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エッグキーパーズ Egg keepers 〜秋山ダイチの宇宙戦争〜  作者: GOM
第一章 小学生編その1:シリウス攻防戦

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第二十四話 「さくせん」ぜんや1

 その日、シャングリラのブリーフィングルームには、士官級(少尉)以上やパイロット達が集められていた。


 前に艦長と副官のLeoレオ Eberhardtエーベルハイト中佐が立っている。

 このレオ、四十代後半のドイツ系、事務方業務は優秀なので、艦長は非常に助かっているらしい。

 ただ、本人は自分の影の薄さを気にしている様だ。

 実際の所、この艦には個性的な人材が多いので、「普通」では逆に浮いてしまうらしい。

 実は、練習空母セブール2の時の副官も彼である。


「皆さん、お忙しい中お集まり頂き、ありがとうございます。すでに皆さんには事前にお話していましたが、この度シリウス星系攻略作戦、作戦名『オペレーション・ライラプス』の正式開始が決定されました。この艦にも作戦への参加命令が出ています。詳細については、エーベルト中佐から報告します。中佐お願いします」

 艦長はレオを促す。

 部屋の照明は一部落とされ、前面スクリーンにシリウス星系の映像が映し出される。


「はい、ではご説明します。この映像は、今現在よりリアルタイムで40日程前のシリウスA・B近隣の画像です。なお、この映像はシリウスより1光月から10日前に撮影されたものです。また恒星は明るすぎるので本来よりも明るさを99.99%カットさせて頂いています。画面中央が太陽の約二倍質量のA型恒星シリウスA、向かって右側に地球程度の大きさ、ほぼ太陽と同質量の白色矮星シリウスBがあります。この双方は距離約20天文単位、公転周期50年程でお互いの重心を中心に回っています」


「この双方からラクランジュ点でL1、画面で赤丸で示したところにあるのが、帝国により建造された超新星促進発電衛星。ここからシリウスBに送られたガスにより、シリウスB周辺に微弱ながら膠着円盤が形成されつつあります」


「L4・L5の青丸が、この発電衛星からの送電用マイクロ波を中継する衛星、そしてL3、黄色丸のところにある全長100kmを超える巨大構築物が、無人戦艦建造用自動工廠衛星です」

 レオは映像について、ポインタを使って説明する。


「今回の作戦目的ですが、第一目標:自動工廠衛星の奪取若しくは破壊、第二目標:超新星促進発電衛星の破壊、第三目標:シリウス星系駐留艦隊の撃破です。現在確認されている敵艦隊ですが、星域全体で大型有人艦が5、無人艦が50強となっています。作戦参加艦隊は、当艦を含む第一航宙打撃群及び第三打撃群、第一・第三・第五艦隊となっております」


「我が艦が所属する第一航宙打撃群第三航宙団ですが、後詰として第五艦隊の一部と合流し、L4マイクロ波中継衛星及び付近の艦隊の撃破が主任務となっています。機動兵器群は、艦隊直援として、近づく敵機動兵器の迎撃を宜しくお願いいたします。L4制圧後は、そのまま待機し状況に応じてL1方面へ支援を行います」


「作戦決行は、今日より10日後の朝8時、高速度長距離ジャンプにより、一旦シリウスより10光日の位置に移動、移動に約6時間を要します(光速の1万倍程)。観測及び再びエネルギーチャージを行った2時間後、一気にそれぞれの担当作戦宙域へジャンプし強襲します。以上について、質問はありますか?」

 レオは皆に問う。


「はい」トムが手を上げる。


「ガードナー中尉、どうぞ」


「今回の作戦ですが、まだ訓練途上の第二・第三小隊隊ではかなり厳しいと思います。また敵地に攻め込むにしては、戦力を分散させすぎているし、情報も時差が大きいので、敵戦力の把握がどこまで正確か不明です」

 第一小隊の人達は、それをこの場で言うか、という表情。

 確かにまだダイチ達子供を戦わせたくないのは事実、しかし戦力的にはダイチ達に頼らざるを得ないのも事実。


「その質問についてですが、作戦内容については、近日中に偵察衛星を3光日付近に送り込み詳細なデータを分析後、一気に敵本陣、第一目標:自動工廠衛星制圧に艦隊の半分以上をジャンプ投入します。その際、最初に自動工廠衛星へ攻め込む事で敵の目をこちらへと集め、その隙に電力送電をカットさせて衛星の稼動を停止させます」


「第二・第三小隊についてですが、第三航宙団司令官のBernardベルナード大佐より、実戦運用を行える技量があるので、投入せよとの命令が来ております」レオはトムに答える。


