第十一話 たたかいおわって
ステーションに帰ったダイチ達は、すぐさま医療室送りになる。
そこで簡易検査を受けるのだが、ダイチは肉体的には極度の疲労による発熱と中程度の打撲が数箇所、首が軽度の捻挫といったところで、投薬としばらく自室での安静で大丈夫だろうとの事だった。精神面はアレだけの精神負荷と戦闘による恐怖を受けたはずだが、今は興奮しているものの大丈夫、今後PTSDにならないかを判断との事。
シンゴは、その頑丈な身体のおかげで疲労はあるものの問題なし、精神的にもいまのところ大丈夫なようだ。カズアキもほぼ問題なし、マイは精神面でやや問題あるも、PTSDになるかどうかは今後のケア次第だろうとの事であった。
より問題なのは、他の小隊。
前述のように、まともな子供達のほうが少ない、神楽坂小隊が全員たいしたことが無いという状況自体がおかしいのだ。
皆ボロボロになっての辛勝、特に精神的な支えであった二人の教諭を失ったのが大きい。直接死に様を見たわけではないが、いきなり知った顔が目の前でいなくなるのは、子供でなくてもショックは大きい。
一見、ふざけて軽口言い合って余裕があったように見えたダイチ達も、そうやらないと精神の安定が保てなかっただけで、戦闘終了後には今更襲ってきた恐怖にうち震え、かなり落ち込んでいた。
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子供達の状況に悲しみ、大人たちはなんとかしようと奔走した。
艦長のハワード大佐は、少しでも早く子供たちが地球に帰れるように、連絡を取る。
「なんで、病院船の発進が遅れているのですか?それとマスコミをもっと黙らせてください。あと、もしご家族の方がこちらに来たいというのなら、その手配もお願いします。」
超光速通信が切れた後、艦長は疲れた顔で横にいる男性副官と話す。
「どうしてこんなことになってしまったのでしょうか?」
「太陽系内まで帝国の「目」が入っているのを、見逃していたのが原因かと。
最近、外部惑星系の衛星監視網がザル状態で、警備艦隊を巡回させてはいるのですが、広すぎる上に小惑星帯に一度入られては見つけるのも困難です。
我々大人の不手際が、子供たちを傷つけてしまったのです。」副官も苦しい表情。
どちらも、ダイチ達とそう変わらない年齢の子持ちの親、子供たちを守りきれなかった悲しみにくれている。
ステーション及び艦の医療班は悲しみにくれながらも、子供達の命を繋ぐべく戦っている。重症患者が多く、もっと本格的治療が出来る病院船が到着するまで、なんとしても時間を稼いで子供たちを救うために。
学校側も教員免許を持っている軍属を失い、子供たちへの精神的フォローが全く出来ない状況である。唯一残った教頭は、本校や軍本部との連絡に時間をとられて、睡眠時間すら十分に取れないながらも、子供達の顔を見る時間をなんとかして作り、少しでも子供たちを励ました。
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だいぶ熱が下がり、ベットから少し起き上がれ出した、ダイチ。
何もできないので仕方なく自室のベットの上で情報収集。
シンゴやカズアキもやることがないので、二人で対戦ゲーム中。
「これからボク達、どうなるんだろうね。」
「もうじき病院船が来たら、帰れるんじゃないか?」攻撃を避けながら話すシンゴ。
「自分達はすぐに帰っても良かったのに、まだここに待機だから、何か帰れない事情があるのやも。」隙を見て攻めるカズアキ。
「ここで調べられる情報だと、地球は今回の件でマスコミが大騒ぎらしいよ。ちょっと前に家に連絡したときに、ものすごく心配されたから、だいぶ大げさに話が伝わっているんじゃないの?」
「大げさじゃないだろ。死傷者23名の大災害、いや戦闘があったんだから。まあ、オレ達が敵を仕留めたってのは流石に伝わってはいないだろうけど。ウチの親も心配してたけど、戦ったのかどうかなんて聞かれなかったし。」もはやライフの残りが無いシンゴ。
「自分の家も似たような反応だったぞ。すぐに帰れないのも、マスコミから自分達の事を守ってくれているからじゃないか?」フィニッシュの準備中のカズアキ。
「うん、それはあるだろうね。それとニュース映像とか見てPTSD発症って事もありそうだし。」
