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エッグキーパーズ Egg keepers 〜秋山ダイチの宇宙戦争〜  作者: GOM
第一章 小学生編その1:シリウス攻防戦

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第十二話 えんそくからのかえりみち

 まだ地球に帰るまでは時間がかかる。

病院船及びそれの護衛艦隊が、すぐには準備できないのだ。

とりあえず、ステーション及び練習艦を護衛する部隊は緊急に展開されており、現在はステーション周囲の警戒をしている。

その間、神楽坂小隊の4人はずっと自室待機。

やっとお医者さんから動いていいとの許可が出たダイチ。

なまった身体を元に戻すべく、艦内やステーションの重力ブロックをいろいろ散歩中。

外見が可愛く利発な上に愛想の良いダイチは、すっかり艦内のアイドル。

皆、ダイチの活躍は良く知っている上に、働いている人の邪魔にならないようにしつつも、挨拶を欠かさず、大丈夫そうなら仕事内容とかを聞きにくる子供を皆は大事にしてくれた。

ダイチが一番気になるのは、クラスメイトの容態。

しかし、まだ容態が安定していない子達も多く、病室には近づけないので、医療班の方々に皆の状態だけ聞いてきた。

「鬼軍相」先生を含めて重体の子達は、ジャンプのショックに耐えられない可能性があり、それ以上に地球大気圏への突入など強いGに耐えられるのか分からない。

またPTSDを発症し精神的に不安定な子達は長い時間眠らさせている。

この子達の回復にも時間がかかるであろう。

ということで、これらの子達は病院船でゆっくり地球圏に帰ることになった。

子供達の親も病院船でこちらに来るらしい。

残る軽症の子達、実質ダイチ達だけなのだが、応急修理が終わり次第、練習艦で地球に一気にジャンプで帰還、ただマスコミ対策もあるし、先生を失った学校側も受け入れに準備がかかるので、落ち着くまでは地球軌道上の大型ステーションに滞在となる。

なお、亡くなった方々のうち遺体が回収できた人も、ダイチ達と一緒に無言での帰還予定である。残念ながら「お姉さん先生」の遺体は回収できなかった。

これらの情報は、本来ダイチのような学生レベルでは入手できないのだが、皆を救った幼い英雄のダイチには皆感謝や引け目を感じており、いろいろと便宜を図ってくれていた。

ということで十分情報収集できたダイチは、自室へと帰る。

部屋に入ると、マイは自分のベット周りを仕切ったカーテンを直し中。

シンゴは、カズアキに宿題を教えてもらっていた。

「ただいま。」「お帰り、フラフラ歩き回ってもう大丈夫なの、ダイチ?」

「うん、そろそろリハビリしないとね。で、いいんちょ、こそちゃんと眠れてるの?」自分のベットへ戻りつつ、ダイチはマイに聞く。

「ええ、美少女のワタシがいつ3人に襲われのるか、ってのは思うけど、それ以外は安心して眠れているわ。」冗談で返せるくらい余裕が戻ってきたマイである。

「おいおい、そういうのはもっと胸とかお尻が大きくなってから言うんだぞ、お嬢。」攻めるシンゴ。

「それはセクハラだぞ、いくら姫がまだまだ成長途上だからといって言って良いことと悪いことがある。」嗜めになっていないカズアキ。

「カズアキ、それフォローになっていないよ。」苦笑いするダイチ。

「じゃあ、私と勝負する?力技じゃどうか分からないけど、それだけで私を押さえ込めると思うの?」挑戦的に笑いながら凄むマイ。

「すまん、言い過ぎた。オレがお嬢にかなうわけ無いだろ。それに仮にオレがお嬢に何かしようとしたら、お嬢親衛隊の二人が黙っていないよ。」焦って謝るシンゴ。

「それってボクとカズアキの事?」疑問に思って聞くダイチ。

「そうだろ、カズアキにとってお嬢は「姫」だし、ダイチはお嬢の事まんざらじゃないんだろ?」

「もー、ボクまで巻き込んでフレンドファイヤーするの止めてよね。」笑いながら誤魔化すダイチ。

「はいはい、許してあげるから、着替えの時とかカーテンのすき間から覗くんじゃないわよ。それと今回の件も、後でおごってもらう分に足しとくからね。」

といいつつも、案外機嫌の良いマイ。

「シンゴ、自爆技は鍛えなくて良いぞ。」ちゃかすカズアキ。

「うむ、そーする。」笑いあう4人であった。

マイがダイチ達の部屋に引っ越してきてから、マイの精神状態は安定し、他の3人も仲良く過ごせていた。

そして、やっと地球に帰る目処がたった頃、マイに内緒でダイチは2人に相談した。

「地球に帰る前に、皆でパーティでもしない?」

シンゴ「そりゃ良いけど、準備はどうするんだ?ここじゃお菓子すら満足に買えないぞ。」

カズアキ「うむ、自分も持ってきた菓子類は殆ど残っていない。」

そこでと、ダイチは切り出す。

「実は、教頭先生や艦長さんとかステーションの酒保の人に相談して、お菓子を融通してもらったんだ。」

酒保とは、軍隊施設内で日用品や嗜好品を安価に売っている売店の事。

「いつの間にそんな事やっていたんだ、ダイチ」あきれるシンゴ。

「うん、日課の散歩でいろんなところを歩いているうちにいっぱい知り合い出来て、ステーションの酒保の人達なんて、もうすぐ地球に帰るって話したら、これ持ってけって一杯お菓子くれたんだ。」

