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18.連続女子猟奇殺人事件

 少女失踪事件が少女殺害事件に変わった。昨日山中で遺体が発見されたらしい。朝からワイドショーのトップニュースになっている。

「同じ中学でしょ? こわいわね。知ってる子?」母が聞いた。

「ううん、知らない。クラスも違うし」

「この中学校では最近失踪者が次々と出ている、か」父がテレビのコメントを口にした。

そのうち3人には僕たちがからんでいる。ナオトくんと、バットの男女だ。だがそれ以外にも失踪者は増えている。

「今日は車で送ろうか?」父が言った。

「そうね。きっとみんなそうするわよ」母も同意した。

 学校に着いたら、父兄の車でいっぱいだった。パトカーが駐まっていて、警察官も立っている。マスコミも駆け付けている。ユカちゃんからメールが来た。みんなで会議しようと言う。

「そうだな。今日は休むと言う家庭も多いだろう。学校側も早く帰らせようとするだろうし、授業にはならんだろうな」父も言った。

僕たちはそのまま引き返して家に戻った。

「それで連れて帰ってきちゃったわけ? あきれた」母が言った。

「でもごちそうにありつけるぞ」父がうれしそうに言った。

やがてユカちゃんとミユキちゃんが料理とお酒を持ってやって来た。

「あたしってさあ美人で目立つから、マスコミの前に出るなって言われてるのよねえ」ユカちゃんが言った。

「自慢そうに言うな」

「でもまあユカちゃんのお父さんの立場からするとそうだろう」父が言った。

「犯人が早く捕まらないと騒ぎがおさまらないね」アキちゃんが言った。

「ねえねえ、アタシたちで捕まえちゃわない?」ユカちゃんが言った。

「ばかなこと言わないで。警察にまかせておきなさい」母が釘を刺した。

「でも刑事さんが協力お願いしますって」

「それはユカちゃんのお父さんにだろう?」

「まあそうだけど」

「ユカちゃんのお父さんが乗り出すなら、すぐ見つかるんじゃないの?」

「組織が絡んでればね。でもこういうのって個人の犯行が多いから」

「たしかに。変質者の仕業なら警察の持っている情報の方が多いだろうな」

「前科がある人のアリバイから調べてるみたい」

「死体はどんなふうだったの?」アキちゃんが聞いた。

「ハダカにされてたみたい」ミユキちゃんが言った。「かわいそうだよね」

「ご両親がお気の毒だわ」母がため息をついた。

「そりゃたまらんだろう」父も言う。

「遺留品はなしってこと?」僕が聞いた。

「そう。だから手掛かりが少ないって」

「目撃情報は?」

「これからでしょ? 見つかったのが昨日なんだから」

 ところが事件は劇的な展開を見せた。山中の捜索で遺体がもうひとつ見つかったのだ。同じように失踪した女子中学生だった。これは連続女子中学生殺人事件となった。ということは、被害者は今後も増え続けるかもしれない。世間は騒然となった。ワイドショーは朝からずっとその話題で持ちきりだ。学校は休校となった。

 僕たちはユカちゃんの邸宅に集まっていた。

「マスコミは伏せているが、実は、被害者の手足の先が吹き飛ばされていた」刑事さんが言った。

「え?」

「おそらく手のひらと足の裏に少量の爆薬をセットして爆破した。検視の結果、生きているうちにやられたらしい」

「そんな」

「これは連続猟奇殺人だ。それもきわめて悪質だ」

「ひどい」

「みんな許せない思いだ。本庁も介入してきた。かつてない規模の捜査本部が設置された」

「手掛かりはあったの?」

「被害者の体内から男のDNAが検出された。過去のデータと照合中だ」

「レイプされたってこと?」

「そうだ」

僕たちは何も言うことができない。ひどすぎる。

「だから君たちも気をつけてほしい。絶対外に出ないこと」

「わかりました」アキちゃんが答えた。

 そこへ連絡が入った。マサキさんが尋ねてきたと言う。

「マサキさん?」

「マユミ先生のスナイパーさんだよ」

「乳首の?」

「ここへ通せ」ユカちゃんのお父さんが言った。

マサキさんが息を切らせてやって来た。

「マ、マユミ先生が、あ、あぶない。ち、ちからを、か、かしてほしい」

「落ち着いて」

マサキさんの話では、急にマユミ先生と連絡が取れなくなった。受付のお姉さんも困っている。事件に巻き込まれた可能性がある。居場所はわかっている。マサキさんはないしょでマユミ先生のバッグにGPSを仕込んでいた、と恥ずかしそうに告白した。自分は狙撃しかできないので救出に協力してほしいということだった。