 うぬぬという顔をするトム。まだダイチやロシアの幼子達を戦場には送りたくないのだが、航宙団の運用権は所属艦の艦長には無く、別途司令官が存在するのだ。

 その司令命令ではしょうがない。


「質問宜しいですか?」ダイチが手を上げる。


「はい、秋山曹長」レオはダイチを指す。


「今回の戦力比ですが、艦船数で言えば1:5と地球側が優位ですが、艦の性能差及び艦載機数を考えれば実際の戦力差は1:2.5程度になります。更に通常、攻城戦・対要塞戦の場合は、戦力差が3倍は無いと難しいです。もっと戦力を集中投入できなかったのですか? 地球圏防衛艦隊まで回せとは言いませんが、せめて第二航宙打撃群の投入を考えて頂きたかったのですが」


「第二航宙打撃群の未投入の件ですが、現在機体をSHI-03Aに更新中で、大半のパイロットが慣熟訓練中なのです。第一航宙打撃群については、半数まで03Aに更新・慣熟訓練を終えたところ、第三航宙打撃群については、今だ02シリーズを使用中です。ちょうど機体更新中に今回の作戦実行が重なった形になります」


「発電衛星のみであれば、Ia型超新星までは太陽質量の約1.4倍は必要ですのでシリウスAの1/4のガスをシリウスBへ送る必要があり、少なくとも10年、20年単位先の攻略でも問題はありませんでしたが、シリウスで自動工廠衛星を運用されて、無人艦隊の量産をされた場合、ますます数の不利はひっくり返せなくなり、もはや猶予が無いのが現状なのです」レオは苦しそうに答える。


「そういう急がなくてはならない事情がある事は理解出来ました。なら我々の艦はL1攻略に行ったほうが良いのではありませんか? 戦力の分散は、もうすでに中佐や中尉がおっしゃったとおり下策です。集中投入で一気に勝負をつけるべきです。もちろん私の所属する第二小隊を使っていただいてかまいません」

 ダイチはマイの顔を見る。

 マイは、ダイチに頷き、同意する。


「それに関してですが、L4制圧任務に関しては、第一航宙打撃群司令より直接命令が来ておりまして」

 レオはしぶしぶと事情を答える。


 それを聞いたマイは、「パパ、ワタシ達を守りたいから、主戦場から遠い場所で居ろって事なのね」と憤慨気味。


「はい」とマイは手を上げて質問をする。


「神楽坂少尉、どうぞ」


「では、早急にL4制圧してしまった後に、L1等へ手伝いに行くのはかまわないのですね」


「そうですね、先ほど申しましたとおり状況によりますが余裕があるのなら、可能と思われます」レオは答える。


 この質問の意味を、付き合いの長いダイチ達小学生組だけでなく中隊全員と艦長は理解した。

 マイは、マイパパに当て付けで、「やる」気だと。

 自分達を大事にしてくれるのはありがたい、しかしその為に作戦全体が失敗しては意味が無い。戦力が整いつつある今の中隊なら無人艦載機相手なら、大隊レベルでも十分勝算はある。おそらく中継衛星守護には衛星直援の中隊程度の無人機と随伴の無人艦が数隻あれば十分。

 その程度なら被害なく勝てるだろうとマイはふんだ。

 


 ブリーフィングが終わった後、ダイチ達は中隊だけで集合した。

 トム「マイ、お前一人でも敵を片付ける気かよ? 流石に無茶だぞ。そりゃ、オレも戦力の分散は下策だと思うが」


「まさかワタシ独りでは勝てるなんて思っていません。私達には戦略レベルの事は出来ませんが、戦術レベルではどうとでも手があります。幸いコチラには遠くが見える「目」と遠くに届く「弾」があります。また早い「脚」と強い「腕」も揃っているのですから、他所よりは「手札」は優秀だと思いますよ」マイはトムに説明する。


「更にL4の衛星についてもワタシとスーちゃんでハッキングを掛けられれば、うまくすれば周囲の無人艦の無力化も出来ますしね。手が足らなければ、この艦や艦体内の電子戦艦のメインフレームお借りしますし」


「おい、凄い無茶言っているな。しかし、実際そんな事が出来るのか、マイ?」トムはマイに聞く。


「帝国のプロトコルは、基本的な部分は古代空船から大きく変更はされていません。またワタシ達がトロヤで撃破した無人・有人機の残骸や戦闘ログから多くのデータが取れたので更に解析が進んでいます。私達の機体に搭載されているドローンを電子制御部へと接続できれば、ハッキングまでは可能です」


「システムの制圧までできるかどうかは不明ですが、その間は敵のメインフレームへ多大な負荷がかかりますから、援護攻撃にもなりますしね。あと、今思いついたのですと、マイクロ波送電システムに介入できれば、L3方面へのマイクロ波による攻撃も可能ですし。まあ自動工廠衛星へは着弾に約3時間かかるから、衛星への直接攻撃には使えないですけど」

 マイは大胆な、しかしえげつない作戦を提案する。


「もちろんこの間は、私達は無防備になりますので、援護は欲しいですね。スーちゃん、この手でいけるよね」マイはスェーミに聞く。


「うん、私とマイなら出来るよ」スェーミは頷く。


「なら作戦としては、マイとスェーミをL4衛星に送り届けるのが第一作戦、第二作戦として、衛星ハッキング中の護衛、第三作戦はシステム制圧後、L1・L3攻略の支援という事だな」トムは皆に聞く。