「やりおるな、ダイチ。」感心するカズアキ。

「人の縁とかコネは大事にしないとね。」胸を張るダイチ。

「で、いつやるんだ?」聞くシンゴ。

「帰る日の前の晩に、パジャマパーティー風にやろうかなと。パーティの日には消灯時間を少し遅らせてもらえるように、艦長さんにもう話済みだから。」

「ダイチ、お前戦略・戦術の使い方間違ってないか?」ツッコむシンゴ。

「せっかくの戦略こういう時に使わなくてどうするの?伊達にいつも突っ込んでも負けないようには準備していないよ。」突っ込み、いやツッコミ返しするダイチ。

「うむ、やりおる、ダイチ。」ますます感心するカズアキ。

悪巧み(笑)する3人であった。

そして明日には地球に帰る日の夕食後、シャワーで身奇麗にしたマイが部屋に入ると、部屋の真ん中に小さな机を出して、その上に沢山のお菓子と飲み物が並べられていた。

「お帰り、いいんちょ。今晩は、ここでの最後の夜だから、一杯話して楽しんじゃおうよ。」

「何よ、これ!」びっくりするマイ。

「お嬢をびっくりさせようと準備していたんだ。」「うむ。」

「こんな事して、教頭先生や艦長に4人とも怒られちゃうじゃない。また私を困らせるの!」お説教モードのマイ。

「大丈夫、教頭先生や艦長さんには許可もらっているから。それとお菓子とかはステーションの酒保の人達からのプレゼント。消灯時間も遅らせてもらっているから、大丈夫だよ。」説明するダイチ。

「あんた達って、またワタシに相談も無く、こんな事して。もー、バカばっかりなんだから。」思わず涙ぐむマイ。

「さあ、部屋の入り口で突っ立っていないで、中へどうぞお嬢様。」

「はいはい、これはおごりの分とは別ですからね。」

それから日付が変わるまで4人は、いろいろと話し合った。

今までの楽しかった事、これからの事、そして自分たちがやるべき事を。

出発の日である翌朝、少し寝不足な4人は30分ほど寝坊するも、目覚ましが鳴らなかった事に気がついた。

船長の計らいでゆっくり寝ていてもいいようにしてくれていたようで、いつもより1時間近く遅く食堂に行っても朝食は準備されていて、誰にも怒られなかった。皆に愛されていることを十二分に感じた4人であった。

そして神楽坂小隊は無事に地球圏へと帰還した。

これが、4人の長い「うちゅうへのえんそく」の終わり、遠足は家に帰るまでが遠足、とても大変で悲しい事もあったけど、4人にとっては一生忘れられない遠足となったのである。

地球では、今回の事件を受けて日夜会議が繰り返されていた。

あってはならない事がよりにもよって子供達の上で起きてしまったのだから。

国連宇宙軍のお偉方がバーチャルながら全員集まっての会議。議長は安全保障理事会議長である。なお、英会話を日本語に変換してお送りいたします。

最初に追及されたのは、太陽系内防宙担当。

木星圏まで、帝国の侵入を許してしまった責任は重い。

「今回の件ですが、約一ヶ月前の海王星軌道防衛線にて海王星軌道の監視衛星が多数撃破されたこと及びその後監視網が事件の時点まで復旧仕切れなかった事が原因です。現在は天王星軌道防衛艦隊の一部を海王星軌道まで上げ、監視を行っています。監視衛星網の復旧ですがあと2週間は最低でも見ていただかないといけません。」中年太りの防宙担当中将は、大汗かきながら言い訳をする。

これに黙っていない第一航宙打撃群司令の神楽坂少将、実はマイの父親である。渋いナイスミドルで、どこかマイにも似ている。

「それでは、まるで艦隊や機動兵器の運用が悪くて負けたから、監視網に穴が開いたというのではないですか?」

「いえ、そういう意味ではありません。悪いのは帝国、我々は守りきれなかっただけの事です。」全部責任を帝国に押し付けるような言い訳を、中将は言う。

「そんな事を言い合うために集まっているのではありません。もっと建設的な話をしないと、犠牲になった子供たちが浮かばれませんし、今後同じ過ちは絶対に犯せないのです。」初老の安全保障理事会議長は、言い訳など聞きたくないと話しをまとめる。

「では、打開策はどうなさるのですか?」議長に聞いてみる神楽坂少将。

「実は、今回の戦闘において、興味深いデータが得られたと聞いております。技術長官、データを提示してください。」議長が技術長官を促す。

白髪で眼鏡をかけた、いかにも研究者的な風貌の技術長官は、モニターにダイチ達のデータを示す。「え!」娘の姿を見て思わず声を出してしまった神楽坂少将であった。

「この子供たちが今回の戦闘において、帝国部隊を撃破したのです。」


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