29.女コーチ
「ヨウコちゃんの様子がおかしい」ユカちゃんが言った。
「ヨウコちゃん? まだいるの?」アキちゃんが険しい声で言った。
「お兄さんが行方不明だっていうのにね。いい根性してるわ」
「転校しちゃえばいいのに」アキちゃんは冷たい。
きっとヨウコちゃんがバレンタインデーに僕にチョコレートをくれたせいだ。
「お兄さんの失踪とアタシたちに関係があるとは思ってないみたい」ユカちゃんが言った。
「そうなの?」
「だってあたしのお父さんのこと知らないし。不運な巡り合わせと思ってるんじゃない?」
「ふうん」
「様子がおかしいって?」僕が聞いた。
「なによー。気になるのー?」アキちゃんが問い詰めてきた。
「いやそういうわけじゃ」
「なんかー、特別コーチっていうのが現れてさー、毎日特訓させられててさー」
「特訓?」
「そうなの。ひとりだけその特別コーチのジムへ通ってるんだけど」
「特訓の効果は?」
「それがさっぱり。顔色は悪いし、身体の動きも悪いし」
「いい気味なんじゃない?」
「アキちゃん、なんかこわいよー」ユカちゃんが言った。
「ヨウコちゃんのことは放っておこうよ」僕が提案した。
「えー? やだー。なんか気になるー」
「厄介事は持ち込まないでよー」アキちゃんは母みたいなことを言った。
「今夜アキちゃんちで作戦会議やるよー」
ユカちゃんから連絡が入った。そしてユカちゃんとミユキちゃんが料理とお酒を持ってやって来た。母は夕飯作らなくてよくなったので機嫌がいい。父は久しぶりのごちそうと酒に浮かれている。
「どうしたの? ヨウコちゃんの話ならもういいよー」アキちゃんが冷たく言った。
「それがねー、そうもいかなくなったのよー」
「どういうこと?」
「今日ね、ヨウコちゃんが倒れちゃって、アタシが保健室へ連れて行ったの。そしたらヨウコちゃんのお尻からこれが出てきたのよ」
ユカちゃんはそう言って、黒い棒状のものを取り出した。ゴムみたいでぶよぶよしている。
「何それ?」
ユカちゃんがいじるとブーンと音がして、棒状のものがくねくね動き出した。父と母が身をのりだした。
「これは…」
「知ってるんですか?」アキちゃんが聞いた。
「大人のおもちゃだよ」ミユキちゃんが言った。「わたしもさんざん使われた」
「そ、そうなの?」
「アソコに入れられたり、お尻に入れられたりした。すごく気持ち悪い…というか気持ちいい」ミユキちゃんの身体と脳は複雑だ。
「ヨウコちゃんはなんて言ってるの?」
「コーチに入れられたって。肛門の筋肉を鍛えるんだって」
「そんなばかな」
「コーチってのは男なのか?」父が聞いた。
「ううん。女の人」ユカちゃんが答えた。
「SM女王ね」母が言った。
「え?すえむ?」
「人をいじめるのが大好きな女。いたぶるのが趣味なのよ」
「なんでそんな人がコーチを?」
「事情がありそうね」
「ヨウコちゃんはどう言ってるの?」
「レギュラーになりたいからやってるって」
「ばかじゃないの?」
「わたしもいじめられたい。いたぶられたい」ミユキちゃんが言った。
「よし。コーチにお願いしてみよう」ユカちゃんが決めた。
「アンタはダメ」女コーチが言った。
「えー? そんなー」ユカちゃんがふくれた。
「練習見てたけど、身体かたすぎ。やる気なし。才能なし」
「ひどーい」
「わ、わたしはどうですか?」
「見学してるだけじゃないの」
「身体は柔らかいです」
「どれどれ」
女コーチはミユキちゃんにポーズをとらせた。ミユキちゃんは長袖長ズボンのトレーニングウェアを着ていて肌は見せていない。ポーズを難なくこなして女コーチを感心させた。
「合格。明日からウチのジムに来なさい」
「アタシたちも見学していいですか?」ユカちゃんが言った。
「だめ」
「それであっさり引き下がったの? ユカちゃんらしくもない」母が言った。
その夜、ユカちゃんたちが料理とお酒を持ってやって来た。
