23.女体盛り
「女体盛りって知ってる?」ユミさんが言った。
「何それ?」ユカちゃんが言った。
「ハダカの女の人を寝かせて、その上に料理を盛るの」
「変態じゃん」
「そうなんだけど…」ユウコさんが口ごもった。
「わたしが捕まった時に協力してくれた爺さんを覚えてる?」ユミさんが言った。
「蜘蛛の巣屋敷のときのコレクター爺さん?」
「そう。あの爺さんがユカちゃんに女体盛りをさせてくれないかって」
「えー?」
「あのお爺さん、変態だったの?」アキちゃんが言った。
「そうなんだけど…」またユウコさんが口ごもった。
「助けてもらった恩義があるからね。断りづらくて…。それにユカちゃんには指一本触れないって約束で、…箸は触れるけどね」ユミさんが言った。
「何それ」
「お料理取るときに箸を使うでしょ。だから箸は触れちゃうんだけど」
「やだー、気持ち悪いー」アキちゃんが言った。
「爺さんひとりだけ。他には誰もいないのよ。わたしたちも警護につくから。安全は保障する。それに料理の盛り付けも、ほら、ノブコさんにお願いすれば恥ずかしくないでしょ?」
「お爺さんにハダカ見られるじゃん」アキちゃんが言った。
「麻酔で眠らされてるから本人にはわからないわよ」
「いやいやいや」
「いいよー。おもしろそうじゃん。そんなにアタシの美しいハダカが見たいんだったら、見せてあげてもいいよー」ユカちゃんが言った。
「ユカちゃん、何言ってるの?」アキちゃんが驚いて言った。
「いいじゃん。減るもんじゃなし。むしろ見せてあげたい。麻酔もいらない」
「それはダメ。ユカちゃん絶対くすぐったがって動くから。料理がくずれて台無しになっちゃう」ユウコさんが言った。
「そっかー、残念。そうだみんなも参加すれば? アタシの美しいカラダを囲んで宴会しようよ」
「どれだけ自分の身体に自信持ってるんだ」僕が言った。
「へへーん。美しく生まれた者にしかわからないわよ」
「ハダカは好きな人にしか見せちゃいけないんだよー」アキちゃんが言った。
「これほど美しく生まれてなければねー」
「どういう意味よー」
「カレも参加していいよー」
「だめー」
「もう何回も見てるんだからいいじゃん」
「ぜったい、だめー」
「まあまあ。じゃ、引き受けてくれるのね?」ユミさんが聞いた。
「オッケー」ユカちゃんが答えた。
「ユカちゃんのお父さんが許してくれないよー」アキちゃんが言った。
「ないしょに決まってるじゃん」
コレクター爺さんのお屋敷は広かった。医療設備の整った車両で麻酔医が麻酔の準備をしている。台所ではノブコお姉さんが女性スタッフと料理の準備をしている。
「今日は人払いをしておる。屋敷には誰もおらん。心配せんでいい」
「まったく爺さん、なんでこんなことを…」ユウコさんが聞いた。
「うむ。女体盛りの女体は完璧でなければいかん。顔もそうだが、胸は大きく、太りすぎてても痩せすぎててもいかん。肌も美しくシミひとつないのが理想じゃ。わしゃユカちゃんを見た時にこの子こそ女体盛りにふさわしいと思ってしもうた」
「モノ好きよねえ」マユミ先生もなぜか参加している。
「わしももう長くないからの。冥途の土産じゃ」
「お爺さん、死ぬの?」ユカちゃんが聞いた。
「もうすぐな」
「最後の晩餐?」
「ユカちゃん、それ死刑囚にも使う言葉だから」僕が注意した。
「若い時に一度だけ見た女体盛りがずっと忘れられんでな。それにふさわしい女性と出会うこともなかった。もうとっくにあきらめとったんじゃが」
「えへん。このアタシと出会っちゃったのね」ユカちゃんがうれしそうに言った。
「ムダに見た目だけはいいからね」ユウコさんが嫌味を言った。
「お料理の準備できました」ノブコお姉さんが台所からやって来た。
ユカちゃんは麻酔のため車両に向かった。僕たちは台所へ行って料理を見ることにした。
「直接肌の上にのせるから、熱いものはありません。肌を傷つけないように殻を滑らかにした伊勢海老の姿造りにトロ、アワビ、フグ、ウニ、その他高級魚のお刺身各種を豪華に盛り付けします。ローストビーフや冷製鶏肉なんかも盛ります。サラダは股間に盛り上げます。天婦羅などの温かいお料理は別にお皿に盛ってお持ちします」
ノブコお姉さんが説明してくれた。
「すっごい豪華じゃん。来てよかった」マユミ先生がはしゃでいる。
「美味しそう。これがユカちゃんの身体に盛られて出てくるのね」
「見ちゃだめだからね。ちゃんとアイマスクしてよ。わたしが食べさせてあげるから」アキちゃんが僕に言った。
やがてユカちゃんの麻酔が終わった。まな板にのせられて台所へ運ばれて来るそうだ。もちろん僕は見てはいけない。みんなで大広間に集まってユカちゃんの女体盛りが出来上がるのを待つ。サイドテーブルに飲み物や小皿に入ったタレやソースが並んでいる。ユウコさん、ユミさん、マユミ先生はお酒を飲んで盛り上がっている。爺さんも楽しそうだ。僕たちはウーロン茶やコーラを選んだ。
「失礼いたします。これより女体盛りをお持ちいたします」ノブコお姉さんの声がして襖が開けられた。
僕はアイマスクをした。何も見えなくなった。みんなの歓声と拍手が聞こえた。
「やっぱり若い子の肌はきれいね」マユミ先生の声がした。
「いただきます」
みんなが箸を持つ音がした。見えないけど、大きなまな板の上にユカちゃんの女体盛りが置かれているのだろう。
「でも爺さん、本当はこれ、女体をいじくるエロい遊びなんじゃないの?」ユミさんが言った。
「ああ、意識のある女体がじっとがまんしてくれればな。じゃが男らはがまんできなくなるまで責めるから、結局料理は台無しになるんじゃ」
「何がしたいんだか」
「女をいたぶるのが目的で料理はどうでもいいんじゃろ。わしゃ違うぞ」
「性的に衰えたのね」
「失礼じゃな。女体という美しい容器に盛られた美味い料理を純粋に楽しみたいんじゃ」
「ふうん。でもまあ確かにユカちゃんってこうして見るとほんとにきれいな顔と身体してるわよねえ」
「つけあがるからやめてください」アキちゃんが注意した。
「おお、これじゃ。冷たい刺身が人肌でほんのり温められて、美味い」爺さんの声がした。
「はい。お口あけて」隣でアキちゃんの声がした。
僕は口をあんぐり開けた。お刺身が入れられた。美味しい。爺さんの言ったとおり、ほんのり温かくて、なぜかいい香りもする。宴会が続いた。僕はアキちゃんに食べさせてもらって、これはこれで幸せだ。温かいものが食べたくなって、アキちゃんに天婦羅をリクエストした。食べさせてもらう。新婚みたいだ。新婚だけど。
やがて宴会が終わってユカちゃんの女体盛りが下げられた。僕はアイマスクをとった。
「見られなくて残念だったね。でもスマホで撮影したから、あとで見せてあげようか?」マユミ先生が僕に言った。
「やめてください」アキちゃんがきっぱり断った。
ユカちゃんが麻酔から覚めてやって来た。
「なんか、アタシだけつまんない」
「そりゃそうだろ」




