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 政治の中でも難しい立場にいる夫を持つと、妻も難しく厳しくなるものである。右大臣家を取り仕切る正室の母宇子も、なかなか厳しい人だった。

「なあに、友達の残した妹で、暮らしに困っているのです。友達には恩義があって返さねばならないのですよ」

 奥につれてきた女は何者か、どういう関係があるのかなど、取り調べ官かと言うほど厳しく取り調べられて難儀したが、頭中将はそう言い切って、母の質問をすり抜けてしまった。母が母なら、息子も息子。したたかさは遺伝しているのである。

「でも、いつまでも預かっていたら、世間では評判が立つものですよ」

「なら、私の奥方として残せばいい。それぐらい、私は恩義があるのです」

 最後まで反対したが、そこまでする気があると言うと、可愛い息子の跡取りでも出来たらという母の弱みが露呈した。

「じゃあ、好きにしなさい。けれど、問題があれば、即刻出て行ってもらいますからね」

 とりあえず、息子の行動には監視の目を光らせることにして、いったん許した。

(母者の小言は毎度のこと。母者も俺の所業を生まれた頃から見ているから、俺がどうしようとしているか、見抜いているだろう。ま、俺の女のこと。俺は全てを手にしている権力者だ。女など誰でもどうにでもなる。母も分かっている。だから目をつむった。すべてはこっちの思い通りだ)

 頭中将は部屋に戻ってから、今後のことを考えた。

「おい、忠義、姫は受領のことを言っていたが、前から姫に通う受領でもいたのだろうか?」

 常にそばにいる家来、忠義は室の外で控えているので、答えた。

「は、近江の源なにがしという若い者が、前から文を送っていたようです」

「ふむ、よく調べてくれたな。近江か、近江守の藤原唯綱殿の息子とは知り合いなんだけどね。一発で、そいつをお役御免に葬れるのだが、余計な波風を立たせたくはない。父上の仕事にも、そういう反感は聞こえていくものだから。姫とは、思い合っていたのだろうか?」

「私が家の者から聞いたのでは、時々、米や野菜などを届けていたそうですが、別にそれ以上のことはなかったようです」

「ふうむ、では、恋仲ではあるまい」

「それは分かりません」

「そうだな。それは二人の胸の中でしか分からない。しかし、こうなって来たら、受領が邪魔だな。もっとその近江守の部下の情報はないか?」

「聞くところによると、大学卒で賢く、品性方向で、見目の良い男だとか」

「ふうん、気に入らぬな。それなら姫が惚れてしまうかもしれないな。何とかして阻止せねば」

 頭中将の目がきらっと光る。これは悪いことを企んでいる目だ。

「とにかく、いったん呼んでくれ」

「え?受領をですか?」

「一度見てみたい」

「美香子殿に」

「会わせたりするなよ」

「は・・・」

 言われた通りに、忠義は家に受領を呼んだ。何も理由はないが、仕事だとか、所用があるとかで来てもらった。頭中将は、右大臣家の息子で四位の位階を持つ。少し怪しかろうと断る者はいない。

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