「わかった」ユカちゃんが言った。

「おいおい、今外に出るなと言ったばかりだろう」刑事さんがあきれた。

「みんな連続殺人の方で忙しいんでしょ? こっちはアタシたちにまかせて」

「ユウコさんとユミさんを呼ぼう」ユカちゃんのお父さんが言った。


 GPSをたどった先に山小屋があった。大きなログハウスだ。女子中学生の遺体が発見された山とは遠く離れている。

「しめた。こういうログハウスは忍び込みやすいのよ。わたしたちは屋根から行く」

「な、何かあったら外に出て来てくれ。ぼ、僕が狙撃する」乳首スナイパーさん、いやマサキさんが言った。

「なんでこんなにゾロゾロついて来るんだ」刑事さんがぼやいた。

僕たち4人は刑事さんの後からついて行く。全員耳にインカムを付けて連絡を取り合えるようになっている。

「危険を感じたらすぐに外に飛び出すんだぞ」刑事さんはそう言いながら、庭を歩いてログハウスの正面に向かう。短い階段を上がって扉を開こうとする。鍵がかかっていた。

「みんな、扉から離れて」マサキさんの声がインカムから聞こえた。

僕たちが離れると同時に鍵が撃ち抜かれた。刑事さんが扉を開けた。

「みんな、動かないで!」マユミ先生の叫び声がした。

僕たちは動かなかった。男が立っていて、こちらを見ていた。

「そいつが持っているのは爆破装置よ! 指が離れると爆破しちゃう!」マユミ先生がまた叫んだ。

マユミ先生は広いリビングの中央でハダカでひざまずいていた。首輪がつけられ、その首輪は天井から鎖で吊るされている。両腕は後ろに回されている。大きな両胸の乳首にワイヤーの先が刺されていて、ワイヤーは男の右手の装置に繋がっている。左手で握っているのが爆破装置だろう。男が右手のスイッチを入れた。

「ぎゃあああ」

マユミ先生の身体が大きく痙攣した。天井から吊り下げられた首輪のせいで、倒れることができない。ひざまずいた格好のまま身体をふるわせている。マユミ先生は胸もお尻も大きい。アソコの毛がすごく濃い。ジャングルみたいだ。

「ちょっとどこ見てんの?」アキちゃんに叱られた。

僕たちは壁にはりつけにされている女の子に気がついた。ハダカで大の字に固定されている。両手両足の先に爆薬がセットされていた。連続女子中学生猟奇殺人事件の犯人がここにいた。

「何だおまえら?」男が僕たちを見ながら言った。

「オレも仲間に入れてくれ。獲物を連れてきた」刑事さんがとっさに芝居を始めた。

男はユカちゃんを見て目を輝かせた。アキちゃんのプライドが少し傷ついたのがわかった。ミユキちゃんはたぶん何かすごくこわいことを期待している。

「何者だ? まあいい。とりあえずそこの檻に入れろ」男が指図した。

部屋の隅に鉄製の檻があった。女子3人はそこに押し込まれた。刑事さんは僕の肩を抱いて言った。

「こいつはオレの子分だ。よろしく頼む」

「どうやってここを見つけた?」

「この女3人がな、そこの先生を探してたのさ」とマユミ先生を指した。

「だからオレたちも協力してやると言った」

「ほお」

「こいつらGPSで追跡していたぞ。気がつかなかったのか?」

「携帯は切ったはずだが、他にもあったのか」

「そういうことだ。感謝してくれ」

「ああ」

「で、今は何をやっていたんだ?」

「ごめんなさい」壁にはりつけられた女の子が泣きながら言った。「そのお姉さんは、わたしを助けようとしてくれたんです。それなのに、ほんとにごめんなさい」

「オレはこんなおばさんにはまったく興味ないんだが」男が笑って言った。

「…あんた、たった今世の中の30代女性すべてを敵に回したわよ」マユミ先生が言った。

男がスイッチを入れた。

「ぎええええ」またマユミ先生の身体が痙攣した。

「おれが獲物の手足を吹っ飛ばそうとしたら、何でもしますからやめてって言うからさ。ちょっと遊んでみることにしたわけよ。こいつ、ほんとに何でもしやがってよ。どんな恥ずかしいことでも汚らしいことでも、オレの言いなりよ。おばさんのくせに」男がケラケラ笑った。

僕はふと思った。これインカムを通じてスナイパーさんにも聞こえてるよね。

「遊び飽きたからもう終わりにするところだった」またスイッチを押した。

「ひぎゃあああ」またマユミ先生が痙攣した。

「何回続けたら死ぬかな」また押した。

「あぎゃあっ」マユミ先生は気絶して、それから失禁した。

「わたしは左手を麻痺させるから、ユミはその手をつかんで。同時に行くよ」ユウコさんの声が聞こえた。天井の梁から二人が飛び降りてきた。ユウコさんが男の左腕を刺すと同時にユミさんがその手をしっかり握りしめた。ユウコさんは男の首に別の針を刺した。男が倒れた。ユウコさんは壁の女の子にセットされた爆薬をはずして起爆装置を解除した。

「あとはまかせろ。キミたちはできるだけ跡を残さずに撤収してくれ。鑑識が入るからな」そう言って警察の応援を呼んだ。


「またまた大手柄だったねー。テレビでやってたよー。署長さんがさー『いやあ、たまたま別の女性の捜索をしていて、運がよかっただけです』なんちゃって」ユカちゃんがはしゃいでいる。

「運がよかったのは本当だから」刑事さんが言った。

「すごいスピード解決だったもんね」アキちゃんも言った。

「本庁の出る幕なしって新聞にも書かれてたよ」

「証拠も全部見つかったんでしょ」

「ああ。だからあの女の子も君たちのことは一切しゃべってない」

「でも犯人連行中に射殺されちゃったんでしょ? また本庁の面目丸潰れ」

「乳首スナイパーさんもすごいことやったわね」とユカちゃん。

「まあ彼には彼で腹にすえかねたことがあったんだろう」

「乳首スナイパーさんはだいじょうぶなの?」

「うん、その呼び方はやめようね。眉間を一発でぶち抜いたから、プロの仕業と思われてる。おそらく被害者の家族が雇ったんじゃないかと噂されてるが、オレには関係ない。本庁の仕事だからな。それにしても」

「それにしても?」

「また今回も見られなくて残念だ。アキちゃんの蹴り」

「見世物じゃありません」僕とアキちゃんが同時に言った。


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