「へっへっへ。ジムの場所さえわかればこっちのものよ。ハッカーのお兄さんによれば、昔はパソコンにUSBメモリ差したりしないと乗り込めなかったけど、近頃はどこもかしこもWiFiだから、パスワードさえ解けば簡単にネットワークに乗り込めるんだって」
「それで?」
「ジムの監視カメラの映像をここで見られるようにしてもらう。なんかねトレーニングルームにはあらゆる角度から見られるようにカメラが設置されてるみたい」
「へえ」
「だから、アタシたちは明日ここでミユキちゃんの特訓をみんなで見るってわけ」
「おお、明日も宴会か」父が喜んだ。
翌日、家に帰ったらノブコお姉さんがキッチンで料理をしてくれていた。マユミ先生やユウコさんやユミさんまで来ている。父は美人と酒に囲まれて幸せそうだ。刑事さんが出てきて言った。
「たいへんなことがわかった」
「何ですか?」
「あのジムはポルノ撮影所だった」
「えー?」
「サーバーの中に大量の映像と画像データがあって、すべて裸の少女が新体操のトレーニングをしているものだった」
「ハダカの?」
「そうだ。それを闇サイトで売って儲けていた」
「ひどい」
「被害届とか出てないんですか?」
「少女たちは撮られていることを知らない。あくまでトレーニングだと思っている」
「そんな。自分からハダカになって?」
「それが女コーチのやり方ということになっている。すべての筋肉の動きを見るためだそうだ。女性のコーチと二人きりだからな。他の目があるわけじゃない」
「でも実際にはカメラで撮られていて、それをスケベな男たちが闇で買って見放題ってことね。やだやだ」
「狙われるのは、いろんな学校の新体操部でレギュラーまであと一歩という子たちだ。この女コーチ、腕は確からしく、それでレギュラーになれた子もいる。」
「じゃあコーチだけやってればいいのに」
「コーチだけじゃ億単位の金は稼げないだろ。レギュラーになれた子がテレビに映ったり有名になったりすれば、その子の映像はますます値が上がる」
「げーっ」
「証拠は手に入れたんでしょ? 捕まえないの?」
「捕まえるさ。ただミユキちゃんにどうしてもと頼まれてな。今日の特訓が終わってからにしてほしいそうだ」
「また? それでこの前ひどい目にあったのに、懲りないわねえ」マユミ先生が言った。
「何かあればいつでも突入できるように手配はしてある」刑事さんが言った。
「あ、ミユキちゃん来たわよ」モニター画面を見ながらマユミ先生が言った。
「はい、男性陣は出て行って」母が言った。
「え?」
「ミユキちゃんはこれからハダカにされるのよ。見ちゃだめでしょ」
「オレも?」刑事さんが言った。
「当然でしょ。わたしたちが見てるから、何かあれば呼ぶわ」
僕と刑事さんはしかたなく、父といっしょに酒と料理をかかえて二階に上がった。
「僕もお酒飲もうかな」僕が言った。
「やめとけ。子供が飲むと脳が腐るぞ」
「大人になったら腐らないのか?」
「いや、腐っても平気になるだけだ」
(アキちゃんの回想)
最近の監視カメラは音声もバッチリ録れている。女コーチとミユキちゃんがトレーニングルームに入ってきた。これはリアルタイムの映像だ。
「服を脱ぎなさい。全部」女コーチが言った。
ミユキちゃんは素直に従った。女コーチはミユキちゃんのハダカをみて驚いた。ミユキちゃんは売春組織に何度も潜入して男たちのオモチャにされたため身体中に傷跡が残っている。最近はわたしたちといろんな事件にかかわってさらに傷跡が増えた。それを見た時、目を背ける人と、食い入るように見つめる人がいる。女コーチは見つめるタイプだった。危険な兆候だ。
「あらあら、これじゃコスチュームで隠すってわけにはいかないわ。演技を磨いても大会には出られないわね。あなたには別の訓練をしてあげる」
「別の?」
「そこで四つん這いになりなさい」
