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身分の高い者の遊び相手になるつもりはない。
それこそ、落ちぶれ姫の転落だ。
だが、この世は階級社会。高位な者に下の者が無礼を働くことなど、許されることではない。
ましてや、後ろ盾も何もない美香子のこと、逆らえば助ける者などない。
ここは、角が立たないよう、無難に済むように、何とか山を低くさせて、この問題をやり過ごさねば・・・
「その、とてもくつろげております。大変ありがたいおもてなしで、こちらこそ、高貴な方の訪れというのに、豪華なお食事など出すことが出来ず、我が不幸を恨んでいるところで」
「なあに、もてなすことなど、私には必要ありません。内裏へ行っても、他家に行っても、もてなされてばかりの私ですから。いっそもてなすほうが、私はしてみたい。試しに、私にもてなされてください」
「はあ」
どうやら、男はいたずらっ子のようなところがあるらしい。楽しい遊びに夢中になれるところを見ると、無邪気にも見える。
「私は初めてなのです。私がもてなすということは、あなたのために私がすることが、こんなにも楽しいとは思いませんでした。試しにもっと、あなたをおもてなしさせてください。そうだ、夜をこれから」
意気揚々と話すところは自信に溢れた輝きがあって、人物的魅力は感じる。良くも悪くも、この世が我が天下の人だと思う。
夜と言う言葉に、再び、どきっとした時だ。
「若君、お母上様がおよびです」
かたんと妻戸の開く音がして、外から女房の声がした。
「え?母上?うん、母上ね、はい、分かった」
男は顔を急にすぐに声音を変えると、しぶしぶ立ち上がった。
天下の右大臣家の奥方と言えば、泣く子も黙る正室。都人では知らぬ者もいない女性だ。頭中将にとっても、母というのは、絶対的な力を持つ存在であるらしい。
「じゃあ、またのちほど」
厳しい母御なのか、目立つほど人が変わった顔つきで出て行った。
(なんだか、あっさりと出て行ったわ)
右大臣家の生母の強さにひと安堵だ。
ふと見ると、女房が戸口から中をのぞいていた。それが、忌々しげな目をしていて、嫌がある。母者のタイミングと、古参の女房の目つきでは美香子は心良く思われてない。多分。
(少なくとも、悪い状況ではないわ。家の主といえば、奥方様。その方に心良く思われてないのだから)
美香子が出ていきやすい状況になりそうだった。




