第九十二話 センスあるノーデリカシー
「これからどうするの?」
ドルーゴーリマの国民に見送られ、ケルベロス車をはしらせる僕たち。
後ろをみるとドルーゴーリマが米粒サイズになっていて、旅が再開したことがひしひしと感じる。
「……んー、どこ行きましょう」
ミランスは腕を組んで、ディートに目をやる。
……やっぱりこの状況だと。ミランスが一番に頼りにするのはディートなんだなぁ。
前は僕だったのに。
複雑な気持ちが胸のなかで渦を巻く。
「オレはできるだけ最短で魔王を倒したいZE☆」
ディートがニカッと笑う(マスクとサングラスのせいで、ホントに笑っているかは実際わからないが)と、ルロは口を開いた。
「ねぇミランス。勇者のお供を決めるのって抽選よね? 地球人全員強制参加の」
「そうだよー」
ミランスの応答にルロは不思議そうな顔をする。
「ディートって地球人じゃないわよね。どうして抽選に参加できてるのよ」
「あー、それはね」
ルロの核心をつくような質問に、ミランスは焦る様子もなく平常な表情を浮かべていた。
「ディートさんは今、地球……いわゆる人間界で旅をされているんです。だからフツーにミヤギっていうところの住民票とか戸籍を持ってたりするんです。そのおかげで、わたしのお供をやっていただけてるんです」
「そうだZE! オレは黄金の国、ゼット・アイ・ピー・エー・エヌ・ジー・ユー! Z・I・P・A・N・G・U☆ ZIPANGU! を旅する華麗な男だYO! イエア( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆」
……なにがどうとは言えないけど、とてつもなく殴りたいという欲求があがってくるしゃべり方だ。
しかしミランスのいる場で暴れるのだけは避けたい。
そんな平穏を装う僕のとなりは、まったくもっておとなしくする様子が全く見られなかった。
「うっざ。なにその話し方。マジでキモい。生理的にムリなんですけど! カッコいいってまさかだけど思ってるわけ? うわー、それだったらめっちゃイタいわ。ダサ」
ルロも僕と同じことを思っていたらしい。
僕の思っていたことの三割ほどを代弁してくれた。
「オレが、ダサい……!?」
「はちゃめちゃダサいわ」
……はちゃめちゃって表現もはちゃめちゃダサいと思うけど(個人の感想です)。
「オレのことをカッコいいと思わないやつもいるんだNA!」
「いるに決まってるじゃない。逆によくそれでモテると思ってたわね」
「ルロちゃん……、実際ディートさんはモテ男なんだよ」
「えぇ!?」
ルロは瞳を大きくして本気で驚く。
これに関しては僕も耳を疑うような話しだけど、前回ポロゼという町で悪の組織に入ってるって言ってたっけ。しかもなんかすごい役職をもってたような……。
※ちなみに悪の組織はモテたい男が集まる集団である。決して魔王の部下とかそういうことではない。
「こいつを好きになろうって……信じられないわ」
ひでぇ。
ルロは嫌みでもなければ、いじりでもなく、ただただ本心をこぼしていた。
「……ルロだったっけ」
ディートがルロに質問すると彼女は首を横にふった。
「気安く名前を呼ばないでくれる? 自分の立場をわかってるのかしら? この女たらしサングラス」
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ」
「ディートさんうるさいです」
ディートは悲鳴をあげた。
ミランスがちょっとイラッときてるくらいだから、かなり声のボリュームが大きかったんだろう。
しかし彼はそんなことおかまいなし。っていうかミランスの声も聞こえてない。
「ルロ! さすがだYO! お前はセンスのあるノーデリカシーDA!」
「なにそれ!? 絶対褒めてないわよね」
「褒めてるZE☆ じゅうぶん褒めてるZE☆」
「ウソよ。そもそもあたしはデリカシーくらい持ち合わせているわ。冗談は顔だけにしなさい」
「そういうところだZE! センスあるノーデリカシー! イエア」
……ディートはルロを気に入ったようだ。
まあ、悪口を吐かれて好印象を抱くのはどうかと思うけど。
とにかく仲がいいのはいいことだ!
「はいはい! 話を戻します。これからの進路はどうしますか」
「なんか受験期の生徒をもつ先生みたい……」
「レンくん! よくわからないこと言わないでよ。日本語喋って!」
「日本語だよ!?」
ヤバい。ミランスがいるとなかなか話しが進まない。
「どうでもいいことだけど、──オレ魔王城の行き方知ってるんだよNE卍」
「「「ふぁっ!?」」」
どうでもよくないよ! 超重要な話じゃん。
しかしディートはいたって真顔(多分)。
「……え、じゃぁもうラスボス倒しに行く?」
ルロの言葉に沈黙が広がる。
ミランスはパーティー全員の表情をうかがった。
「そうしますか? 早く倒せば世界平和もすぐに……」
「いや、ダメだ」
僕がミランスの言葉をさえぎった。
だってこないだ敵わなすぎた。
四人になったけれどそれでも到底相手にならないと思う。
「魔王は強い。強すぎるんだ。僕たちだけじゃ敵わない」
「じゃあどうすれば……」
「あたし知ってる」
ルロが手を挙げた。
「コーブっていう地帯に大きな図書館があって、そこに魔王にまつわることがたくさんあるって。だから弱点とかも書いてあるかもしれないわ」
ルロは淡々と語った。
でもその話してるときの横顔がとても輝いているように見えた。
「わはぁ! さすがルロちゃん。センスあるノーデリカシーなだけあるね」
「それとこれは別でしょ! っていうか意味わかって言ってる!?」
もう! と頬を膨らませるルロは幸せそうだった。
ディートは……眠りの世界に旅立っていたようだ。
4人で楽しそうですね
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