第十五話 じじょうせつめい
少将、いやマイパパは話し出す。「皆さんが急に軍へ徴兵みたいな事になったのは、先だっての戦闘が原因なんだ」
マイ「そんな事は今更パパに言われなくても分かってるわ」
「だが、詳しい事情は分からないんだろ、続きを話すぞ」少しでも威厳を復活させたいが、マイの勢いに負けているマイパパ。
「秋山君だったかな、キミが使ったリミッター解除コード、あれの使用がすべての始まりなのだ」
「あのコードをキミがどこで見つけたとかは今更なので、もうかまわない。しかし、キミがあのリミット解除状態で戦闘を17分以上続けられたのが、開発部や国連上層部の目に留まったのだ。実は、あの裏コードは開発中に試されたもので、それを使用したテストパイロットは10分とも保たなかった上に戦闘どころではなく気絶してしまったのだ」
そう言われるダイチだが、そこまでの事だとは思っていなかった。
「確かにあの時の負荷は凄いものでしたが、ボクは最後まで気絶しなかったし、ちゃんと戦えたよね」ダイチは他の3人に聞く。
「ええ、確かにダイチから来る情報量は凄かったけど、問題なく戦闘をこなせていたわ」マイがフォローする。
「うむ、まずそれが第一のイレギュラー、そして第二のイレギュラーとして4人全員のゲートエンジン適正値が秋山君のリミット解除後、上昇したのだよ」マイパパは言う。
マイ「それってどういう事なの? 確かにあの光るダイチを見てから妙に力が沸いてくる感じがして、安心してオペレートできたけど」
シンゴ「そういえば、オレもあの時から機体の機動制御がすごくうまく出来て思い通りに機体が動かせていたな」
カズアキ「うむ、自分もそうだな。思い通りの所へ弾を届けられそうな気がしていた」
マイパパ「味方をパワーアップさせる能力が秋山君にあるのか、それともリミット解除にあるのかは不明だが、これを生かさない事は追い詰められた人類ではあり得ないというのが、上層部の意見だ。また秋山君はリミット解除後の火力不足を訴えていたね」
「はい、その為に接射での敵撃破しか出来ませんでした」ダイチはあの時の戦闘をやや悔いている。もう少し火力があれば余裕を持って有人機を早く撃破できていたかもしれない。そうすれば犠牲者も少しは減ったのではないかと。
「そこで、優秀な適合者を遊ばせることなく、かつその力を十分に生かせる新型機体を与えれば、戦況を打開させる事が出来るのではないかというのが、今回の辞令の意味だ」マイパパは言う。
「ただ、この事が帝国若しくは人類内部の帝国融和派に知れれば、秋山君の命は危なくなる。いくら機体に乗れば無敵のパイロットでも、生身の秋山君は幼い小学生男子でしかない。大人の手にかかればあっという間だ。そしてそれはマイ達にも同じ事が言える。世の中には、子供たちを生贄にして自分たちだけ命乞いをする外道どもが、うようよしている。そういう意味では、君たちを生贄にして前線で戦わせようとしている我々も同類ではあるが。しかし、我々は君たちの命を守るにはどうすれば一番安全であるかを考えて、今回の結論に至ったのだ。新機体の開発部局であれば秘匿性が高いから君達の身柄は安全、そして新部隊に移動してもしばらくは訓練が主体で、いきなり前線勤務という事は無い。更にあえて情報開示するなら、その新部隊は私の艦隊内部で設立される予定で動いている。急な話で申し訳ない。また真実を語れずにすまなかった。情報が漏れる危険性を出来る限り避けたかったのだ」マイパパは、子供たちに頭を下げる。
「そういう事情なら話せなかったのも理解できたわ、パパ」マイは十分納得したようだ。
「少し質問させて頂いて宜しいですか? 少将」ダイチは聞く。
「ああ、ここまで話したのだ。軍事機密に該当しない限りお答えしよう」マイパパは答える。
ダイチは問う。「ありがとうございます。新型機体と言われていましたが、それはSHI-02の改良型ですか? それとも、まさかSHI-03ですか?」
マイパパ「私が知る範囲ではSHI-03と聞いている。かなり個人向けカスタマイズが出来るらしいので、君たちが使いやすいようにしてみると良い」
「どうもありがとうございます。後、もう一つだけ質問宜しいですか?」
「うむ、いいぞ」
更に核心を問うダイチ「かなり上層部は戦況を危うんでいらっしゃいますが、もしかしてそれは先日の海王星軌道防衛戦や木星圏への敵侵入だけでなく、1年くらい前にシリウス星系が帝国の手に落ちたことと関係があるのでは無いですか?」
一瞬顔を曇らせてしまったマイパパ「それはどうしてそうなのだと思うのかな? ただ、その答えは軍事機密、私の立場ですら全貌を知らない事だ。君たちは自分の身を守ることを第一に考えなさい」