ミユキちゃんはマットの上で四つん這いになった。女コーチはミユキちゃんの肘と膝を枷で固定した。ミユキちゃんは犬や猫のようにお尻を突き出した格好になった。女コーチはミユキちゃんのお尻の穴をなでて、指でもみほぐし始めた。
「え? な、何を…」ミユキちゃんが言った。
「身体が柔らかいってことは、筋肉がやわらかいってこと。ここの筋肉もね」
女コーチはそう言って指をお尻の穴にずぶりと入れた。
「ひっ、や、やめてください」
「だいじょうぶ」
女コーチは指を2本3本と入れてグリグリこねくり回す。
「いやっ、いやああ」
「まだまだ」
女コーチは両手の指をお尻の穴に突っ込んで、左右に押し広げた。
「ひええええ」
ミユキちゃんのお尻の穴はびっくりするぐらい拡がった。
「ほら、やわらかいし、よく伸びる」
指を押し込んで手首を回転させる。ツボの底をさらうように何度も手首を回転させて、やがて押し込んだ。女コーチの手がまるごとお尻の穴に飲み込まれた。
「ぎゃああああ、い、痛い、裂けるう」
お尻の穴に手首まで入った腕をさらに押し込んだ。
「ぎひいいいい」
女コーチは腕を勢いよく出し入れし始めた。グシュッ、グシュッ、グシュッ。
「あぎゃあああ、ひいっ、ひいっ、ひいいいい」
やがてズボッと音を立てて腕が引き抜かれた。
「あが…」ミユキちゃんが口から泡を吹いている。
「うん。すごくやわらかい。いいわ。これなら…」
女コーチは新体操で使うこん棒を持ち出した。片方の指でミユキちゃんのお尻の穴を引っ張りながらもう片方の手でこん棒の先の太い方をねじ込んだ。
「おごほほおおおおお」ミユキちゃんが悲鳴を上げた。
ぐいぐいこん棒をねじりながら押し込んで、太い部分が入り切ったところで手を離した。ミユキちゃんのお尻の穴からこん棒の柄が突き出てプルプル震えている。
「ひいっ、ひいっ、ひいっ」
ミユキちゃんのお尻がひくひく震えて、こん棒がだんだん押し戻されて、太い部分が姿を見せ、やがてジュボッと抜けて床に転がった。お尻の穴がゆっくりすぼまった。
「はあ、はあ、はあ」ミユキちゃんは肩で息をしている。
これは明らかにカメラで映像を残すための行為だ。変態オヤジに見せて売るために。もうやめさせよう。ミユキちゃん、ここまでされたらもういいんじゃないの? どこまでやらせるの? 女コーチはもう一度こん棒の太い方をミユキちゃんのお尻の穴に当て、同じようにねじりながら押し込んだ。
「ふぎゃああああ」
「もう見てらんない。刑事さん、突入しよう!」ユカちゃんがキレた。
刑事さんが駆け下りてきた。
「わたしも行く。あの女コーチを蹴り飛ばしてやる!」わたしは言った。
「そりゃいい。ぜひやってくれ」刑事さんが言った。
「パンツは見ないでよー」
「見ないよ」
刑事さんは現場に突入の指示をし、わたしたちといっしょにジムに急行した。
僕たちが到着した時、証拠はあらかた押収されて、女コーチは捕らえられていた。
「女の子のお尻はオモチャじゃないよー。大事なところなんだよー」
アキちゃんが突進して、女コーチを思い切り壁まで蹴り飛ばした。女コーチは壁に当たってぶざまな格好で横たわった。刑事さんが口笛を吹いて拍手した。
「あいつのケツの穴にスイカをぶち込んでやるー」ユカちゃんが叫んだ。
「やっていいよー」アキちゃんが答えた。
「二人とも落ち着け」刑事さんが言った。
ミユキちゃんはぐったりして、座っていた。毛布がかけられている。
「だいじょうぶ?」
「えへへ」ミユキちゃんは不気味に笑った。
「ミユキちゃんの映像はハッカーのお兄さんが全部消してくれたよ」
「…ありがとう」
「帰ろう。ノブコお姉さんの料理が待ってるよ」
「ああ…食べたいかも」
ミユキちゃんは僕たちと家に帰った。
「結局またひどい目にあっちゃったじゃない」マユミ先生が言った。
「はい、でも…今となってはいい思い出です」ミユキちゃんが料理を食べながら言った。
「いや、いい思い出にしちゃだめでしょ」




