第十三話 つぎへのじょきょく
地球圏に帰り、軌道上の大型ステーション「ディスカバリ」に到着したダイチ達は、さっそく精密検査をうけるべく、医療ブロックへと送られた。
そして肉体・精神的に多々の検査を受けさせられて、検査終了後には妙に疲れてヘトヘトになってしまった。
4人にあてがわれた部屋は練習艦でのと同じ4人部屋。皆の精神安定を図るために今回もマイも含めて同室となった。
マイ「今度はあらかじめベット周りにカーテン準備してくれているんだ。」
ダイチ「どっちかというと、ここ病院の4人病室って感じだね。」
シンゴ「そりゃ、オレ達は学生の身でありながら、敵機撃墜して生き残って帰ってきて、更にPTSDにもならず、次は撃墜王目指すなんてバカ言うような、貴重な「モルモット」だから、こういう扱いになるんだろ。」結構辛辣である。
「上もあきれているだろうな。さっきのカウンセリングでも向こうのほうがあきれていた感じだし。」すっかり神楽坂小隊の「いつも」に慣れきっているカズアキである。」
「うん、ボクがやったこと言う度に、戦闘ログと見合わせながら、あきれていたよ。」半分自慢げなダイチ。
「そりゃ、おぬしはヤリスギなんだよ。全滅してもおかしくない状況で逆に全滅し返すのは、普通じゃないから。」シンゴは、もう慣れたけど、小隊が普通じゃないのを改めて思った。
「まあ、いいんじゃないの? この先も皆をあきれさせるくらい強くなるんでしょ、みんな。」笑いながら、皆のほうを見るマイ。
「御意、姫のおっしゃるとおり。」まとめるカズアキ。
またしばらく続く4人での楽しいひと時であった。
帰還後、3日程して4人の家族が子供たちに会いにステーションまで上がってきていた。その中には神楽坂少将もいたが、やや複雑な表情をしていた。
場面は戻り、会議中へ。
技術長官「こちらの4人、機動兵器小隊をなしていますが、今回の戦闘において帝国無人機動兵器4機及び有人大型機動兵器1機を撃墜しました。」議場は、騒然とする。特に自分の娘の戦果を提示された神楽坂少将は驚きである。神楽坂少将は、今回の事件に娘が巻き込まれたが無事生還したことまでは聞いていた。しかし、まさか娘を含む小隊が敵機を撃墜したとは聞いていなかった。おそらく極秘事項として今まで秘匿されていたのだろう。まさか小学生が敵を撃破したとは公表できる事案ではない。
技術長官「まず、彼らのゲートエンジン適正値をごらんください。これが幼年学校入学時のデータです。エンジンの性能を100%生かせる能力を100として示しています。この秋山生徒、適正値は91と全軍人を入れても上位50人に入るような数値です。他の生徒、神楽坂生徒は82、米谷生徒78、村上生徒73と皆かなり優秀な数値です。」どうもマイが神楽坂少将の娘であるのを知っているらしく、技術長官は神楽坂少将の方を一瞥する。
「そして、これが先日彼らが地球に帰ってからの適正値ですが、秋山生徒は115と想定値を突破、他の3人も90を越えております。」やや興奮気味の技術長官。
「この短期間に何が原因で適正値が上昇したのか、おそらくですが戦闘時の精神負荷が影響したのではないかと推定されます。」
「皆様、ご存知の通りゲートエンジン稼動時にはパイロットにはある種の精神負荷がかかります。また機体制御データも脳へ送信されるため、長時間の運用は厳しいものがあります。」長官は説明を続ける。
「では、これから戦闘時の映像及びその際の観測データをご覧ください。」
「まず、ランチが遠距離からの砲撃で撃墜、その直後に教官の登場する機動兵器が大破しました。この時点で学生たちはパニック状態になったものが大多数で、このままでは部隊壊滅は時間の問題でした。」
「そのとき、神楽坂小隊のうち秋山生徒がいち早く戦闘態勢に入り、小隊長の神楽坂生徒の下に駆けつけています。他の二人も、この動きに気づき同じく神楽坂生徒の下へ移動しています。パニック状態だった神楽坂生徒ですが、秋山生徒の叱咤激励により正気になり、この後戦闘指揮を始めます。」
「これからが、非常に興味深いデータです。」モニターには光り輝くダイチの機体SHI-01Tホプライトが写る。「これは一体どうしたのですか?」議長が問う。
「はい、これはゲートエンジンのリミット解除の裏コードを使用した結果です。」長官は答える。
「このような裏コードが存在することは今まで情報開示されていませんが、どうしてなのですか?」議長は更に問う。
技術長官「これはゲートエンジン開発時に、どこまで出力を上げられるかという試験を行っていた際に使用したコードで、その後誰にも使いこなせない事が分かり、表からは消去されたものの、エンジンのブラックボックス内にそのまま放置されていたようです。」
「使いこなせないとは?」神楽坂少将が尋ねる。
