第二十七話 「しりうす」こうぼうせん2
ダイチ達がジャンプアウトしたのは、シリウスA・BのL4より公転軌道のやや外側、微細な小惑星が少しある地点、そこからL4の衛星へ急行する。
L4攻略部隊は、ダイチ達の母艦、強襲揚陸艦シャングリアと同じ第一航宙打撃群第三航宙団所属の空母1隻、艦隊防衛用の巡洋艦5隻、及び第五艦隊所属の戦艦1隻、巡洋艦4隻、駆逐艦8隻である。艦載機数は総勢70機。そのうちSHI-03シリーズは空母とダイチ達の44機である。
迎え撃つ帝国であるが、L4衛星駐在の艦は、無人艦が3、それの艦載機が総勢24、更に衛星自身の艦載機が12の合計、無人機が36機。数の上では地球側が優位であるが、性能差を考えれば互角程度。強襲時の先手でどこまで艦載機を撃墜できるかどうかが、地球側の勝利条件であろう。
地球側のジャンプアウトを確認した帝国側、無人艦及び艦載機群が急速展開して、ダイチ達の方へ目掛けてくる。
「Romeo23からRomeo11へ。こっちに向かってくる艦載機だけど、オレが一気に叩こうか?」
「オレの機体の特性上、ここでやっておかないと後で活躍しにくいし」
シンゴはトムに暗にバーストで「フルバースト」したいと言っている。
それを読み取ったトム、
「Romeo11からRomeo23、出来るんだな。ここで先手打てたら大分こっちが優位になる」
「良し、バースト許可する。ターゲット選定はRomeo21やRomeo34の指示に従え」
「Romeo23からRomeo11、了解」
「Romeo21、Romeo34。こっちのバーストと同時にマルチロック用のデータをお願い」
「Romeo21よりRomeo23、しっかり狙うのよ」
「Romeo34よりRomeo23、うん、がんばって」
一度深呼吸をしたシンゴ、気合を入れてコマンドを宣言する。
「システムコマンド:ゲートバースト!」
シンゴの宣言に呼応してシンゴの機体SHI-03-XEは激しく輝きだす。
それと同時にシンゴに多大な精神負荷が掛かるが、シンゴはそれを物ともせず、自らの射線から味方を避けるために単独で中隊の編隊からやや前進して、各部のハッチを開放、武装を全展開する。
マイやスェーミから送られてくる情報により優先撃破対象が自動的に選別、それぞれに応じた武器が選択されていく。
索敵・選定中に先に帝国艦載機からの砲撃がシンゴ機に届きだすが、強固なフォースフィールドとXE型の分厚い装甲と盾の前にはそよ風にしか感じない。
そして艦載機が全てシンゴ機の射程範囲に入った時に、シンゴ機の砲口から大量の「矢」が飛び出した。
「一斉射撃!!」
長距離の相手には、ハルバードからのLSPビームを長時間照射、なぎ払うように撃つ。
中距離の相手には、背中からの大量のマイクロミサイルがフィールドを纏ったまま突き刺さる。
身近に迫った敵には、58mm砲、LSPカービンからの大量の「雨」が降り注ぎ、止めとばかりに胸部LSP砲と盾フィールドカノンが吼える。
この一撃でシンゴは無人艦載機全36機中、15機を撃墜した。
つまりはトリプルエース。他の敵機も撃墜できないまでも確実に防御フィールドを削った。
「Romeo11よりRomeo23、シンゴ、よくやったな。偉いぞ」
「残りはこっちで対応するから、バースト中止して、一旦母艦に戻れ。冷却と弾薬補給したら、また帰って来い」
「Romeo23よりRommeo11、了解しました」
「Romeo22へ。ダイチ、お嬢達を頼んだぞ。システムコマンド:バーストエンド」
シンゴは、バーストを解除し、一旦母艦へと戻っていく。
「Romeo22より、Romeo23、シンゴ、やったね。お疲れ様」
「やっぱり一斉射撃はロマンあふれるよ。今度はボクががんばるから、後ろで見ててね」
