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エッグキーパーズ Egg keepers 〜秋山ダイチの宇宙戦争〜  作者: GOM
第一章 小学生編その1:シリウス攻防戦

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第十六話 あらたなる「つるぎ」

 マイを除く3人は、家族に言える範囲での状況・事情を話し、泣く泣く辞令を受託してもらえた。子供を戦場に送るのを喜ぶ親は居ない。家族の説得にはマイパパ、いや神楽坂少将も働いていたのは言うまでも無い。


 そして4人は再び幼年学校で集合した。

 マイが仕切る。「みんな、ちゃんと家族にとりあえずのお別れ言ってきたのよね」


「うん、宇宙に上がる前にもう一度帰るって話しておいたよ」ダイチは久方ぶりに皆に会えたことが嬉しい。


「オレなんて、毎度の事ながら「お国の為に行って来い」だぞ」呆れ顔のシンゴ。


「ウチは、ちゃんと家訓と秘伝を受領できたぞ」どうも何かと古風なカズアキであった。

「それなんだよ、まさかカズアキの家って武道家とか忍者とかじゃないよな」半分本気で聞くシンゴ。


「いや、ここ数代は皆サラリーマンの家だぞ」落とすカズアキ。

「なんだよそれ」ずっこけるシンゴ。


「でも代々宮仕えの身であるのは事実だ。仕える「上」がいれば、いつの時代も同じだぞ」案外、こういう事だと話が進むカズアキ。

「はいはい、漫才はそのあたりにして、校長室へ辞令の受諾に行くわよ」マイは纏める。


「漫才じゃないのだが」真面目に本当のこと言っているカズアキ。

「まあ、今日のところはこのあたりにして。実際大事なことはそう簡単には変わらないしね」フォローするダイチ。

「確かに我らは、お嬢に仕える3人のナイトだからな」シンゴは今の4人の関係が好きなのだ。



 そして4人で校長室へ向かう。

 校長は問う。「皆さん、本当に宜しいのですね。もう後戻りは出来ないのですよ」


「はい、4人で話し合って決めました。大事な人達を守れる力があるのなら皆の役に立ちたいのです」マイは答える。


「でもね、貴方たちも私たち大人からしたら守りたい存在なのですよ」校長はまだ未練がましい。教え子を戦場に望んで送りたい教師も、家族と一緒でいるはずは無い。


「はい、それは十分理解しています。だから皆でお互いに強くなって、自分達を含む全部を守れる人になるって約束したんです」マイは誇らしげに言う。


「そこまで言うのなら、もう止めはしません。でもこれだけは約束してください。命を決して粗末にしないように、必ず生きて帰っていつかこの学校に報告に帰ってきてください」泣きながら言う校長だった。

「「「「はい」」」」4人は校長に揃って言う。


「では、辞令を交付いたします。神楽坂マイ以下3名は、国連宇宙軍開発本部機動兵器開発局日本支部への出向を命ず。また神楽坂マイを特務少尉、他3名を特務曹長に任命する。以降、特務ながら軍人として扱う。以上」校長は涙を拭って話す。


「はい、神楽坂特務少尉、辞令を受諾いたしました。これ以降軍人として恥じない様致します」


「これ以降は、私には貴方方に命令や教育をする権限はありません。ただ年長者からの助言として聞いてください」校長は語る。


「貴方達は本来であれば、まだ小学生の身。まだ学ぶことは多々あります。義務教育の間といわず、時間があればいつまでも学ぶことを忘れないように。あなた達の人生は、まだまだこれから。戦争が終わってから、戦い以外は何も出来ないのでは困ります。学ぶことさえ忘れなければ、戦うこと以外に出来る事は増えます。また戦うときにも知識や考え方が役に立って、命を救うこともあるでしょう。これからの貴方達の活躍、戦争以外でも楽しみにしていますね」


「どうも助言ありがとうございました。校長先生や他の先生方の教えは絶対忘れません。絶対に生き残って、戦争以外の私たちの姿をお見せしますね」マイは少し涙ぐんでいた。ダイチ達も同様だ。こうして過ぎてみれば短かったダイチの小学生生活は終わった。