「はい、答えられない質問をしてすいませんでした。皆は他に聞きたいことは無いの?」ダイチは皆に聞く。
シンゴ「オレには難しい話は分からないけど、これまでと同じく、いやこれまで以上に4人で戦えるのなら良いや」
「姫を守れる上に、素晴らしき武具を与えて頂けるのなら自分に依存はありませぬ」いつもどおりのカズアキ。
「パパ、今日は無理言ってごめんなさい。パパが私だけでなくて皆の事を大事に思ってくれているのが分かって、とっても嬉しかった。パパ大好きだよ」
マイパパに駆け寄ってハグするマイ。
「私こそありがとう。こんなパパですまなかったね」感激するマイパパ。
「ううん、そういうパパだから、皆パパの命令で安心して戦えるの」うれし泣きのマイ。
「ありがとう、ありがとう」感激泣きするマイパパ。
「では、親子水入らずを邪魔しちゃダメだから、ここからお暇するね」
ダイチがそういうと、まるで話を聞いていたようなタイミングでマイママがドアの向こうから声をかける。
「すいません、お茶が冷めたので、お入れなおして持って来ました」
「ああ、入って」まだ感激の涙が止まらないマイパパ。
書斎に入って中の様子を見たマイママ「あらあら、良かったですわね、パパ」
「ああ、正直に話せて良かったよ」とマイパパ
「皆さん、そういう事ですので、今後ともマイ・少将共によろしくお願いいたしますね」マイママはお辞儀を3人にする。
「こちらこそ、少将には十分御気を使って頂けて感謝しております。ぜひとも戦える時が来ましたら、少将のお役に立ち、また必ず生き残って皆様に頂いたご恩をお返ししたいと思います」ダイチはマイママに感謝の言葉を言う。
「ええ、必ず生き残ってくださいね。出来れば誰かマイのお婿さんになってもらって孫の顔を見せてくれたら、もっと嬉しいのだけど」凄い発言をするマイママ。
男子3人とも顔を真っ赤にしちゃうが、これが気に食わないマイパパ。
「それとこれは話が違う。ウチのマイちゃんはパパと結婚するって言ってくれたんだよね」
せっかく感動的だったのに台無しにされたマイ「パパ、何言っているのよ! それは幼稚園に入る前に言った事でしょ。第一、法律でワタシとパパは結婚できないのよ。パパにはママがいるんだから贅沢言わないの! それにママ、こんな「おこちゃま」相手にしてナニ言っているのよ!」顔真っ赤にしてプンプンモード。
「あらあらあら」場を乱しきったマイママであった。
子供たちが書斎を離れた後、マイママはパパに言う。
「貴方、良い子達ですわね。ぜひともあの子達は死なせたくないわ」
「ああ、絶対守り抜いてやる。それが子供たちを戦場に送ってしまった大人たちの贖罪なのだから」大分気が抜けたマイパパ。
「では、お仕事がんばってくださいね。これからのあの子達の運命は貴方にかかっているのですから」
「絶対、マイ達もお前も地球も全部守りきってやる。そして孫や曽孫、玄孫に囲まれて、じいじ死なないでって言ってもらえるくらい長生きしてやるぞ。お前も一緒にな」
「はい、貴方、玄孫と言わずに、来孫、毘孫が生まれるまで一緒に居ましょうね」より添う二人、良い雰囲気でもう一人歳の離れたマイの妹弟が生まれることもありやなしや。
あてがわれた寝室に移動した男子3人だが、そこにマイが来る。
「ダイチ、最後の質問だけど、アレなんなの? パパの反応からしてやばそうな案件みたいだけど」
「うん、少将の反応だけど、あれってワザとだよ。本来言えない機密事項だったのに、殆ど答え言ってくれていたもの」ダイチは考え込む。
シンゴ「それってどういう事なんだ、オレにも分かるように説明してくれよ」
「自分も知りたい話だ、ここまで来たのなら仮説で良いから話してくれ」カズアキも気になる様子。
ダイチは答える。「あくまでボクの予想だから、外れても怒らないでね。皆シリウスは知っているよね、冬に見える一番明るい恒星の事」
「ええ、おおいぬ座のアルファ、青白い星よね」マイは優等生のお答え。
「オレも知っているぞ、流石に」シンゴも知っ
ていたようだ。
「うむ」カズアキも、もちろんとの事。
「で、そのシリウス星系が1年程前に帝国の勢力範囲に落ちたんだ。それが大問題なんだよ」ダイチは続ける。
「どこが問題なんだ?」シンゴは聞く。
「シリウス星系は、恒星系としては確か数億年くらいの若い星で地球から8光年、光の速度で移動して8年かかるくらいの近いところなんだ。星系には大きな惑星も無いし、もちろん生物なんて居やしない。鉱物資源的には大したものが無いんだけど、恒星に利用価値があるんだ」