「で、ダイチはどうなんだ? まだ怖いか?」負けちゃって、顔を上に上げながら聞くシンゴ
「うん、まだ思い出すと震えが来ちゃう。でも、それとは別に、悔しいというのと、もっとうまく戦いたいって気持ちもあるのも不思議。」
「おいおい、まだ懲りないのかい?撃墜王になりかけたキミは。」あきれ気味のシンゴ。
「どーなんだろう。やりたくないのと、やらなきゃって気持ちで半分半分かな?」
「案外、ダイチは図太いところがあるから、心配は無いか。」勝利でうれしそうなカズアキ。
「それで、あの時のダイチの機体のパワーアップってなんだったんだ?」勝負は勝負と割り切るシンゴ。
「あれってゲートエンジン開放の裏コマンドを使ったからなんだ。あれ使うと機体の全リミッターが解除されるのと、エンジンの出力がすごく上昇するんだ。そのかわり機体にはものすごく負担がかかるし、パイロットへの精神負荷や機動時のGがきつくなるので、いいことずくしじゃないんだ。実際、ボクは戦闘終了後寝込んだし、機体もバラバラになっちゃったし。」
「なるほど、それで機体から出るフィールドや光が強くなっていたのか。」やはり気になるカズアキ。
「じゃあ、使い放題って便利なやつじゃないんだな。で、どうやってその裏コマンドなんて知ったんだ?」疑問を口にするシンゴ。
ダイチは言いよどむ、まさか夢で聞きましたなんて言えない。マイにもあのコマンドの出所については話していないのだ。
「ちょっとしたスジからの情報で...。」
「そんなに簡単に分かるのなら全員使っているだろ?オレ聞いたことないぞ。」
「自分も聞いたことは無い、いくら短期決戦用だとしても知っていたら使う場面はあるだろうし。」
「だから、ボクにも誰も使わない理由なんて分からないよ。使ってみてアレは確かにすごいけど、諸刃の剣だって良く分かったし。たぶんもうどうしようもない時以外はボクでも使わないよ。」
「そりゃ、この間はその「どうしようもない時」だったけどな。」納得はしずらいシンゴ。
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そうこう3人で話していたときに、部屋のインターホンがなる。
モニターに一番近いシンゴが取り次ぐ。「はい、どなたですか?」「ワタシよ。」インターホンのモニターには、酷く焦燥しきった表情のマイがいた。
「どうしたんだよ、その顔。大丈夫なのか?」びっくりするシンゴ。
「少し話がしたいの、中に入っていい?」「ああ、皆いいだろ。」ダイチ、カズアキ共にうなずく。
部屋に入ってきたマイだが、目の下がひどいクマで真っ黒、目もうつろで普通じゃない。
「いったいどうしたの、いいんちょ」「とりあえず、そこの使っていないベットにでも座れよ。」「うん」弱弱しい声で、まったくいつものマイではない。
「で、一体どうしてそんなふうになっちまったんだ、お嬢。」心配なシンゴ。
「同じ部屋の子達、あの戦いで皆いなくなっちゃったの。マキは死んじゃったし、クミは重体、ノゾミは怪我はそんなに酷くなかったのに、あの後泣き叫びはじめちゃって、病室で今眠らされているの。」悲しい現実を訴えるマイ。
「じゃあ今いいんちょ、部屋で独りなんだ。」「ええ、あの後部屋で独りでいると、とっても寂しくて、とっても怖くて眠れないの。誰も居ない部屋で眠ろうとすると、死んじゃった人や大怪我した人が皆夢の中に出てきてワタシを責めるの。どうして自分たちを助けてくれなかったんだって。あの時、もっとワタシが早く動いていたら助けられた人も居たかもしれないのに。だからあれから殆ど眠れないの。」泣きながら話す、マイ。
そういえば、あの日からマイが見舞いにも来ていなかった事に気がついたダイチ。
「それは違うよ、いいんちょ。誰もいいんちょの事、責めて無いよ。ボク達はいいんちょに助けてもらったし、他の助かった人も皆同じだよ。夢の事は、いいんちょが、自分を自分で責めているだけだよ。」慰めるダイチ。
「どうしてそんな事言えるの、死んじゃった人の考えが判るわけないじゃない。」
「じゃあ、何でいいんちょは皆がいいんちょを責めているって思うんだい。死んだ人の考えは分からないんでしょ。」ダイチに言われて、えっと思うマイ。
「そういえば、そうよ。でも、じゃあワタシは、あの時どうしたら良かったの?」