後ろに帰っていくシンゴ機とハイタッチしたダイチ機。
今度は自分達の番、先手を取られた事で統制が乱れ編隊を維持できなくなった帝国無人機を叩くのは今だ。
「そういえば、シンゴに先にエース取られたけど、まー良いか」
「皆で無事勝てれば、それが一番。別にボクだけで勝つ必要も無いんだし」
個人の成績みたいな細かい事は気にしないダイチであった。
SHI-03シリーズなら無人機とは互角以上。
バーストする必要も無しに戦える。
「Romeo32,Romeo33よりRomeo11。今度は、」「オレ達の出番だ」
ビャーチ、シャスチのロシア双子はトムがOKを出す前に飛び出す。
「おい、Romeo32、33、勝手に飛び出すな。バーストはまだ……」
「Romeo11へ、こいつら程度にバーストはいらない」
「シンゴがやったんだから、今度はオレ達がやる番だ」
敵のど真ん中に突っ込む双子、一見無鉄砲に見えるが、お互いの背中をカバーしあって死角が無い様に動く。
通信する事もなく、完全にお互いの動きが見えているように、まるでダンスを舞うようにしながら、敵機を確実に撃墜していく。
実は、この双子、ダイチ程では無いが、精神感応力が高く、双子間ではテレパス的なものが使える。
普段はこの力をシンゴと一緒になってするイタズラにしか使っていないが、人型兵器のパイロットとして二人で戦えば、無人機如きには決して負けない。
二人のショットガンからでる光の散弾でどんどん敵機は落とされる。
「Romeo14よりRomeo11、前方より敵無人艦3隻が接近中。どう対処致しますか?」
編隊やや後方で情報統括をしているナムがトムに指示を仰ぐ。
「Romeo24よりRomeo11、よければ1隻はオレに任せてくれないか?」
カズアキが珍しく自己主張をする。
「Romeo11よりRomeo24、どうやってSHIで艦艇を沈めるんだ?」
トムの疑問も当たり前だ。
人型機動兵器の火力では普通艦艇を沈めるのは厳しい。あるとしたら接近してからのDC魚雷くらいだ。
「Romeo24よりRomeo11、バーストさせて貰えれば203mm砲で仕留められるはずだ」
通常203mm砲弾100kgを通常は秒速2kmで打ち出しているが、これを秒速3kmに上げられれば、その威力は戦艦大和の主砲46cm砲の4億5000万ジュールに匹敵する。
バーストすれば発射速度を秒速4km以上には出来るので、威力はそれ以上だ。
ただ、反動は完全に打ち消されるわけではなく、何か重量のあるものに機体を完全固定しなければ機体が反作用で吹き飛ばされてしまう。
「Romeo11よりRomeo24、それだと機体固定の必要があるな。CP(母艦)にでも固定させてもらうか?」
「Romeo24よりRomeo11、そうさせてもらうと助かる。Romeo21、姫これで宜しいか?」
「Romeo21よりRomeo24、また私に無断で勝手に動くぅ」
「まあ、良いから絶対沈めるのよ。情報は送るからがんばって」
「Romeo24よりRomeo21、御意」
「Romeo11よりCP、聞いていたと思うが、Romeo24の固定宜しく」
「CPよりRomeo11、了解した」
カズアキは、中隊のやや後方にいるシャングリアへと移動する。
後方への移動途中にカズアキはダイチ機に機体の手を振って合図した。
「Romeo22よりRomeo24、やっちゃえー!」
カズアキは、母艦に到着次第次第、機体固定準備を始めた。
「Romeo31よりRomeo11へ、残り2隻はどうする? 1隻ならオレとダイチで仕留められるが」
「Romeo22よりRomeo11、ボクもいけるよ。魚雷持っているから、二人がかりならバースト無しでいけるし」