「確か、シリウスって連星だったわよね。まさか……」優等生のマイは大分真相に近づく。
「うん、そこが問題。今明るく見えているのがシリウスA、ちょっと待ってね、詳しい話するからネットで調べるね」ダイチは情報端末から情報を見る。
「シリウスAは分類ではA型って太陽の倍くらいの大きさで青白く燃える星なんだ。そしてもう一つの星がシリウスB、今は白色矮星って、ちょっとだけ大きな恒星が燃えきった後に残る星なんだ。何億年も前はシリウスAよりも大分大きな星で先に寿命が来ちゃったらしいんだ」
「じゃあ、その連星って何が問題なんだ?」シンゴは更に聞く。
「このシリウスBが問題なんだよ。ここで話は少し変わるけど、帝国の最終兵器っての聞いたことある?」ダイチは皆に問う。
「確か恒星系破壊兵器があるって噂だけど」流石知っているマイ。
「うんそう、恒星の寿命を無理やり早く進めて爆発させたり、隣の星からガス持って行って大きくさせた星を爆発させたり」ダイチは説明する。
「あ! もしかしてシリウスBを超新星にさせるの?」マイは気がつく。
「うん、難しい言葉でチャンドラセカール限界って言うんだけれども、ガスを集めて一定以上の大きさになった白色矮星は核融合を暴走させて、Ia型に分類される超新星、つまり星の爆発をするんだ。そうすればその恒星系だけでなく近隣の恒星系もただじゃすまない。更に爆発時の星の回転軸を調整すれば特定の方向へ、爆発時に発生するガンマ線をビームのように集中して送ることができるらしいんだ。確かガンマ線バーストというらしいけど」ダイチは話す。
「おい、そんな事になったら地球は一環の終わりじゃないか」シンゴはびっくるする。
「うん、地球に到達するのには8年くらいかかるけど、大量のガンマ線が来れば地上の生命は死んじゃうし、直撃じゃなくても少なくとも電離層やオゾン層は壊滅だから、酷いことになる。その上、20年くらいしてガス衝撃波や隕石群が太陽系を襲うから、もうお終い。一旦爆発しちゃったらもう誰にもどうにも出来ないんだ」ダイチは恐ろしげに話す。
「そりゃ大変な話だ。これ知っちゃったらパニックが起きかねないや」シンゴはお手上げって感じで話す。
「うむ、確かにこれは軍事機密として、うかつに話せない内容だな」カズアキも納得する。
「だから、近日中にシリウス星系へ攻め込んで奪還するというのが計画の本筋なんだろうね。もちろん、Ia型超新星にするにはかなりの量のガスを送らないといけないから早くても10年単位以上の時間がかかるし、こちらの部隊を編成するのも数ヶ月以上かかる。かといって放置しておけない状況なのは確かだね。帝国も地球の生物的資源は欲しいから今すぐ破壊って事は無いだろうけど、いつでもやれるぞって脅しには十分使えるから、超新星の準備しておいてもおかしくは無いよ。幸い地球から10光年以内で条件が整っている恒星系は他には無いから、まずシリウス星系さえ奪還しておけば大丈夫かな? こいぬ座のプロキオンも似たような連星でこちらは11.5光年。ただ、プロキオンの場合は白色矮星が大分小さいから大丈夫だね」ダイチは、皆を安心させるように話す。
「じゃあ、オレ達はどういう事になるんだ?」シンゴは自分達の処遇を聞く。
ダイチ「あくまでボクの予想だけど、ボク達はシリウス星系攻略部隊には直接は関係ないと思うよ。ただ、戦力の底上げという事で新型機動兵器のテストパイロット兼他の人の適正値UPに使われるんじゃないかな?」
「それならいきなり前線配備って事は無いわけだな」シンゴは安心する。
「うん、少なくとも少将が指揮官で居る間はボク達は安全だと思うよ。間違っても娘や同級生を死線へ送る人じゃないし」ダイチは先ほどのマイパパを思いだす。
「ええ、パパならそこのところは大丈夫よ。でも実戦には絶対は無いわ。この間みたいに後方部隊への攻撃って無い訳じゃないし」マイはパパは信じるものの、戦争の怖さを知っているだけに心配している。
「うん、それはその通りだとボクも思うよ。だからこそ、ボク達は強くならないとね」
「アレ? その話しぶりだとダイチは辞令受けるんだ?」マイは意外そうな顔でダイチに聞く。
「いいんちょ、こそ辞令を受けるんでしょ。それなら、いいんちょを守るって約束を守るからには一緒に行かないとね」ダイチはテレも無くマイに話す。
逆に顔を真っ赤にしたマイ「もーしょうがないダイチよね。シンゴとカズアキはどうなの?」
「「もちろん「姫」「お嬢」を守るナイトですから」」見合いながらハモる二人。
「はいはい、どうもありがとうね」顔の赤さがトマトレベルになったマイであった。
こうして4人は、新たなる戦いへと歩んでいくことになった