「いいんちょ、過去はどうやっても変えれないよ。変えられるのは今と未来だけ。だからもっとボク達が強くなって早く戦争を終わせれば良いんだよ。そうしたら誰も傷つかずに済むし。出来れば帝国の人とも話し合えれば良いんだけどね。」
「そうそう、これからやるしかないんじゃないか。実際、お嬢が指揮し始めてから誰もやられていないんだろ。」説くシンゴ。
「ええ、そのとおりよ。」やや泣き止む、マイ。
「姫はあの時、姫が出来る事を十分やり遂げて自分達を含め皆を守れた。それはそれで良し、では無いか。後はその守る範囲を広げれば良いだけだし。」自分なりの言葉で慰めるカズアキ。
「ね、だから、いいんちょは絶対悪くないんだよ。」
「みんな、ありがとう。本当にありがとう!うわーん。」思わず、ベットに突っ伏して大泣きしてしまうマイ。
「いいんちょ、これまでも、そしてこれからもボク達4人でがんばっていこうよ。愚痴や弱音は誰だってあるよ。これからは4人でもっと話し合っていけば良いんだ。」
「おう、お嬢はいつもどうりじゃなきゃ、調子が狂っちゃうよ。」
「我らは姫をお守りする騎士、これからも我らを頼って欲しい。」
皆で励ましているうちに、泣き声が小さくなり、そのうちマイは寝息を立てて寝始めた。
「あら、お嬢。寝ちゃったのか。」「ちょっとは安心できたのかな。」「とりあえずはこれで安泰だな。」小声で話す3人。
マイの身体を、変なところ触らないようにして、3人で動かしてベットにちゃんと寝かした。
「さて、今日のところは良いけど、お嬢をこのまま独りのままにしておけないな。」腕を組むシンゴ。
「うん、ホントは男女同室なんてダメなのだろうけど、教頭先生や艦長さんにお願いして、いいんちょの部屋をここにしてもらえないかな?」提案するダイチ。
「自分もそれが良いと思うぞ。」同意するカズアキ。
「じゃあ、さっそく教頭先生に連絡とろうよ。艦長さんには、たぶんこの部屋を監視している人から話がいきそうだけど、先に自分から言ったほうが良いよね。」
ただでさえ精神的に不安定な子供たちだから、部屋は安全のために24時間監視をされている。
「うん?じゃあなんでお嬢の事、監視の人が気がつかないんだ?」疑問を持つシンゴ。
「職務怠慢ではあるまいな。」考えてしまうカズアキ。
「監視の人ってたぶん男の人でしょ。だったら女の子の部屋なんて、じろじろ見るものじゃないから、気がつかなかったのかも。ということなので、監視の人、今回はボク達がなんとかしますので、後の事宜しくお願いします。」監視カメラに向けてお辞儀するダイチ。
それから連絡後、すぐにすっ飛んできた教頭、艦長。
どうやら、監視の人今回はちゃんと見ていたようで、本来一学生が簡単に連絡を取れない多忙な艦長にすぐ話が通った。
状況を聞き、眠っているマイを見て、2人の大人は3人、いや4人に謝った。
「私たち、大人たちが不甲斐ないせいで、君たちにものすごい負担をかけてしまった。教師の私がもっと早く神楽坂さんの状態に気がつくべきだったのに。本当に申し訳ない。」頭を下げる教頭。
「艦内を預かるものとして、今回の管理不足は全部私の責任です。どうやって償えば良いのかすら、分かりません。」今にも泣きそうな艦長。
「お二人とも、頭を上げてください。あと、お静かに。いいんちょ、いや神楽坂さんがせっかく眠れているのですから。」大人2人を落ち着かせるダイチ。
「先生、艦長さん。オレ達は大人の人たちに、もう十分いろいろとしてもらっています。あと、神楽坂さんはオレ達の小隊長。オレ達を守ってもらうだけの存在じゃなくて、オレ達が守ってあげる人なんです。」まじめに話すシンゴ。
「3人で神楽坂さんを守りますから、今回の件はしばらく自分たちに任せていただけないですか?」元々まじめだけど、更にまじめに話すカズアキ。
この後、ダイチ達3人の意見は通り、マイはダイチ達の部屋へ引越しすることになった。
8時間後、目を覚ましたマイが、まず自分がどこにいるのか分からなくて慌てたのと、ダイチ達の部屋で熟睡してしまった事、制服のまま寝てしまった事、ちゃんとベットの中に寝ていたので自分を運んでもらった事、など等に気がつき赤面して、ダイチ達を説教したのは言うまでも無い。
その後、自分に了解も無く部屋の引越しが了承された事を説明されて、更に激怒しつつも、皆に感謝したマイであった。ああ、ツンデレ