トゥーイの提案にダイチも乗る。
「CPよりRomeo11へ。第五艦隊や第三航宙団の方々が、こっちにも手柄寄越せ、との事ですので、1隻はあちらにお任せでお願いします」
トムは考えたが、艦載機群は双子の活躍でほぼ全滅、こちらに向かってくる残敵も自分や他の隊員で十分落とせている。これなら問題ないだろう。
「Romeo11よりCP、了解した。Romeo31、Romeo22、行ってこい。その代わり無事に帰ってこいよ!」
「Romeo21よりRomeo22・31へ、気をつけて!」
「了解!」
トゥーイ・ダイチ機は編隊から飛び出した。
機体を固定できたカズアキ機にマイやスェーミ、ナムからの詳細情報が送られてくる。
「203mm砲、装填弾種、徹甲弾を選択、次弾も同種を装填準備。標準、先行艦前部主砲口」
右後方補助腕に直結された203mm砲に砲弾が装填され、前に向けられる。
左右の腕、右腰の補助腕で砲口を固定する。
脚部から固定用のアンカー、腰部より固定用ワイヤーが母艦装甲に打ち込まれる。
カズアキは、ふと4人でしたバカ話を思い出して微笑みながらコマンドを入力した。
「システムコマンド:ゲートバースト!」
急速に高まる機体のエネルギーと精神負荷を感じるカズアキ、しかし冷静に狙いを外さす撃つ。
「ふ!」
発射時の莫大な運動エネルギーは慣性制御で消しきれるものでは無く、母艦の重量と現在の運動エネルギーを持ってしてようやく釣り合うものだった。
もちろんその衝撃はカズアキにも襲い来る。
マッハ15(秒速5km)近い速度に加速された弾丸は、帝国艦艇のフィールドを易々貫き、狙い通り装甲が薄く内部エネルギー回路に近い主砲口に突き刺さる。
その膨大な運動エネルギーは、弾体だけでなく着弾点の装甲をプラズマ化させる。
その金属プラズマはあまりの速度に流体として装甲を侵食していく。
たった一撃の砲弾は帝国艦艇の構造竜骨を捻じ曲げ、中枢部まで食い込んだ。
発射時の衝撃に耐えたカズアキ、顎をかみ締めた際に唇を切っていたが無視して第二射の準備をする。
今度は着弾による被害で横腹を見せ始めた敵艦後方のジェネレータがあるであろう場所。
すかさず2発目を打ち込む。
「ふん!」
発射された2発目の弾体も狙いどおりに着弾、そのまま艦を貫いて帝国無人艦艇は真っ二つに折れて、爆発した。
「Romeo11よりRomeo24、よくやった。直ちにバースト終了して冷却・補給に入れ」
「母艦の甲板の穴は後でオレも手伝うから一緒に治すぞ」
「Romeo11へ、御意」
バースト終了して一息、ヘルメットのバイザーを開放して口の周りの出血を拭うカズアキであった。
ダイチは、カズアキの戦果を横目で見て感激していた。
「ああ、カズアキの機体妥協無しにパワーアップしていて良かった。203mm砲なんて普通積まないもの」
趣味と実益を兼ねるというのはこういう意味なのかは不明だと思うけど。
ダイチはターゲットの敵艦にトゥーイと二人でランダム機動を繰り返して近づく。
「Romeo22よりRomeo31へ、ボクが上から行くから下からお願いします」
「Romeo31、了解」
二人の「ダンス」に翻弄される敵艦の砲撃。
もはや艦載機の助けを借りる事も出来ないのでは、助かるすべは無い。
ダイチ達は敵艦フィールドを自らのフィールドでぶち破り、至近距離から手持ちパンツァーファウスト型のDC魚雷を叩き込んだ。
DC崩壊による相転移は簡単に帝国無人艦を引き裂いた。
残る1艦も40機を越える人型機動兵器と10隻からなる艦隊の砲撃により沈黙した。
「CPよりRomeo中隊、敵戦力の壊滅を確認しました。次の作戦段階へ進行してください」
戦いは、まだ序盤戦で勝ったに過ぎない。
本番はこれからだ。