「まず第一としてゲートエンジンのエネルギー源であります「門」を通常よりも大きく開けられる程の適正者が多くいません。おそらく適正値が80を越えないと無理でしょう。次にエンジンからの精神負荷が通常よりも激しくパイロットを襲うのです。この実験を行ったテストパイロットですが、適正値85の彼でも10分と状態を維持できず気絶してしまいました。」長官は、興奮して答える。
「それなのに、今回秋山生徒はなんと17分間もリミット解除状態を維持し、その上無人機2機単独撃墜、無人機1機、有人機1機を共同撃墜したのです。なお、彼が長い時間リミット解除に耐えられたのかというと、適正値つまりこの世界での「存在力」が高いことで、ゲートエンジンで開いた「門」からの干渉、つまり世界から排除する力に耐えられたのだと思われます。」
騒然となる議場。それはそうだ、小学生がテストパイロットが耐えられない負荷を負ったまま、一戦闘で撃墜王になろうとする程の敵機を撃墜したのだから。
「他の生徒も驚異的です。神楽坂生徒ですが、この時点で残っている友軍機すべてと情報ネットワークへリンクを行って戦闘指揮し、指揮開始後は一機も友軍を喪失せず、無人機1機を共同撃墜しています。また米谷生徒は、秋山生徒の動きに通常の機体で追従し、十分援護を行い、無人機1機、有人機1機を共同撃墜しています。村上生徒も的確な援護射撃で、無人機1機及び有人機1機を共同撃墜しています。」
「これらの戦果が、搭乗時間200時間以内の小学生が成したことは、映像が無ければ誰も信じないことでしょう。」興奮しきった長官。
「つまりはこの4人がいなければ、全滅もあったということですね。」問う議長。
「はい、確かに秋山生徒の戦果はすごいものですが、4人が揃っていて、ここまでの結果になったと思われます。」長官は答える。
議長「で、このデータをどのように使って、今後の打開策とするのですか?」
長官「はい、この度のリミット解除時のデータで分かったのが、適正値が高いものを集めた状態でリミット解除をすれば、お互いの相互作用で適正値が更に上昇する可能性があるということです。あと、リミット解除できるような適正者には、その適正値を活用できる機体を与えたほうがより望ましいという事です。今回の実行者、秋山生徒の証言にもありますが、パワー及び防御力は十分得られたものの機体の火力不足で、やむなく激突するような接近戦を行わざるを得なかったということです。」
「またリミット解除時のセンサー類の不具合がかなり酷く、可視光以外の電磁波は殆どフィールドに阻まれてしまうのも確認できました。今回は、情報ネットワークへのリンクで敵位置の把握は問題ありせんでしたし、秋山生徒の証言によると彼には「気配」を感じるという特殊能力があり、今回の有人機戦闘時には敵機の位置を事前にほぼ当てていました。これは特殊例ですが、情報ネットワークの活用方法として個人の感知したものをそれぞれ統合すれば、戦闘が有利になります。情報ネットワークの活用については、神楽坂生徒が今回は全機体を独りですべて統括するという事を行い、そのためリミット解除機体へも常時データが送られ、また敵機に対して有効な攻撃・防御を行い部隊を守りきれました。彼女にも情報統括専用の機体を与えれば、より効率的に運用できるでしょう。」
長官は纏める「これらの情報を纏めた結果、適正値が高いものを集めた部隊を作成、彼らに特性にあった機体を与え運用することで、今まで以上の戦果を得られるでしょう。幸い、現在試作型から先行量産型へと移行しています新型人型機動兵器SHI-03レガトゥースはモジュール型を採用しており、基本骨格の上に様々な装甲・装備を装着可能としています。もちろんゲートエンジン能力も現行機種よりも上で、リミット解除使用を前提とした調整も可能です。この案により、近日中に開始されるであろう「オペレーション・ライラプス」も現実味がでるものと思われます。以上、開発部よりの提案でした。」
「この案を用いることは、比較的適正値が高いものが多い若年層、子供達を兵器として前線に送りつける事になります。この「悪魔の所業」が許されるものなのか、我々地球人類が生き延びてみて、初めて論議される事になるでしょう。」議長は悲しげに語る。「だからこそ、前線の子供たちを生き残らせるよう、そして最大限力を出してもらえるよう、我々大人たちが命を張って守っていこうと思います。では、この案についての議決を行います。賛成の方は挙手を。」
議会は騒然とするも、人類にはあまりに時間が残されていない現状、他に打開案も無く、全員賛成で可決された。
そして、ステーションでの家族面談に時間は戻る。
それぞれの両親に会い、お互いに安堵しあう皆。
しかし、独りうかない顔の神楽坂少将。
無事に戦いから生き残った娘に会えるのは嬉しいが、娘のこの先の運命を考えると悲しくなるのである。
父親の複雑な表情の意味をマイが不審に思い、後の行動に繋がるのはやむをえない事だろう。




