第四話 かみさまのじじょう
ここからは、一旦時代を巻き戻し、ダイチが転生する前、「世界」の外側、神様の世界から見て見よう。なお、神の世界たる11次元以上は人類には理解できないので、3次元に変換した形で描写する。
この「宇宙・世界」は10次元と時間たる1次元からなるカラビ・ヤウ多様体をなしており、外側の「神様」の目から見ると「卵」にみえているらしい。
この「世界卵」、実はひとつでは無く、神様が働く培養室内にいっぱい並んでいる。それぞれが平行世界ということである。
神様も実は一人、いや一柱ではなくて沢山いらっしゃって、それぞれ担当の「世界卵」をいくつか所有・管理している。
この物語の「世界卵」と少年が以前いた「世界卵」、同じ神様が担当。
この神様、神様基準では若い方でなんとなく頼りない感じに見受けられる。
そして、神様が困ったのは、その神様担当の「物語世界卵」が少々いびつにゆがんでしぼみ始めていたから。どうやら世界内であまりにゲートエンジンを多様した事で、「世界の外」側への穴が開きすぎてしまい、中身が少し漏れていた。
また、外部から「病原体」たる「邪神」も「穴」から進入しているらしく、このままでは「中身」が腐ってしまいかねない事に神様は気がついた。
そうなれば大変、担当「世界卵」を壊したり腐らせたら神様は、だいぶ面倒をかけている指導役の上役神様からこっぴどく怒られるし、ただでさえ頼りないと思われている同僚からは馬鹿にされてしまう。これにあせった神様は、打開策が無いか考えた。
神様の「手」では力が大きすぎて、力を直接振るえば「世界卵」は簡単に壊れる。また中の様子は、神様の「目」では小さすぎて見えにくい。我々が顕微鏡でミクロの世界を見るような感じなのだろう。または、シャーレ上の寒天培地に繁殖したコロニーを見る感じだろうか。
神様が直接手を出せないのならば、間接的に手を出すしかない。
ちょうど自分が管理する「世界卵」のうち問題の「卵」と、同時に「孵化」させた「卵」が並んで培養室においてある。
おそらく二つの「世界卵」の「中身」の進化は同じくらいで、本来であれば中身は殆ど同じ「平行世界卵」のはず。
健康な「卵」の「中身」の状態を、悪い「卵」へ一部神の力で完全に量子コピーして、かつ「抗生剤」的なものを投与してやれば良いのではないかと、神様は思った。
そして、まず健康な「世界卵」を良く観察していたところ、神様の「耳」に大きな「声」が聞こえてきた。それは、少年いや、その時点では幼子であるダイチの精神波であったのだ。神様は驚いた、今までもメシアだ、救世主だ、預言者だ、と神様に「声」が聞こえる者達はいたのだが、それらの「声」よりもダイチの「声」は幼いながらも美しく純粋であった。ただ、ダイチの「声」は徐々に弱まっており、神様が見るとダイチの命の炎は消えかかっていた。
これはもったいない、このまま失われるのはかわいそうだし、これだけ「力」があるのなら、世界を救う「抗生剤」としても十分だろう。
そこで、神様は、本来使ってはならない「奇跡」を使う。「物語世界卵」にいるダイチと同一存在に、このダイチを完全なる量子コピーして重ねる事を。
実は、これは後にダイチに施術される「生体強化」の完全版、つまりダイチは唯一二重に生体強化された存在になる。
二つの存在をひとつにまとめることで、ダイチの「力」をより強いものとすると同時に、世界への「存在力」が増すことでダイチの「命」の力や運命力も強くなり、おそらく命永ら得ることだろう。
後は、ダイチに一声かけつつ、少し確率をいじって方向性を与えれば良い。
「世界卵」の危機は、おそらく銀河帝国等に巣食う「邪神」が原因。
「邪神」退治をしてもらう尖兵「抑止力」となってもらえば良いと思った神様である。
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まあ、「駒」にされたダイチにとっては良い迷惑なのだが、命の恩人でもあるには違いない。それにダイチにとって神様の存在は、一度「声」を聞いただけで、その実全く意識されてはいない。
実際、よほど「世界卵」全体に危機が訪れない限り神様は直接関与する気はないし、うかつに関与出来ない、神様の動きが「邪神」にバレれば、「邪神」は戦う力がまだないダイチの命を直接狙いかねない。このまま、ダイチの成長を温かい目で見守るつもりの神様であった。
しかしこの後、相談も無く勝手に「奇跡」を使ったことが上役神様にバレて、神様はこっぴどく怒られたのはいうまでもない。「世界卵」を腐らしていたら、もっと酷かったらしいけど。
どこの「世界」でも同じだけど、上には隠さず正直に報告するのが一番である。
うむ。
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さて、次は「邪神」について述べてみよう。
「神」を名乗ってはいるが、その実「神様」から見れば「カビ」とか「バイキン」の類。「世界卵」に寄生して中身を腐らし、仲間を増殖させて、最後には「世界卵」を破裂(ビッククランチorビックリップ)させて、「外の世界」に飛び出し、次の「世界卵」への感染の機会を伺っている。
どこの「世界卵」にも大なり小なり「邪神」は寄生してはいるが、大抵は「世界の抑止力」によって退治されたり封印される。
「物語世界卵」に寄生する最大の「邪神」は、最初古代先史文明で初のゲートエンジンが稼動した際に、開いた「門」の中から現れた。
そして「邪神」は「門」の周囲にいた研究者達に声を届ける、「ワレハ、神ナリ」と。「邪神」は「神」の証拠として宇宙の「外」が垣間見える「門」を開くという「奇跡」を見せ、自分に従えば更なる知識と力を与えると誘い、その誘惑に負け洗脳された者たちから「邪神」のしもべが生まれた。
しもべ達は「邪神」により与えられた知識で、より高性能のゲートエンジンを作っていった。それは「邪神」の仲間を呼び込む更なる「門」であり、「邪神」の尖兵共が、この世界の抑止力と戦う力でもある。
そのうち、古代先史文明は、「邪神」を崇拝するものと、「邪神」の正体を知り戦うものに分かれた。このふたつの勢力の戦いは、文字通り銀河を二分する戦いであった。
お互いの主戦力はゲートエンジンを搭載した機体、悪魔を倒すには悪魔の力を借りなくてはならないのは、反邪神派としては仕方が無い。
まず通常の核融合エンジン機体ではゲートエンジン搭載機と勝負にならないのだ。一応、反邪神側のゲートエンジンには仕掛けをしていて、「門」を開きすぎないよう、また「邪神」のような精神体に対抗するべく、必ず有人機体としてDCが邪神に使われないようにした
ただ、不思議なことに「邪神」側はよりゲートエンジンの能力を引き出せる人型機体を使用しなかった。「邪神」の説明では「偶像崇拝をカミは禁止している。人型のものすべてを作るべからず。」と。これも前述のようにゲートエンジンを邪神側が使いやすいようにするためなのだろう。
邪神側の母星はやや銀河中央に近いサジタリウス腕、反邪神側はペルセウス腕に主力を持ち、長い間の戦いはこの二つの銀河腕及びその間のオリオン腕を主戦場とし、せっかく古代先史文明が植民星にてテラフォーミングや進化に介入して生まれだしていた多くの生命や知的存在を巻き込んで、その殆どが滅んでいった。
最後にはお互いの母星系の破壊まで進み、古代先史文明は各植民星に遺跡や宇宙船などを残し完全に滅んでしまった。
後に、サジタリウス腕にある知的生命が生き残った惑星で遺跡が発掘され、邪神の活動再開、そして銀河帝国が誕生したのだ。