 ちなみに特務士官(少尉など)とは、士官教育を得ていない現場の下士官を実務を扱わせる為にポストを与えるもので、本来は現場叩き上げの年長者がなる役。

 ダイチ達は士官教育どころか小学生中退なのだが、戦闘指揮・機体運用の関係上ある程度の軍役を与える必要があるために、便宜上与えた役職なのだ。

 なお、あくまで機動兵器小隊限定の指揮権であり、歩兵部隊とかの他の部隊の指揮権は存在しない。ちゃんと指揮したいのなら軍大学や士官学校を出て士官にならないといけない。第二次大戦の日本海軍では末期には、名目上では特務は除外されたが、実際には指揮権の差があったもよう。日本陸軍では業務に特異性が少ないので特務士官はいなかったそうな。



 時は進んで、4人は揃って機動兵器開発局日本支部へ移動した。


 そこは、太平洋上、小笠原諸島近郊に作られた全長数キロの海上プラント、いや超巨大船だ。

 宇宙エレベータ建設の実験台として、どこまで巨大な海上施設が作れるかという実例で建設された施設で、その後周囲への秘匿レベルが高いため開発局が目を付けたのである。現在、こちらでは新型機体SHI-03の量産前最終テストが行われている。


「流石に大分南の方にあるから日差しが強いわね」夏休みも無かったダイチ達。今は8月も終わり頃なのだが、この強い日差しで日焼けしたくないマイは、日焼け止めをたっぷり塗った上に帽子を目深に被っている。


 なお、4人の服装だが、小学生用の軍服なんてあるはずないので、幼年学校の制服(上着はブレザー、下は男子:スラックス、女子:長めのキュロット)に軍役の徽章をつけただけものである。


「うん、こりゃ油断したら火傷になりそう」「うむ、注意せねば」男子の中で色白なダイチ・カズアキも油断無く日焼け止めを塗っている。


「そうか、オレんちに比べればまだマシだぞ」元気そうなシンゴ。


「そういえば聞いたこと無かったけど、シンゴの家ってどの辺?」

 ダイチに聞かれて「言った事なかったよな、オレんちは沖縄の本島だ」


「アレ、その割には沖縄弁言わないよね」気になったダイチ。


「方言バリバリなのは、もう老人だけだよ。そういやダイチんところはどこ?」


「ボクの処は関東の南の方、カズアキの家も聞いたことはなかったよね」


「自分の家は四国の山奥だ」


「もしかして平家の隠れ里とかじゃないわよね」思わず聞いてしまうマイ。


「確か先祖にはそういう人が居たとかは聞いたことがあるが」

 なんとなく納得してしまうダイチとマイ、シンゴは何なのか理解していない様子、まあ小学生じゃ日本史を詳しく教えてもらっていないしね。


「しかし、今更出身地教えあうのもどうかしているよな、オレ達」

「まあ、それだけ忙しかったのと、やっとチームになれたという事でいいんじゃないの?」纏めるマイであった。



 そして部局の人に案内されて到着したのは、日本支部長の居る部屋。


「皆さん、長距離の移動、お疲れ様でした。今日のところは自室でお休みされて、明日からは皆さんがお使いになる機体の調整に入りたいと思います。一応予定では、ここで2ヶ月くらいで機体を仕上げて、次へ移動という事になっています」支部長は、腰の低い穏やかそうな初老の人物であった。


「もう私たちは軍人ですので、子供として扱わなくてもかまいません。これからは職務に邁進しますので、そのようにして下さい」マイは大人っぽく言う。


「実は、神楽坂少将より貴方達の事をくれぐれもと言われています。それにここは、厳密には軍事施設でも軍事組織でもありません。私としては貴方達を大事な預かり物、子供として扱わさせて頂きたいのです。貴方たち子供に無理を言っている不甲斐ない大人の頼みとして聞いて頂きたい」


「どうもありがとうございます。父がご無理を申しまして申し訳ありません。実のところ私たちは士官教育どころか、つい先日まで小学生だったので、どのように軍人、それも士官として動いていいのやら分からない事が多いのです。こちらに居る間に十分勉強しますので、よろしくお願いいたします」マイは感謝を込めて言う。ここでも自分達が大事にしてもらっていることが嬉しい4人であった。



 では、これ以降はダイチ達が乗る新型機体の説明に入ろう。


 SHI-03 レガトゥース、ラテン語で司令官の意味を持つ機体で、SHI-02ケントリウスの完全上位機体である。機体骨格の構造はSHI-02とは大きくは変わらないが、素材の見直しで骨格強度はSHI-02と同等ながら10%近い軽量化に成功している。

