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異変

 それから、三か月・・・

(食事は極上の品が出て、おいしい)

 もぐもぐと、干し柿を二つも三つも口にほおばりこむ。長い貧乏生活のおかげだ。食いつきは人より良いのだ。

 毎日、美香子と松風は、至れり尽くせりの極上の生活だった。

 衣服も絹や綾などの肌ざわりが良くて極上品が出て、着心地が良い。敷物も手の込んだ物で、調度品は漆を塗ったり、木目がはっきりと出た高級品で、どれも心良い使い勝手だ。

 暑い風が吹くと、蔀戸を開けたら通気が良くなる設計の良い部屋、磨き抜かれた鴨居から下りる極上の御簾、外では完璧な装いの女房たちが楚々と歩いている。

(何もかも極上の生活、何もかも完璧、豪華、いいわね、裕福で)

 ただ一つ、外へ出られないことを除いては・・・

 この三か月、屋敷から出られず軟禁状態だった。外へ出ようとすれば、右大臣家の女房らが出てきて、どこへ行かれなさいます?ご用なら、私共がお聞きしますと、外へ出ることを阻止された。

(私をここに閉じ込めて、自分のものにしようとしている、まったく、あの方は強引だわ)

 憤りを感じるものの、身辺は行き届いた暮らしで、言い出すのがはばかられる。極貧生活が長かったせいか、極上の生活は体が喜んでいる。そこは、申し訳なさも感じる。

(でも、もう、これきりにしてもらわねば)

 困窮を助けてもらったとしても、いくら何でも手厚すぎである。目的がないと、これほどのことはしまい。目的とはつまり、美香子のことで・・・それは来た時からうすうす分かっている。

 何か理由をつけてでも、外へ出ていかねば。毎日そう思うけれど・・・すぐ外には女房がいるし、門衛も屈強な衛士が門を守っている。

「どうも、最近、どう?」

 美香子が自分の屋敷にいるので、何かと気の良く頭中将は顔を見せる。

「ええ、すっかり元気で、こちらの食事でだいぶ力がつきました」

 まず美香子は礼を言って、几帳の裏に隠れて、恋だの思うだの説かれてないふりをする。話を進ませない。

 さも感謝していると見せかけて、よよよと泣き崩れるふりをする。

「ですが、申し訳なさ過ぎて、以前の私は食事にも事欠く次第でありまして、今日の頭中将様の施しは決して忘れません。ですがあまり御厄介になっては、迷惑ですわ。厚かましく、右大臣家の中で食い物や飲み物をむさぼる女などと、人々からどう思われるか。都人にそう噂されるのは、右大臣家の方々にも迷惑ですし」

「気にしないで良いのです。なに、あの家を修理してもっと良くてあげようと思っています。その間、預かるというだけならいいでしょう」

「そのような多大なご恩を受けては、到底、私は返せません。工事だって長いことかかったら、資金もかかるでしょう。私のことばかりで、どれほど迷惑をおかけするか。私の家のことなどは私のことですので、お気になさらず」

「返すことなど考えないでいいのです。可哀そうな生活をしているので、私が助けてさしあげるだけなのです。遠慮せず、慈善です、これは」

 頭中将はあの夜ほど積極的ではないけれど、当分、離してくれそうにない。

 もう会ったからには、離さないと言っていた。あれは、本気だ。

 しつこくない分、着飾ったり、室内の装いを手厚くしたりして、何かしら魂胆は見え透いている。


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