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31.氷

 僕たちは週末旅行で山荘に泊り、翌朝散歩に出かけた。ユカちゃんが先頭に立ってどんどん進み、道に迷った。

「とにかく下へ下へと降りてけばいいんじゃない?」ユカちゃんはのん気だ。

「朝食に間に合うように帰りたいよ」アキちゃんが言った。

「でも気持ちいい」ミユキちゃんが言った。

確かに山の空気は心地いい。木々のざわめきと鳥のさえずりもいい。水の音がする。

「あ、滝だ」ユカちゃんが言った。

木々の向こうに滝が見えた。ユカちゃんがもっと見ようと先に進む。

「危ないよ。もっとゆっくり…」

ユカちゃんが足を滑らした。僕が手を伸ばした。ユカちゃんが僕の手をつかんで、そのまま転がった。僕は引っ張られて、ユカちゃんといっしょに滝に落ちていった。アキちゃんの悲鳴が聞こえた。


 気がついたら、布団に寝ていた。女の子が隣にいた。すごい美人だ。

「誰?」と僕は聞いた。

「え?」

女の子は不思議そうな顔をして僕の顔をのぞきこんだ。

「アタシ。わからない?」

僕は首を振った。何も思い出せない。僕は? 

「ユカだよ。わからない?」

「ユカ…?」

「憶えてないの?」

「わからない。ここは?」

「山小屋だよ。アタシたち滝に落ちたんだよ」

「滝?」

「おや、気がついたのかい? よかったねえ」知らないおばあさんが言った。

「ごはんができてるよ。食べられるかい?」

僕は体を起こした。何ともない。動ける。僕はうなずいて、立ち上がった。ちょっとフラフラした。女の子が支えてくれた。

「ありがとう」と僕は言った。

「運がよかったねえ。ちょうどわたしが通りかかって見つけたから」おばあさんが言った。

食卓の上に朝食が並べてあった。いや昼食か? わからない。今何時だ?

「とにかく食べよう」女の子が言った。

 食事をしながら話をした。

「ま、とりあえず警察に連絡するかねえ」おばあさんが言った。

「え? いや、ちょっと待って」女の子が言った。

「おや、どうかしたかい?」

「アタシたち、駆け落ちしたの。そう。だから見つかったら困るの」

「へえ。若いのにやるもんだねえ」

「そう。アタシたちやっちゃったの。それで親から逃げてるの」

「おやおや」

「ねえ。どこか別の部屋で二人っきりになれないかな?」

「わかったよ。じゃましないから、ゆっくりやりな」

やる? 何を? おばあさんに案内されて奥の部屋に通された。

 部屋に入るなり、女の子は服を脱いでハダカになった。

「え? いや、何を…」

「はやく服を脱いで」そう言いながら僕の服を脱がそうとする。

「いやいや」

「やりたいでしょ?」女の子は僕を見上げて言った。

女の子はすごい美人だ。胸が大きくてスタイルもいい。現実とは思えない。夢を見ているのか? 僕の性器が否応なくそそり立った。

「ほらあ。やりたがってるじゃん」女の子は抱きついてきた。

何か違和感がある。何だ? 女の子は唇を合わせてきた。その感触に覚えがあった。ああそうなのか。僕はこの子とやっていたのか。そういえば抱き合った感触にも覚えがある。前にもこうして身体を合わせたことがあるのか。

「待ってて」女の子は冷蔵庫を開けて何かして戻ってきた。そして僕の性器を口にくわえた。おお。おおおおお。すごく気持ちいい。何だこれは。女の子の口からよだれが垂れている。冷たい。冷たくて温かくて気持ちいい。女の子の口の中で僕の性器が膨れ上がる。たまらない。これはたまらない。

「えへへ。どう? ユミさんに教えてもらったんだ。氷を口に含んでやったんだよ」女の子がうれしそうに言った。

ユミさん? それ誰? 女の子は僕の性器をつかんで自分の股間に持っていこうとした。

 外でバタバタと大きな足音がした。いきなり部屋の入口が開けられて、別の女の子が入ってきた。僕たちを見たとたん顔が真っ赤になって、髪の毛が逆立った。

「ユカちゃん、蹴るよー」

突然記憶が戻った。僕はユカちゃんをかばって、アキちゃんに蹴り飛ばされた。


 ユカちゃんは時間稼ぎのためにGPSの付いた髪留めと携帯を川に捨てていた。僕の携帯まで捨てていた。なんてやつだ。そこまでやるか。みんなはGPSを追いかけて川に流された髪留めを発見し、さかのぼって山小屋を発見したらしい。アキちゃんは僕を蹴り飛ばす瞬間に力をゆるめたみたいで、内臓破裂には至らなかった。でもかなり痛い。

「やってないから」僕はうわごとのように言った。

「わかった」アキちゃんは静かに言った。

「ま、そう言うしかないわよね」ユカちゃんが涼しい顔で言った。

めげないヤツだ。なんでそんなに僕としたがるんだ。僕のことを優秀な遺伝子だと思い込んでるみたいだけど、だからって優秀な子が生まれるとは限らないんだよ。

 その夜、蹴られて動けない僕に、アキちゃんがお口でやってくれた。なんか物足りない。ユミさん、アキちゃんにも教えてあげてくれないかな。あれ? はっ。そうか。ユミさんが言ってた変態への道まっしぐらってこのことか? まずい。変態にはなりたくない。あれは忘れよう。ユカちゃんとのことはすべて忘れる。


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