坂小隊は真ん中くらいの列の窓側にマイ・ダイチ、中央にシンゴ・カズアキと座っている。

四点シートベルトをし、ヘルメットのバイザーを閉めて発進準備は出来た。

船内アナウンスで打ち上げの秒読みカウントダウンが進む中、不安そうなダイチの手を、横のマイが軽く握る。

え!とマイの方を見るダイチ。

「ダイチにはしっかりしてもらわないと困るんだからね。」遮光がほとんど無い船内服用ヘルメット越しのマイの顔は少し赤くなっているような気がした。

そして打ち上げが開始された。

轟音を上げて空に上がるシャトル、ぐんぐん加速度を上げて空、いや宇宙へと舞い上がるのだ。

ダイチに打ち上げのGが襲い掛かる、はずなのだが実際には大してかからない。

考えてみればこの機体もゲートエンジン搭載機。フォースフィールド内では慣性制御が行われるのだから、そんなにGがかかるはず無い。

頭の中で知っていても、実際に体験しないと分からない事は多い。

またひとつ大事なことを学んだダイチであった。

余裕が出てきたので、まだ手を結んでくれていたマイに「ありがとう、もう手を握ってくれなくてもだいじょうぶだよ。」とお礼を言う。

マイ、顔を更に真っ赤にしながら手を放し「ワタシの弟がいつも打ち上げ時に震えていたので、ついやってあげただけなの。ダイチはいつも頼りなくてワタシの弟みたいなものだから、同じことしてあげただけ。だから、ダイチ勘違いしないでよね。」

「はいはい、でも本当にありがとうね。」ダイチは、マイをツンデレじゃないかと思ったものの、ここでそれを本人に言うのは雰囲気台無しにするだけじゃすみそうも無いので、黙っていようと思ったのである。

 シャトルは大気圏上層を超え、広義の宇宙(高度100km)に飛び出した。

ここから先はゆるやかに加速して軌道をより上げていき、航宙艦が待機している高度1000kmまで上がる。なお、2000kmより上にあるヴァン・アレン帯は非常に放射線が強いため、ダイチ達みたいな放射線に影響を受けやすい若年層は、出来る限りシールドされた宇宙船で通る必要がある。

 シートベルトを外してもよいとのアナウンスと共に、俗に言う「無重力状態」なので注意する旨が放送される。

早速、シートベルトを外す子供達だが、いきおいあまって座席から飛び出し、頭を天井等にぶつける子達が続出したのは言うまでも無い。

「ヘルメット被っているから頭ぶつけても大丈夫だけど、「お約束」どおりにやるのは、まったく困っちゃう。」思わず額をおさえようとするもバイザーに邪魔されて出来ないマイもある意味「お約束」な訳で。

そんな皆を見て噴出しそうになるも、マイの視線を感じて、何かこの場をしのぐ方法が無いかと思っていたダイチの目にシャトルの窓からの風景が見えた。

そこには蒼く美しく輝く地球とそこから天に昇る「蜘蛛の糸」、建設途中の宇宙エレベーターが見えた。

「あれはどこから立ち上がっている宇宙エレベーターなんだろうね。」

マイはダイチの視線に気がついて窓の外を見て、

「大陸からだから、アフリカタワーでしょ。他のは、大抵洋上に建設中だから。」

「で、厳密には立ち上がっているのじゃないのは、知っているのよね、ダイチ」

「うん、地上と宇宙の間で重力と遠心力のバランスを取っているだけで、普通のビルとかとは違うんだよね。」

「そうそう、宇宙エレベータが出来れば、今みたいに打ち上げてもらわなくても宇宙にいけるようになるから、もっと宇宙旅行が身近になるわ。」

無事、話題変更できて一安心のダイチであった。

そのうち、見えてきたのが訓練用航宙母艦セーブル2(IX-11)、第二次大戦中の訓練空母セーブル(USS Sable,IX-81)より名前を継いだ艦である。

全長700m級で、基本的構造は通常の人型機動兵器搭載型航宙母艦と同様、過去の会戦参加時に中破した後、改装し練習生を受け入れる艦として名前を変え生まれ変わった。

下部ハッチの一部が開放され、相対速度を一致させたシャトルが内部に収納される。ハッチ閉鎖後、格納庫内部の照明が赤から白色に戻るとともに、格納庫内の気圧が一気圧となり、シャトルからの荷物積み下ろしが開始された。

ダイチ達もシャトルから降りて、エアーロック扉の向こうの宇宙服着替え室に男女別に移動する。なお、艦内は格納庫より上部は、人工重力にて普通に歩ける。

制服に着替え終わってから、全員重力ブロックにある会議室に案内される。

皆の前にいるのは、この艦の艦長、なんと女性大佐。

四十路くらいに見える、白人女性、会話は英語なのだが、各人装備の多機能端末の自動翻訳機能にて日本語変換される。

「皆さん、こんにちわ。(ここだけ日本語)(以下英語)初めての宇宙、いかがですか? 私はこれから貴方たちが乗る艦セーブル2の艦長をしています、Howardハワードです。宜しくお願いします。二週間の間になりますが、皆さんの安全を守りつつ、学習のお役に立てたらと思います。

宇宙は、危険と隣り合わせです。少しの油断が、悲しいことですが命にかかわります。先生や艦内の大人の話を良く聴いて、学習していってくださいね。」

「ハイ」元気に答える皆であった。

ダイチは、英語の聞き取りはなんとかレベルなので、翻訳機の助けで全容を把握、もちろんマイは翻訳機の助けなしで分かっている。カズアキもだいぶ英語が分かるよう。シンゴは....、まあ今後に期待か。

こうして、宇宙での修学旅行が始まった。


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