第九十一話 終着点
「はぁ」
さんざんな一日だったよ。
今日を思い出し、ため息をひとつ。
明日から旅がまたスタートだって。
僕からしたら旅がリスタートなんだけど。
で、王様がゆっくり休んでほしいということで、僕とルロとディート、そしてミランスに一週間ほど休暇を与えた。
まぁ、ミランスがいる時点で休暇にならないことは悟ってたけど……。
でも、ひどかった。
一日目、四人でスイーツバイキングみたいなことをしてたんだけど、もう、ホントに……ミランスがやってくれたよ。
バイキング会場? みたいなとこにミランス以外の三人で向かったわけよ。ミランスが先に行っちゃったから。
そして会場についたら、食べ物がなくなってたの!
はぁぁぁ!?
話を聞いてるとミランスが全部食べたって言うのね!?
もう三人ぶちギレて、特にディートがヤバくて、
「お前! 太るZO(`ε´ )」
って言っちゃったんだよ。
そしたらミランスがショックで家出しようとし始めたの。
だからルロがミランスをとめようと色々説得してたら、ミランスが思いっきりルロになついたんだ。
そしたらルロのツンがミランスに効かなくなるっていうトラブル(?)が発生してなぜかルロが病むっていう。
一日目から波瀾万丈だったよ。
残り六日の話もしたいけど、またいつかだね。
そんなこんなで今日も色々あったわけですよ。
ツカレタツカレタ。
疲労の蓄積した体で高級ベッドにだダイブする。
ヤバい、ふっかふかだぁ。
もうここからでられなくなりそう。
ってかでたくない。
はぁ。
客人の部屋らしけど、めっちゃ豪華だなぁ。
前はミランスの部屋に泊めてもらったからここは初めてだ。
部屋の電気はシャンデリアだし、部屋は広すぎるし、もう嫌になるくらい贅沢な場所だよ。
布団に顔をうずめてごろごろしていると、
コツコツコツ
「どうぞー」
「おじゃまします」
入ってきたのはミランスだ。
水色のフリフリワンピースの姿はパジャマ姿だろうか。
一言で表すなら妖精みたいだ。
かわいい。とてつもなくかわいい。
もうこの姿で町に出歩いても問題ないくらいの服装だ。
それをパジャマにしちゃうなんて、王族が恐ろしいよ。
「レンくんと話したくて」
あははー、と照れ笑いを浮かべて僕の隣にやってくる。
僕は起き上がって、高級な床の上に礼儀正しくあぐらをかいた。
「その、ずっと言えてなかったんだけど、レンくんを非難するようなこといっぱい言っちゃったよね。ごめん」
ミランスはここに来るなり、頭を下げだした。
なんだかそれがとてつもなく申し訳なくて、思いっきり首を横にふる。
「ごめんだなんて、そんな! 急にアポなしで凸った僕も悪いよ」
「そうだけど……」
ミランスが戸惑うように目線をうろつかせる。
「そんなことよりさ、ミランスはどうして僕を付添人にしたの?」
話題を変えると、ミランスはふいに微笑して僕の指を見た。
「それは──レンくんと同じエゴだよ」
エゴ……?
僕が首をかしげるとミランスははにかんだ。
「その、なんていうか、純粋にわたしがレンくんと旅をしたくなったから、かなっ?」
「……っ!」
心臓が、胸が、全身が、大きく脈打った。
『純粋にわたしがレンさんと旅がしたいんです』
いつか聞いたセリフを思い出す。
僕をレンさんと呼ばなくても、
僕に敬語を使わなくなっても、
ミランスは変わってなかった。
ミランスはミランスだった。
それが嬉しくてお腹のそこから「うれしい」が沸き上がってくる。
心臓のドキドキする音がよく聞こえ、それがミランスの仕業だと知ると少しばかり喜ばしい気持ちになった。
「ありがとう」
なにに対しての感謝かはわからない。
でもダレに対しての感謝かは確信している。
ミランスはうれしそうに微笑んだ。
「レンくんは……なんだか懐かしい人だよね。昔どこかでたくさんのワクワクを一緒に共有した仲間って感じがするー」
ミランスの言葉に真実を話そうか、ちょっと迷った。
けど、今さらそんなこといいよね。
また新しく絆を結べばいいんだもん。
前回できたんだから環境が違えど、できるはずだよ。
「レンくんは前世でわたしの飼い主だったんじゃないのかなぁ?」
「ゑ?」
エモい空気に一人入っていたなか、ミランスが急によくわからないことを言い出した。
「わたしの前世がトイプードルだったんだけど、その飼い主かなーって」
ミランスが大真面目な顔で言うもんだから、思わず吹き出してしまった。
彼女は不思議そうに首をかしげるだけだが、その仕草がまたミランスらしくて、思わず笑ってしまう。
「ホントに前世でそうだったなら今は正反対だね」
だって今、僕はミランスの付添人だし。
そんなことを言って談笑してた。
ミランスとずっとこうならいいな。
いや、こうじゃなくてもいいかも。
なんて言うの? ミランスが僕を眼中にいれてなくても、なんかそれを受け入れられることができる気がする。
僕がミランスのことを好きでいて、それで僕がミランスの喜ぶことをすれば、なんかもう十分だ。
それだけでもう至福だろう。
ズブズブと胸の奥から黒いなにかが消え去る。
──千葉レンのエゴが崩壊した。
やっぱミランスいいこやぁー
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