 更にSHI-02ではシールド保持にのみ使用していた補助腕を2対増加して戦術の幅を増やしている。

補助腕の一つは、肩の後ろにあり武器の保持が主。肩の横には従来と同じシールド保持腕、機体腰部前面に少し小型の補助腕を一対持ち、この腕は武器の保持補助及び武器交換時の補助を行う。

 推進器にはSHI-02のに加えて翼型のLSP推進器を増設、この翼は大気のある惑星上時には揚力を、宇宙空間では廃熱機関として作用すると共にAMBACの補助スタビライザーとして使用する。

 機体の追従性を向上させる為にパイロットとの思考データ通信量の増加を図り、従来のコクピット部分のみならず機体各所にDCによる精神波受信機を増設、機体骨格部にまでDCを封入し、機体と人体の一体化度を更に上昇させている。

 装甲周りは、SHI-02でのものを更に最適化してチェーンメイル部分を増加させ防御力を低下させず機体重量の軽量化を行っている。

 センサー系は頭部に一対の大型センサーマスト、まるでウサギの耳といった感じ、「目」はバイザー内に大型の単眼と距離把握用の双眼、各種センサーを装備、レーダーは頭部、胸部、翼等にフェイズドアレイ型で装備している。

 ゲートエンジンについては、個人別チューニングを施し、リミッター解除使用を前提として廃熱能力の向上、及び慣性制御能力を上げている。

 本体固定兵装は、SHI-02と同じ、ただ胸部に余裕が出たので57mm砲の弾丸数を増量した。

 基本構造は以上だが、これ以降は個人別カスタマイズについて見て見よう。



 まずは小隊長、マイ専用機。SHI-03XS-MAI

 通信・警戒・管制能力及び同時索敵能力を重点的に強化されている。

 頭部ユニットは、センサーマストやカメラ部分を大型化。ここまでは先行量産小隊長機仕様(XS型)と変わらない。


 マイ専用機の特別装備が、増量センサー及び攻撃ユニットとして背部翼部分に片翼6基、全12基の小型ドローンユニット。このドローンは羽形をしており、LSPコンデンサ装備でLSP推進にて移動する。

 ドローンにはカメラ・レーダー等センサーを多く装備しており、常時超空間通信にて母機であるマイ機とリンクして多彩な方向からの情報収集を可能とする。また小型ながらLSP砲も装備しており、某ビット的な使い方も可能、ドローンを一箇所に集約して強力なLSP砲としての運用も可能としている。更に長期運用時には母機に帰ってLSPコンデンサに「充電」を行えるようになっている。なお、このドローンについては試作中の諜報EWACS型(XP型)装備の試作モデルに武装装備したものである。

 補助腕装備武器は、パルスレーザーマシンガンで、レーザーの「雨」で接近する敵に対しての面防御を成す。

 腕部には、LSPバトルライフルを装備、やや長距離の敵に対しての牽制、支援砲撃を行う。格闘武装は、腰部補助腕基部にプラズマトーチ、腰部補助腕による攻撃も可能。更に両腰の推進ユニットに超振動大型ナイフ。



 続いてはダイチ専用機。SHI-03XA-DAI

 リミッター解除での高速戦闘を前提に先行量産通常型(XA)の各部を強化している高機動戦闘型。

 頭部、胸部などは本来の仕様のまま、腕部、脚部、各補助腕、翼部、スラスター周りなど限界機動をする際に負担がかかる部分を強化している。

 武装だが、肩部シールドをやや大型に換装し、そこにフィールドカノンを装備している。それはフォースフィールドを短距離ながら射出することが可能で、敵フィールドを破りつつ攻撃を通すことが出来る。

 胸中心のLSP砲は、標準よりも長砲身にしてビーム収束率を向上させている。

 腕部にはLSPアサルトダブルライフル。砲身を2門装備して打撃力を向上させている。

 他の武装だが、補助腕装備武器は、マイ機と同じくパルスレーザーマシンガン。腰部補助腕のプラズマトーチも同一。違うのは翼部にマイクロミサイルポッドを装備しているのと、大型ナイフではなくて、先端を刺すことが出来るようにしたマチェット形の超振動片刃剣を使用している。