「私としては、かわいい子達ががんばっているのを守るのは賛成。けれど、本当に出来るの、マイ? 二人に大分無理をさせている気がするのだけど。たぶんダイチが言っていた「危機」がこれね。女のカンだと、今予想されているよりも多くの敵戦力がいるような気がするの」

 ジェーンは、いつもと違ってシリアスに話す。


「うん、ボクもそれが怖いから、もっと戦力欲しかったんだけどね」ダイチは皆を見る。


「で、いいんちょ、その作戦は凄いんだけど、勝手にやると怒られるじゃ済まないし、他と協力した方が良いと思うよ」ダイチはマイに聞く。


「ワタシもそう思うから、パパに相談しようと思うの。もちろん皆が賛同してくれたらだけど」


「オレはかまわないぞ。しかし、トゥーリはどうだ? 妹を危険に晒す事になるが」トムはトゥーリに問う。


「オレは、ダイチもマイも信用しているし、スェーミの実力もよく理解している。それに皆が守ってくれるんだろ? オレも戦うし、ピャーチ・シャスチも戦える。そうだろ?」

 トゥーリは双子に聞く。


「トゥ兄ぃの言う通り、俺達だってスーが大事だし、シンゴやダイチ達と一緒になら戦えるぞ」

「おう、その通り」


「ジョーやナムはどうなんだ? それにシンゴやカズアキは?」トムは静かな四人に聞く。


「僕はなんか話に感動していたから、口を挟まなかっただけだよ。お嬢様方を守るのは、男の務め。何も依存はありませぬ」

 ナムがそう言うと、ジョーはサムアップして同意を示した。


 シンゴ「オレはお嬢のナイトだし、カズアキもそうだから、今更だな」

「うむ」


「では、艦長やエーベルト中佐にはオレから話をしておく。ただ、問題はベルナード大佐か。どうしようか?」トムは思案する。


「とりあえず、ワタシがパパに親子として対面してくるから、それからでいいんじゃない? 裏事情もパパから聞きたいし。あと、出来れば鹵獲機体とかあれば、ハッキングの練習も出来るし」

 マイは、悪巧みを考えている様だ。


 それに気がついたダイチ「いいんちょ、少将を追い込みすぎないでね。前の時みたいに問い詰めたら、言えることも言えなくなるだろうし」


「それは分かっているわ。流石に今回は、前みたいには出来ないし。でも、そうね。送迎役としてダイチに送ってもらおうかしら。すでにパパと面識はあるし、娘の学友・同僚の送迎なら言い訳はつくし」


「ダイチ、少将には『お宅のお嬢さんと真剣に付き合ってます。』って言うんだぞ」

 そこで場を茶化しちゃうシンゴ。


「また、そのネタでボクをいじるの、止めてよね、シンゴ。ねえ、いいんちょ、も困るでしょ」

 顔を真っ赤にしたダイチは、マイの方を見ると、マイはトマトみたいに真っ赤。


「ねえ、シンゴ。このシリアスな場面で、そういう事言うの、どうなの?」

 真っ赤な顔のまま、しかし淡々とシンゴを攻めるマイ。何か、ゴゴゴという効果音が聞こえそうな雰囲気である。


「対戦車地雷」を踏んだ事に気がついたシンゴ。

「二人ともごめん。だって、このところのシリアスムードで皆ピリピリしていたから、少しでも和ませようとしただけで……」平謝りのシンゴ。


「まあ、シンゴを許してやれよ、マイ。そう悪気があった訳じゃないし、マイがダイチの事が大事なのも確かなんだろ」トムはシンゴをフォローする。


「まあ、かわいい子達がじゃれあうのは良いけど、喧嘩はNoよ」

 ジェーンも場を和ます。


「お姉さまや中尉がそういうなら、しょうがないから許してあげます。その代わり、バツとしてワタシ達がパパのところに行っている間にシンゴは、算数のドリル15ページ片付けてね」

 マイはシンゴを睨んで言い渡す。


「はい、ごめんなさい」シンゴはしゅんとする。


「まあ、自分ひとりじゃ難しかったら、ここにいる誰に教えてもらってもいいからね」

 流石にちょっと厳しすぎたかなと思ったマイはシンゴに助け舟を出した。


「では、僕が教えましょうか?」ナムが教師役を名乗り出る。


「それは良いですね。おい、ピャーチ、シャスチ。お前たちもちょうど良い機会だから一緒に教えてもらいなさい。宜しいですよね、チャン准尉」

 トゥーリがナムにお願いをする。


「ええ、僕はかまいませんよ。喜んでお受けいたします」ナムは丁寧にご挨拶した。

「じゃあ、皆でがんばって作戦成功・全員無事帰還して、パーティーでもしましょうね」マイは提案する。


「さんせー」

「おう」

「うん」

「OK!」

 全員賛成であった。


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