変身
「そんなに道の真ん中を歩いて怖くないの…?ノア…」
私は恐る恐る聞く。というのも、私たちはお尋ね者なのだ。
「別にぃ。そっちこそ、そんな端っこ歩いてつまづくよ?」
ノアはにこにこで言う。
「バカな。そんな子供じゃあるまいし…」
ズコッ
私は冗談みたいにこけた。
「ほらぁ~、言わんこっちゃない。ほら」
と言ってノアは私に駆け寄って手を差し伸べる。
「いたた…。ご、ごめん、ノア…」
私はノアの小さな手を取って姿勢を立て直す。
これからのことで頭がいっぱいなせいだ…。恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じる。
転んだのなんていつぶりだろう。
「そんなことより、これからどうするつもり?」
のんきなノアに疑問をぶつける。
「う~ん、まずはこの国のもっと中心に行きたいな。観光しよう!」
は…?
「ね、ねぇ…?私たちはお尋ね者なのよ?…正気?」
「ひどい言い方だなぁ…」
ちょっと困った顔をしてノアは言う。
とはいうものの、ノアの発言は私にそう言わせざるを得なかった。
「大丈夫だよ。なんとかなるって」
ならないわよ!完全に指名手配されてるのよ!?と、少し大きな声になりそうだった。
「な、何か算段があるとでも…?」
私はグッとこらえてそう言った。
「あるよ?」
ノアはあっけらかんとこう言った。
「要するに、姿が分からなければ何の問題もないんだろう?」
ノアは自信ありげな態度で続ける。
「ボクが君の姿を変えてあげるよ」
どういうことなの…?と、私は声が出なかった。
「信じてないねぇ~?ボクはドラゴンだよ?魔物だ」
「し、知ってるわ…?」
「魔力を持つ物、と書いて魔物。魔法が使えるんだ」
フンスと、ノアはドヤ顔で言った。
「さ、早速試そう!」
ノアはめちゃくちゃやる気だ。
「え?え、と…、私はどうしてたらいいの?」
急に始まりそうで私は身構える。
「そのまま、動かないでぇ~」
と言うと、ノアはおもむろに顔を近づける。
どんどん近づくノア。
え…!?ちょ、ナニナニ!?
私は顔が赤くなる。
すると、ノアの顔は私の首元へ迫っていた。
「?」
な、なんだ?と思った瞬間
ガブッ
「いたぁ!」
ノアは私の首に噛みついた。
慌てて引き剝がそうとするも、離れてはくれない。
「もうひょっろらから」
ノアは噛みついたまま言う。
しばらくしてジタバタして、ようやっと離してくれた。
「いったい何!?」
私の首はノアのよだれでベトベトだ。
「いやぁ~、君に魔力を注いだんだ」
「…へ…?」
訳が分からなかった。
「ボクの魔力を注いで、一時的に君に魔法を使えるようにしたんだ」
「ウソぉ…!」
魔力なんて生まれてこの方持ったことがなかった。
そんな私に魔力が…?にわかには信じがたかった。
「ちなみに、それはよだれじゃなくて魔力だから」
と、ノアは付け足した。
いやよだれやろ。と思ったが今はそれどころじゃなかった。
「ほ、本当に魔法が使えるようになったの…?」
「あぁ。やってごらん?」
「で、でもちょっと待って。私、魔法なんて使ったことないからやり方が分からない」
「大丈夫。念じてごらん?姿を変えたいって」
分かった、と、私は念じてみる。
すると
「…ん…?な、何か変わった…?」
「お。成功じゃぁ~ん」
ノアは言う。が、何ら変化を感じない。
鏡、ある?と、ノア。私は持っていた鏡で自分を映してみる。
わお。
大きな変化はないが、顔立ちが変わっている。
少なくとも同一人物だとは分からないほどに。
「よし!これで何の心配もないね」
じゃ、レッツゴー、とノア。
この子となら本当にどうにかなるかもしれない。そう思うのだった。