 シンゴ専用機。SHI-03XE-Shin

 軽量高機動というSHI-03の持ち味をやや殺すが、変わりに圧倒的な防御力と攻撃力を兼ね備えた中近距離戦向け機体である。

 先行量産打撃型(XE)をより攻撃的に、かつ短距離でのダッシュ能力を強化して瞬間的には高機動型に追従する事が可能となるチューニングを施している。

 頭部ユニットはセンサーマストを小型化、バイザー面積も小さくして防御力を向上させている。胸部、肩部、前腕部の装甲厚を増量、両肩シールドもダイチ機よりも大型かつフォースフィールド機能を強化している。ここまでは通常の打撃型と同じであるが、ここからはシンゴ専用機独特の部分。


 メインスラスターは変更無いが、各部補助スラスターを強化・推進剤の増量で、瞬間的な推力・比推力を上げて、俗に言う「ダッシュ・ブースト」スピードの向上及び移動距離を伸ばしている。

 武装は、補助腕には57mm・3砲身ガトリング砲。背部翼の可動能力をカットし縦に固定する変わりにあまった余剰部分にガトリング用の弾を収納。

 翼部にはダイチ機と同じくマイクロミサイル。シールドにも同じくフィールドカノン、腕装備はLSPビームライフル機能をつけたフィールド・ハルバード。暴れ回るシンゴ向きの大型兵器で遠距離射撃戦にも対応している。

 補助火力として両腰推進器に銃剣付LSPカービン、連射機能を重視したものである。腕に持つも良し、推進器を逆に向けて撃つも良し。

 腰部補助腕のプラズマトーチは共通装備。

 胸部LSP砲は、ダイチ機とは逆にやや短砲身化して周囲に撒き散らすようにしている。



 最後にカズアキ機。SHI-03XSN-Kazu

 カズアキが得意とする狙撃・砲撃能力に特化した機体である。

 まだ狙撃・砲撃型については今だ先行量産まで行っておらず、試作案以上のものでは無かったので、情報収集能力に長けたXS型を基本に改造を行った。


 頭部ユニットはマイ機とほぼ同じ。

 特殊装備としては、翼部にマイ機よりも大型の情報ドローンを4基装備。

 このドローンは情報収集能力とステルス機能に特化し、武装は無い。

 このドローンからの情報を得て遠距離攻撃を行う。このドローンもEWACS型(XP)用の試作品の流用である。

 右補助腕には大型火器、203mm対艦レールガンを直接装備している。

これは元々軽巡洋艦級の主砲を無理やり改造したもので約100kgの弾体を秒速2kmで発射できる。

装弾数は60発+補助弾装。多目的榴弾と徹甲弾、散弾を併用可能、重力環境下での曲射も考慮に入れたスマート弾である。

シンゴ機と同様に翼部を縦に固定し、その枠に弾薬を装備している。なお狙撃時にはレールガンを左右腕部で保持し、更に脚部からアンカーを設置して機体を固定、慣性制御を最大にして長距離攻撃を行う。

 左補助腕は防御用のパルスレーザーマシンガン、肩部シールドは大型だがフィールド発生能力よりもステルス性能を重視して狙撃時には機体を覆い隠せる用になっている。

 補助火力としてシンゴ機と同型のLSPカービンを両腰推進器に装備、これの銃剣にて接近戦をこなす様にしている。腰部補助腕のプラズマトーチは共通装備となっている。


 以上、4人の専用機の仕様である。

 カラーリングは、ベースを薄め・つや消しのスペースブルーに、国連マークに日本の国旗を右肩、小隊紋章(マイが好きな某ピーターなウサギのマークをアニメ風にしたもの)をロービジー配色で左肩部に、個人カラー(マイ:桜色、ダイチ:メタリックグリーン、シンゴ:レモンイエロー、カズアキ:メタリックブラック)のラインを各所に入れている。



 それぞれの特殊装備については、ダイチの趣味が爆発して色々な案を提出、それをそれぞれが取捨選択したもので、とりあえず落ち着いたもの。

 ダイチにとっては夢の専用機、とことん趣味全開の装備にしたかったのだが、機体の容量上どうしても無理な点が多く、やむなくあきらめた装備も多い。

 特にシンゴ機の仕様をとことん火力重視としたのは、ダイチ自身の機体には追加装備が出来なかった反動なのだろう。

 また、配色や紋章のデザインはマイの独壇場、あーだこーだで自分好みにした。

 なお、この仕様変更には20日を要し、その後の微調整で更に10日程を要した

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